満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

『日出処の天子』 作:山岸凉子

2018-10-19 | 漫画紹介
1980年~1984年『LaLa』(白泉社)掲載





写真は「花とゆめコミックス」全11巻 と 「白泉社文庫」7巻

すべていつもブログでお世話になっておる
猫とマンガとゴルフの日々」トミーさんからお借りしました。

が…ちょっと長く借り過ぎてしまったかも…(す・すみません。。)

■まずは…年表形式でザックリ各巻の出来事をば

※第一巻
西暦583年 蘇我蝦夷14歳 女装した厩戸王子(のちの聖徳太子)10歳と出会う

※第二巻
西暦585年 厩戸の父『豊日大兄王子』(とよひのおおえのおうじ)即位
西暦587年 厩戸の父、即位して2年で崩御

※第三巻
西暦587年 仏教派「蘇我氏」と神道派「物部氏」神仏戦争勃発
       仏教派「蘇我氏」勝利
       厩戸王子の異能に益々の磨きがかかる。

※第四巻
西暦587年 厩戸の母の弟『泊瀬部大王』(はつせべのおおきみ)即位し
       崇峻天皇(すしゅんてんのう)となる

※第五巻
西暦 〃 年 蝦夷、物部守屋の妹『布都姫』と出会い恋に落ちる

※第六巻
西暦 〃 年 崇峻天皇の妃探しに厩戸王子が布都姫の噂を流す
       蝦夷への嫉妬心からか…俗っぽい行動に出る

※第七巻
西暦 〃 年 蝦夷の妹『刀自古』、夜陰にまぎれ布都姫と偽り兄蝦夷と結ばれる。
       厩戸の母、亡き夫の弟と結婚。

※第八巻
西暦591年 崇峻天皇、布都姫と無理やり結婚。
       刀自古、兄「蝦夷」の子を身ごもったことを知る。
       厩戸と協定を結び彼の妻になる。

※第九巻
西暦592年 刀自古、男児出産(蝦夷の子であるが厩戸の子になる・後の山背大兄)
       厩戸、斑鳩に自身の宮を建てる(夢殿建立)

※第十巻
西暦 〃 年 崇峻天皇、厩戸・蘇我の陰謀により暗殺される
       難を逃れた布都姫と蝦夷が結ばれ布都姫妊娠。
       厩戸、蝦夷に思いを告げるがフラれてしまう

※第十一巻
西暦593年 額田部女王(厩戸の父の姉)即位。推古天皇となる
       甥である厩戸、摂政となる。
       布都姫、出産で死去。生まれた子は後の蘇我入鹿(そがのいるか)
       厩戸、自身の母似の美郎女(みのいらつめ・気狂い)を妻とする
       厩戸、中国「隋」へ「日出処の天子書を、日没処の天子へいたす…」
       との書をしたためて…完。

■お次に…ザックリな感想

『LaLa』(白泉社)を毎号買ってリアル読みして以来だから…
うわぁ! 34年ぶりに読んだんだワ。

厩戸王子=聖徳太子は、推古天皇の摂政として冠位十二階、十七条の憲法を制定し、
遣隋使の小野妹子を派遣した

というのが有名だが…コレが最近では古い話らしい。
今では、聖徳太子自体が「居なかったんじゃないかい?」ってな話になっているらしく
教科書から名前が消える日も近いらしい。

だがしかし、
この漫画が世に出た頃の状況は今とはかなり違っていた!
聖徳太子のファンの方々が「聖徳太子をバカにしている!」と、怒り
この漫画は当時、新聞やニュースにも取り上げられるほどの
問題作となっておったのだ。

「えっ!? 漫画に何でそんなにムキになるの?」とあの頃の私は理解に苦しんだが
当時、一万円札の顔になっていた聖徳太子を尊敬してやまない方々からすれば
「ホモ」「異能に邪悪さがあり」「マザコン」「性悪で嫉妬深い」
と描かれた聖徳太子は…とんでもないシロモノとして
彼らには映ったのだろうことは想像にかたくない。

