『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』この流れとめるのは主権者である我々だ (斑猫独語62)**<2014.9. Vol.86>

2014年10月01日 | 斑猫独語

この流れとめるのは主権者である我々だ
(斑猫独語62)

澤山輝彦

 毎日、朝食時にその日の朝刊を見る。食べながら新聞を読むのは行儀の良いことではないから、さっと見出しを目にするという程度にはしているが、たったそれだけの事でも消化によくないことがたびたびある。8月3日の朝刊(毎日新聞)の第一面のトップ見出しも消化不良を誘発するものであった。四段で「有事に民間船員『徴用』防衛省検討 戦地輸送で予備自衛官に」とある。もう、これはほとんど戦争中だといって通用することではないか。政治家や官僚にここまで頭を働かしてくれと頼んだ覚えは絶対にない。記事にはすでに2社から高速のフェリー2隻を借りる契約を結んだとあるから検討ではない、すでに実施していたのだ。この国はどこまで戦争にむけて突っ走るのだろう。太平洋戦争では軍に徴用された民間船約2500隻が沈められ、6万人以上の船員が犠牲となった。記事はこういう導入部で続いていく。

 私の母が神戸から《あるぜんちな丸》で渡米した時と、友人がが《ぶらじる丸》で移民する時の二度、神戸港の桟橋から船出の人を見送るという経験をした。銅鑼が鳴り別れのテープがいっぱいの船出は特別の情緒を感じさせてくれた。涙の別れというものではなかったから、二隻の船を間近に見ることができる、あわよくば見送り人として乗船できないかなあ、そんな考えを伴った見送りであった。その時は知らなかったがこの二隻いずれも二代目だったのである。初代《あるぜんちな丸》は昭和14年7月に就航、昭和18年11月長崎で大改造され、航空母艦「海鷹」になる。海戦を潜り抜けてきたが、昭和20年呉軍港で米軍機攻撃により被弾、7月豊後水道で機雷に触雷、別府湾へ曳航中空爆をうけ大破、実働わずか三年半であった。《ぶらじる丸》は開戦後、海軍の特設運送船となり軍需物資の運搬にあたっていた。ミッドウェー作戦にも参加している。昭和17年8月4日「空母へ改装、至急横須賀へ回航せよ」の命を受け、トラック島から単独回航中5日潜水艦の魚雷攻撃を受け被雷7分後、乗組員便乗将兵389人のうち188人とともに沈没する。戦後両船は再建されたが過去の栄光ある活躍はなかったようだ。私が目にした時はまだ活躍していた頃なのであろう。末路は中国へ売られた、台湾で解体されたなどさびしいが、船の最後は解体、鉄にもどるのである。

 海運がすたれ、鉄道輸送もすたれていった。両者の接点である港周辺の臨港鉄道の跡などたどろうにも痕跡すらないというほど消されてしまったものが多い。この両者に復活の兆しがあるという情報を得たのだが、それがどこからだったかたどれないのだ。情報源はとにかく、このことはスピード、利便性一辺倒でやってきた様々な現代機械技術とそれと共に変化していった人間性について考え直す大事な時点の一つになるのではないだろうか。道路問題の原点はまさにここにあったのだ。私達が生きる時間は限られるが、急いで時間だけを送っても得ることは少ない。時間をかけるということは人間であることをそこにかけるということだ。そこには発見があるかもしれないし、思索は深まりはすれ薄れることはない。物を考える時間が無いなどと言うことはなくなる。スローに生きる、自然とともに生きる、海運、鉄道輸送の復権を自分達のこれからの生き方にあてはめて考えてみたのだ。

 「徴用」という言葉から始めたこの独語、徴用なんて言葉は使ってほしくない、二度と見たくない。兵隊を運ぶなら自前の軍艦、輸送船で運べばいい。いやこう言ってはいけない、日本は戦争を放棄した国だ、軍艦なんて要らないのだから。歯軋りしながらでも戦争をしてはならないと言い続けなければならない。どんなことがあっても次回の国政選挙にはこんな戦争好き好き勢力を絶対に勝たせてはならない。有権者一人ひとりにこのことが問われている。賢くならなければならないのだ。

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※ あるぜんちな丸、ぶらじる丸については「客船がゆく 海・人・船のものがたり」土井金二郎著 情報センター出版局 1991 を主に参考引用した。

※ 日本の商船隊の潰滅の歴史は「日本商船隊戦時遭難史」財団法人海上労働協会、昭和37年というのに詳しいという文献も見つけた。

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