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移民二世とワールドミュージック

 フランス諸都市の郊外で移民層の若者の暴動が起こり、今も拡大しているという事件はみなさんもご存知の通りです。今のところわたしの願いは、若者たちが無意味な破壊行為に走らないことです。そしてどこにも怪我人がでないように祈ります。
 小さなことかもしれませんが、個人的にはジェラルドの車が焼かれたりしないかも心配です。彼はサン=ドニに住んでますし。マント=ラ=ジョリ(フォーデルの出身地です)に住んでいるファブリスはどうかな(この事件に関しては、天災じゃないしなんだかメールで様子を聞くのもやりにくいですね。新潟大地震のときには彼らは金沢に住んでいるわたしの安否を心配してくれてました。フランスのテレビでみたら金沢も新潟も一緒に見えたでしょう)・・・

 フランス政府が当座の事態の沈静化とともに、移民二世向けの政策に見直しを迫られていることは確かですが、わたしはここで大局的なところから、文化の意義を考えてみたくおもいます。

 大前提は、とにかく移民二世層が「フランスで育っている」ということです。だから彼等に「故国」に帰れというわけにはいかない。なぜなら多くの場合その「故国」とは、いっぺんも住んだことがなくて習慣も知らない、言葉もよくわからないという国だからです。とくに「自由」をもって最大の価値とするフランスの社会で教育を受け、育った移民二世(とくに女性)が、一般的にフランスよりはるかに拘束の強い故国の社会にとても順応できないと思うのは当然です。
 移民層をフランス社会の中に取りこんで「統合」していくことを決意するなら,彼らがフランス社会内でプライドを持てるようにしなければなりません。フランス伝統の文化に飲みこまれるだけでは永久に劣等感から抜け出られない。出自の文化が誇れるようでなければならないのです。
 確固とした誇りを持つことができれば、軽はずみな破壊行為、さらに自らの将来の可能性を閉ざしてしまうような行為に自制が働きやすくなるでしょう。
 こういう意味で、文化とは大事な、大事なものです。

 ここにフランスにおける「ワールドミュージック」振興の意義があります。フランスがワールドミュージックの中心地たるべく、国内の移民系アーチストの活動を奨励、また国外のスターたちのフランスでの活動に便宜を図るのは、なにも「フランスはブンカ国家だ」と偉そうな顔がしたいということではなく(そういうことを考えている人がいないとは言いませんが)、きわめて実質的な、大事な意味があるのです。
 アルジェリア系をはじめとする北アフリカ移民層が近代化された「ライ」を演奏するのは、その行為を通じて自らの誇りを回復するためでもあるわけです。だからこれには北アフリカ移民層以外の移民および元からのフランス人は「手を出さない」、つまり伴奏くらいはしても、自ら主導的に演奏することはしないです。そういうことをしては彼らのアイデンティティを侵すことになりますから。
 たぶんここにフランスという場と、アメリカや日本という場が示す性質が一番異なるところがあるのでしょう。異文化に興味を持ち,楽しみはするが、敬意を払って軽軽しく手を出さないという。

 ところで明らかにサルコジ内相は、移民層が独自の文化を保持し育てることがフランス文化を豊かにするという方向性を強く打ち出す立場の人ではないですね(彼自身もハンガリー移民系なんですけどね)。そういう方向性を代表しているジャック・ラング(彼もサルコジ、ヴィルパン同様いちおう大統領に選ばれる目がなくはないです)は今回の事件に対してフランス社会の反省を促する形にもっていくでしょう。

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