地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

唐辛子

2009-11-13 00:00:00 | ペルシャ語

فلفل (フェルフェル)

今回、ペルシャ語の「唐辛子」の記事を書くにあたって、どうにも困ったことがあった。イラン料理で唐辛子を使用することは稀だから、ネタが少ないのだ。確かに市場などに行けば、写真のように色鮮やかなグリーンの唐辛子を目にする時もある。しかし、イラン人の家庭にお呼ばれに預かった際、供される料理に唐辛子が使用されているケースは滅多にない。というのも、大多数のイラン人は辛味を苦手とするからだ。

様々なハーブや果物・羊肉を多用した、シチュー風の家庭料理(ホレシュト)に代表されるイラン料理を一言で表すとするならば、「酸っぱい」ということになる。その酸っぱさは主に、具材を乾燥レモンと共に煮込んだり、レモンの絞り汁をかけたりすることに因る。一方、辛味の調味料に関しては、イラン料理ではせいぜいブラックペッパーが使われるくらい。辛味を足すための香辛料は、イランでは嫌われ者である。イラン人にカレーなどのスパイシーな料理を作ってあげる際には要注意である。辛いものが好物の私は、つい鷹の爪やチリペッパーなどを多めに入れたくなるが、自分好みのカレーをイラン人に出そうものなら、食後こっそり胃薬を服用している友人の姿を目にすることになる。
また、日本で市販されているカレー・ルーは大変便利なので、イラン人へのお土産としても好評なのだが、以下のような但し書きが必要。カレー・ルーは「甘口」に限る。

では、市場で売られている唐辛子はいったいなんのため?という疑問を持つことになろう。
ここがイラン人の「七不思議」(?)なのだが、料理に使われている唐辛子を毛嫌いするはずが、なぜか唐辛子を丸かじるするという矛盾を、彼等は日常的に犯している。キャバーブ(ケバブ)肉のつけ合わせには、ししとうならぬグリーンペッパー。そして極めつけは、唐辛子のピクルスだろう。先にも述べたとおり、酸っぱいものが大好きなイラン人にとって、ピクルスはまさに日本人にとっての「漬物」のような存在。何でもかんでも酢漬けにしてしまうのだが、その中で珍品中の珍品が、唐辛子のピクルスではないだろうか。スーパーでは瓶詰めのピクルスが何種類も売られている。ピクルスにされる唐辛子には、赤いのも緑色のも含まれる。おそらく市場で売られているグリーン・ペッパーの多くは、家庭で手作りのピクルスに変化しているのだと思われる。
「あんなに辛い料理が苦手だと言っているのに、こんなの食べて大丈夫なの?」と尋ねると、「これはこれで別物だよ」と答えるイラン人。
そんな時、味覚も含め習慣とは結局思い込みから成り立っているんだよなと、再認識するのであった。(m)

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6 コメント

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Unknown (miriyun)
2009-11-15 09:27:11
中東の料理の話になると香辛料が強いインドのような料理なのではと勘違いされている方が案外多かったです。
 中東全体、あまり辛いものは食べませんよね。
たしかに青唐辛子などとくに使いそうにないのに売っている不思議、説明してくださってなるほどです!!
 日本でも辛いものが大の苦手でも梅干おにぎりは好きというのと似ているのかもしれません。
 また、イラン人には甘口カレーを土産に・・・すごいお役立ち情報です!
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これこそ (yuu)
2009-11-15 16:21:48
まさに「思い込み」の世界ですよね~(笑)
それに、イランではインドのような料理は食さないというのも面白かったです。よく考えたら、インドほど暑くありませんものね。なんとなく一緒くたにしてしまいがちですが、それぞれ個性があるのですね^^
イラン人に甘口カレー、覚えておこう♪
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Unknown (タヌ子)
2009-11-16 02:25:13
イランは食材が新鮮なんでしょうね。
スパイスを多く使う地方の多くは暑い国で、殺菌作用とお肉やお野菜の腐敗臭を隠すために用いられていたと聞いたことがあります。
イランは冬は雪も降るし、カスピ海の新鮮なお魚も入ってくるからスパイスは必要なかったのかも知れませんね。
あの青唐辛子のピクルス、ものによっては飛び上るほど辛いですよね。
でも、確かにあれを食べても喉がヒリヒリするくらいで、胃はやられない気がします。
ソースに辛みが含まれてると、胃に負担がかかるけれど、ピクルスは平気なのかもしれないですね(よく分からないけど…)。
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miriyunさん (mitra)
2009-11-16 14:58:14
miriyunさんがおっしゃるとおり、中東の料理=辛いと思っている人、案外多いですね。なんとなく「中東=エスニック=辛い」の図式が暗黙のうちに成り立っているような・・・。クミンなどの香り付けスパイスを多用する反面、辛味付けスパイスは(チュニジアなど一部を除いては)実際には余り使用しませんよね。
ああそうそう!梅干と言えば、酸っぱいものが大好きなイラン人へのお土産は梅干もお奨めです。そのまま食べるのは勿論、本文中に書いたホレシュトという煮込料理に酸っぱ系の木の実を使うことがあるんですが、梅干もホレシュトの材料になりそうな気がします。日本の食べ物、魚出汁を使用したもの以外は(魚系の臭いは総じて苦手みたいです)お土産としてかなりウケがいいですよ!
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yuuさん (mitra)
2009-11-16 15:12:49
そうなのですよね~。北インドのお料理は、元来明らかにペルシャの宮廷料理の影響を受けて成り立ったものの、スパイスの使用法に関しては大きな違いがあります。後にタヌ子さんが書かれているように、やはり気候の違いが大きいのでしょうね。それにスパイスって、インド原産のものがすごく多いですしね。
それにしても、イラン人の食に関する「思い込み」は一筋縄ではいかないですよ(笑)。唐辛子の件もそうですが、矛盾だらけの食生活ですもの(笑)
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タヌ子さん (mitra)
2009-11-16 15:16:28
イランの食べ物は、野菜や果物、お肉は確かに新鮮で美味しいです。但し、あまり添加物が加えられていないため(?)か、実は腐るのも早いです。ただ一方で、タヌ子さんが書かれているよう、乾燥していること、真夏を除き基本的にあまり暑くないことなどもあって、気候的には食物が傷みにくいと思います。

しかし、殺菌効果を目論んで始まったスパイスを多用した料理ですが、その結果、とても美味しいものが出来ているので、人間の食に対する執着やこだわりって、素晴らしい!って思ってしまいますけど(笑)
>ソースに辛みが含まれてると、胃に負担がかかるけれど、ピクルスは平気なのかもしれないですね
料理を知り尽くしたグルメのタヌ子さんが仰ると、とても信憑性があるように思います。確かに鷹の爪など火を加えるほど辛味が増しますし。そして、青唐辛子の辛さって、確かに胃にまでは来ない気がしますね~。なるほど!
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