一巻目あたりは絵にも雑さが目立っていたので、そんなに魅力的ではなかったと思う。
同年生まれの花の24年組「萩尾望都」・「大島弓子」・「竹宮惠子」らに比べると
絵に美術的要素が多いのに雑に済ませている所もあり
また、シリアスな話なのにおちゃらけを入れるという所もありで
私にとってはそんなに好きな作家さんではなかった。
が、ついつい読みたくなる作家さんでもある(笑)

ただ巻を重ねるごとに、厩戸王子の着物、指先、目線が艶を増し
ジンワリと目が離せなくなっていった。

蝦夷に自分の恋心を打ち明けた厩戸は
「私を愛しているといいながら、その実自分を愛しているのです。
その思いから抜け出さぬ限り人は孤独から逃れられないのです。」
と蝦夷に拒絶される。

ノーマルな人がアブノーマルな人を拒絶するという話だけではなく
大人になる扉を通過する時のほろ苦さも感じられる言葉だと思う。
ただし、蝦夷がもそっと大人ならこんなにストレートには言わんな~。

※「白泉社文庫」7巻…馬屋古女王(うまやこのひめみこ)
西暦622年 厩戸、49歳で死去 その葬儀でのお話し。

『厩戸の子として育った蝦夷・刀自古の子』山背大兄 
『刀自古の不義密通の子』財王・日置王
『厩戸・美郎女の子』春米王女(山背とは異母妹で夫婦)
これ以降は美郎女の気狂いの血が色濃い
長部(男)・久波太・波止利(女)三枝王・伊止志古王・麻呂古王(男)・馬屋古女王

蘇我入鹿(蝦夷・布都姫の子)

馬屋古女王は目も口も不自由で歩くこともままならないが、父の厩戸王子に似た美女
彼女を巡って山背大兄・財王・日置王・山背王の子である難波王が争う

馬屋古女王は厩戸王子が亡くなるまでの15年あまり軟禁されていたため
本能のみの状態。また、回りの反応や思いに協応し、父から受け継いだ異能を発する。

恐(かしこみ)の卦である馬屋古女王を焼き滅ぼさねば恐ろしいことが起こる
が、それと同時に、厩戸王子が一代で作り上げた一門も崩壊する。
厩戸王子は、自身が作り上げたものをその手で滅ぼすために墓所から現れ…。

西暦643年 蘇我入鹿が山背大兄を襲い、厩戸の子孫は滅びる。
蝦夷の子供同士が争って厩戸一門が滅びたが
蘇我一門も2年後…
西暦645年 中大兄・中臣鎌足、蘇我入鹿を殺害。蘇我蝦夷自殺。

蘇我入鹿が殺害された後、たいした反撃もせずに蝦夷が自殺したとの史実が
とても不思議に感じていたが、この漫画のストーリーから考えると、とても納得。
そう考えると、いかに山岸さんがストーリーを綿密に紡いでいたかに驚く。
ぼんやりとした輪郭から始まり、最後に史実とも合致しながら終わるという離れ業





上の写真は以前、「弥生美術館」にて山岸涼子展が開かれた時に購入したポストカード
やっぱり絵は絶品!
この絵の上手さとストーリーの巧みさで、どんなに時が経っても、また読みたくなるんだな~
恐るべし、山岸涼子作品。

この記事。うだうだ書いていたのと、まとめるのが難しく…
3ケ月ほどかかってしもうた(ハハハハ)
ま、ほぼほぼ少し書いては放置、てな時間が長かっただけとも言えるがの~

以前に読んだことのある人もまた、
新たに読んでみたい人もぜひ、
とても奥深く面白い作品であること間違いなしですだ~

それでは、また!


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ポチっとで、作者のヤル気でるかもです(笑)

ブクログ ←満天書店入り口