『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』道路と原発が止まらない共通の理由**<2013.7. Vol.79>

2013年07月22日 | 藤井隆幸

道路と原発が止まらない共通の理由

藤井隆幸

原発の世界三大メーカー

 トルコに原発が輸出されようとしている。トルコ国民はデモ・集会で抗議をするが、政府は実力行使の弾圧を繰り返している。インドでも同じ構図である。このトルコへの原発輸出は、フランスのアレバ社と三菱重工の企業体である。

 世界の三大原発メーカーは、フランスのアレバ社、アメリカのゼネラルエレクトリック社(エジソンが設立・GE)、それにアメリカのウエスティングハウス社であった。今日では、アレバ社と三菱重工の提携グループ。GEの原子力部門は日立が買収している。そして、ウエスティングハウス社は、廻り回って東芝が買い取っている。

 世界の原発メーカーの殆どを、日本企業が手掛けているというのが実態である。

世界で使用される原発の実際

 ドイツが原発から撤退をする計画であるのは、ご存知の通りである。そのことにより、自然エルネギー産業の活性化で、雇用が伸びて失業率が下がっている。それに、自然エネルギーを地域活性化策としていて、過疎化対策にもなっている。

 反面、発展途上国に原発が広がろうとしているが、産業の活性化と言うより、特に日本のODA(政府開発援助)などの金目当てと言う側面が強い。日本の巨大産業からは、政界に莫大な賄賂が期待できる。

 ところで、世界には430基ほどの民生用原発がある。アメリカ、日本、フランス、ロシア、それに中国、などが原発大国。だが、それだけでは片手落ちであろう。

 世界には軍事利用の原発がある。宇宙衛星など例外を省いても、原子力艦船に150基ほどはあると考えられる。もともと、原発は軍事利用から始まったものである。主なものは原子力潜水艦と、原子力空母である。

 今のところ、原子力艦船を保有するのは、アメリカ・フランス・イギリス・ロシア・中国に限られている。

軍事技術としての原発の威力

 原子力潜水艦は、一度潜航すると2ヶ月程浮上はしない。どこに潜航しているのか判らないのがメリットだ。衛星では察知できない。通常型潜水艦は、ディーゼルエンジンであるが、潜航中はバッテリーの電気が動力となるので、長時間の潜航継続は無理だ。したがって、簡単に位置を特定されてしまう。

 この神出鬼没の原潜に対し日本は、P3C(対潜哨戒機)が24時間365日、複数機で日本領海周辺を警戒している。電子ソナー(ブイ)を一定間隔で落とし、海中の音を拾うのである。複数のブイからの音波受信で、潜水艦の位置と国籍を特定するのである。捕捉すると領海は当然ながら、近海を出るまでは追尾するが、技術水準向上の静穏性で、ロシア・中国原潜の捕捉も難しくなっているという。

 このような原子力潜水艦であるが、戦略ミサイル潜水艦では中距離弾道ミサイルが搭載されている。米海軍の場合、16基の中距離弾道ミサイルを搭載していたが、弾道ミサイルの1つのサイロに、10基ほどのトマホーク(巡航ミサイル)を装備するように変化している。

 このトマホークは核弾頭を搭載した場合、4000kmを飛んで標的を1mも外さないという代物。通常火薬では重くなるが、それでも2000kmも飛ぶ能力がある。100本以上装備の巡航ミサイルの内、核弾頭が何発であるかは秘密ということだ。

 また、航空母艦の場合、全長数百メートルの巨艦の燃料は著しい。空母機動艦隊の燃料補給は、常に補給艦が各地で調達を必要とする。ところが、最新の原子力空母の場合、2基の原発を搭載し、建造時に核燃料を挿入すると、廃艦まで燃料棒の更新が不要といわれている。戦力の兵站、特に巨艦の燃料補給は重要になっている。原子炉は大変有利に働く。

 さて、これらの軍事利用の原子力艦の心臓部、原子炉の技術は日進月歩である。と言うより、原子炉技術はまだまだ未完成と言った方が正確だろう。この技術競争は、最先端の軍事競争と言うべきなのである。

 常に新たな原発を製造し、新たな技術開発をしなければ遅れる。福島第一原発事故で、日本国内で新設が大変困難になった。地元への賄賂攻勢で造ってきた過去の手法では、もはや地元を説得などできない。そこで考え付くのが、発展途上国への輸出である。安倍内閣が輸出に焦っているのは、米軍からの圧力が働いているのは確実であろう。新たな原発技術開発は、軍事競争の中では欠くことができないのだ。

 チェルノブイリ原発事故は、夜間の電力消費が少なくなる時間帯に、原発の稼働率を下げることができないか、それを実験している最中に起った。この忌まわしい事故のために、原発の出力調整はしないのが一般的だ。

 ところがである。米軍の原子力艦船が日本に停泊する際は、原子炉に制御棒を挿入し、原子炉の稼働を停止する。原子力艦船の停泊中は、地上から送電していたのであった。が、米軍基地の電力消費が減っていることから、停泊中も原子炉がある程度稼働していることが疑われている。チェルノブイリ事故の軽視か、原発の発電量調節と言う欠陥を、既に克服しているのか。このように、常に原発は軍事革新の中心にあり、その技術を米軍は日本企業に依存しているのである。

安倍内閣の国土強靭化計画

 話は変わって、日本の道路事情の問題である。東日本大震災を逆手にとって、安部内閣は「国土強靭化計画」なるモノを打ち出した。表向きは、震災に強い国土づくりということだが。復興資金が、沖縄の高速道路に使われるのが現実であろう。

 そもそも、天災に人間の造るハード面で対応できると考えること自体、浅知恵と言う他はない。例えば、東海・東南海・南海地震でも、超高層ビルは倒壊しないと豪語する。が、大きく振られる高層階で、人が生き残れると思う方が非常識だろう。万が一にも倒壊しなかったとしよう。二度と使用できず、解体しなければならないのは、ゼネコンも認めるところ。その費用たるや、想定には入っていないのが現実だ。

 ともかく、コンクリートと鉄で地震を防ごうということは、神に唾するに等しいといわねばならない。減災であるとか、天災に対応しやすい国土づくりなどという常識と、反対ばかりを主張する安倍内閣は、頭が狂っているとしか言いようがない。

 さて、日本の予算配分は、田中角栄以降、硬直化から抜け出せない。あの小泉内閣ですら、シーリング枠内であった。要は政財官を掌握する首相がいなくなったのだ。「オラが省庁に予算を」といった要求で、政府内の調整が困難なのだ。首相の指導力で、必要なところに必要な予算配分をするのが政治である。ところが、既得権益を主張する政財界の掴み合いの喧嘩を、取りまとめられない、世界でも珍しい現実がある。

 結果、公共事業の7割は建設省(現、国土交通省の一部)、その内の4割は道路事業と、大平内閣以降、変わらぬシーリングで推移。公共事業の28%は道路事業と決まっているのである。このために、世界の道路事業費で、日本は毎年ダントツの一位を占めるという、まことに不名誉な実態がある。

 「国土強靭化計画」を打ち出す安倍内閣では、10年間に200兆円の公共事業をという訳だ。10年間に56兆円の道路事業を行わなければならないのだ。眠っていた道路計画が、ドラキュラの如く、目を覚ますのである。

日本の経済活性化の特効薬

 単純に考えて、日本経済の失速は、実態経済の縮小であることは言うまでもない。正社員が激減する一方、非正規雇用が横行する。給与所得者や自営業者に、それぞれ差はあるにしても、所得が急激に縮小している。しかし、労働密度や時間は、70年代には考えられないほど多くなっている。この労働の価値は、一体どこに消えてしまったのか?

 一例をあげると、企業再編が急速に頻繁になっている。吸収合併や乗っ取りである。この際に、庶民には理解できないのだが、膨大な株式の売買があるのだ。株式市場を通さないものが多く、実態は不明だ。この間、数ヶ月で、マネーゲーマーは何十億、何百億円も稼ぐのである。

 いったい、その金は誰が支払うのか? 乗っ取った企業が払うということになるのだが、そこの従業員が、その分をただ働きしなければ、どこからも出ては来ない。マネーゲーム(架空経済)が儲ける分、誰かがタダ働きし、実態経済が縮小する。日本経済拡大分は、殆どがマネーゲームと言う、コンピュータの中の信号に消えてゆくのだ。したがって、実態経済は急速に衰退する。

 日本の株式市場の取引の7割が外国人投資家と言われている。これはアメリカの巨大銀行の手下のマネーゲーマーと、アメリカを中心とする保険業(機関投資家群)なのである。安倍ノミクスで上昇した株価はマネーゲーマーの仕業だが、既に叩き売られだしているだろう。その下落を支えるのは、日本の企業たちである。自社株が下がれば、四半期の決算が悪くなり、又株価が下がる。だから買支えるしかない。その損失は、経費の最大割合を占める、人件費の削減で穴埋めしなければならない。そして、コンピュータの中に取り込まれた、日本人の労働の価値は、アメリカに転送されてしまう。

 こうして、日本の実態経済が疲弊した中で、カンフル剤になるのは、もはや公共事業しかないのである。この公共事業は、税収を上げることが前提であるが、国民所得が減少する中で、異端な税金を盗るしかない。お金を動かすところに税金をかける、つまり消費税の増税である。これは経済の破綻に突き進むことに他ならないのであるが。

アメリカ支配層と日本のリーダーの思惑

 安倍内閣は、何を目指しているのだろうか? こうして見ると、田中角栄や鈴木宗男、それに小沢一郎などの大物政治家を除いて、概ねアメリカ支配層のご意向に従う日本のリーダーばかりだ。安倍晋三は岸信介の孫である。ご存知の通り、岸信介は「昭和の妖怪」と称された人物。60年安保改定の立役者であった。アメリカの日本支配構造の構築者の孫が、アメリカ支配層の傀儡であるということは、別に不思議なことではない。

 今日の地球規模の政治経済で、もはやアメリカの地位は崩れかけている。昨年末の「財政の崖」は克服できる目途の無いまま推移している。GDPは2016年にも、中国に抜かれる情勢だ。産業の7割を第三次産業で占めるという、国としての基礎構造をもたない。モノを作らない国で、輸入に頼らねばならないのだ。

 このアメリカの支配層のなかにも、方向転換を求めている者もいるだろうが、当面、日本と言う経済大国から生き血を吸わねば生きて行けないということである。巨大に見えるアメリカは、実は藁をもつかむモガキの最中なのだ。藁を提供させられている日本が、その崩壊を支える。

 日本の支配層のやっていることは、崩壊するアメリカ従属と言う点で合致している。

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