『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』**2009年を迎えて**<2009.1. Vol.55>

2009年01月01日 | 藤井隆幸

2009年を迎えて

世話人 藤井隆幸

お正月雑感

 年々歳々、お正月が来るのが早くなったように感じます。歳をとったせいかとも思うのですが、実際は社会生活のテンポが速くなったのだと考えています。駅から僅か2kmの場所に行くのに、60年代なら歩いたであろうことは、我々の年代であれば知っていることでしょう。昨今、2kmも歩くということがなくなってきました。車で生活していると、5分で到達するところを、15分もかけて歩く時間のロスが許せない感覚が身についてしまったのでしょう。車を維持しなければならない生活は、余計な収入を稼ぐ労働時間を必要とし、その時間を換算すると、歩いた方が実は早いのですが。

お正月のトビックス

 さて、年末年始に話題となった日比谷公園。職と住居を失った派遣労働者の難民テント村が、社会問題となりました。この現象を如何に捉えたらよいのでしょうか。日本の労働者に占める、非正規雇用は38%にもなります。年収200万円以下の世帯に暮らす人口は、1000万人にも及び、人口の1割になろうとしています。一方で、資本金10億円以上の大企業だけで、内部留保(税金のかからない純利益)は、実に230兆円にも及びます。株式配当は10年で5倍以上という、驚異的な伸びを示しています。

今日の破綻に陥った政策

 橋本内閣から以降に進められた『金融ビッグバン』と、『労働法制の規制緩和』で、このような事態を招いたことは明らかです。いずれもアメリカの圧力によるものですが、信用金庫・信用組合は徹底して取潰しと合併が強要されました。銀行の使命が、預金を集めて企業に貸す、そのことに変更が加わりました。投資圧力と投資規制緩和で、株式取引量が極端に増加。投資税制の優遇で加速。会社乗っ取りであるM&Aが横行。多くの会社が乗っ取り工作に遭いました。

 このような投資過熱は、6~7割が外国の投資ファンド(基金)で、バックにはアメリカの大銀行がありました。サッポロビールにスティールパートナーという投資ファンドが、M&Aをかけてきました。幸い、結果は失敗に終わりましたが。株式投資やM&Aの多くはヘッジ・ファンドというものが行なっています。極短期に株式売買をし、差益だけが目当てになってゆきました。

 そのことにより、企業は長期的展望を考慮することなく、決算毎の短期の利益率のみに固執しました。決算で前期(年)比の利益率が下がると、一瞬にして株が売られて暴落します。株式配当を常に向上させなくては、また株が売られて暴落します。株価が下落すると、一挙にM&Aの攻撃にさらされるという事態に陥ります。

 このような極端な企業利益率向上を、底辺で支えたのが非正規雇用でした。同じ労働をしても給料は半分で済みます。正社員を解雇して、非正規に置き換えることで、利益率を向上させたのです。それに企業の長期的展望はなく、短期の目先の利益に執着するため、企業部門の新設・廃止を繰り返し、派遣社員・期間社員は都合の良い労働力の調整弁にされたのです。

失政加速の小泉・竹中『構造改革』

 90年代後半からはじまった労働法制の規制緩和は、99年の派遣労働の原則自由化で、一挙に進んでしまいました。04年の製造業への派遣労働の解禁で、日本は世界的にも稀な、非正規雇用率を体現することになったのです。これには舛添厚生労働相も、批判せざるを得ませんでした。

 日本はソーシャルダンピングの自動車や電機を、アメリカに大量に輸出し、アメリカからの貿易黒字で稼ぎました。その稼ぎの多くは、日本におけるマネーゲームで、アメリカの大銀行が吸い上げてしまいます。アメリカ国内の労働者は、製造業が消失してゆき、失業が蔓延していました。一方では、巨大金融資本がサブプライムローンに象徴される、住宅投資のバブルに踊っていました。

 日本では非正規雇用で国民の所得が激減し、消費能力が減退し、市場は不況の真只中。一方で、大企業は毎期々々、純利益を更新して利益を巨大に溜め込みました。富の蓄積は巨大化しているのに、市場は冷え切ってしまっています。

日本の将来への処方箋

 このような『金融ビッグバン』『労働法制の規制緩和』は完全破綻というベきです。アメリカの金融崩壊は底が知れず、日本の不況も政府の機能麻痺で、政治災害の様相です。しかし、完全に破綻した『構造改革』論者の竹中平蔵ごときが、テレビに出演してモノが言えるのです。人前に出れば、生卵をぶつけられるというのが、グローバルスタンダードなのですが。

 まず、非正規雇用の解雇が8万5千人を超えるようですが、この解雇を止めさせて正規雇用に戻させなければなりません。大企業の内部留保の0.3%で可能なことです。株式配当の数%で済む話です。そして市場の活性化を図ります。企業活動もアメリカ中心の輸出に頼るのではなく、国内需要に対応することが肝心です。

 そして何より肝心なことは、自動車の保有台数が暫減してゆく事態の中で、高速道路建設に代表する、公共事業の思い切った削減が必要です。日本の公共投資は世界的に異常な突出をしています。ニューディール政策の成功は過去のものです。公共工事による経済波及効果は、今日、医療事業の経済波及効果にさえ及ばないのです。福祉・医療・教育の公共支出で、経済活性化が何よりも必要です。膨大な儲けに追い金の、大銀行資本注入や大企業への補助金は、経済の沈滞にしか貢献できません。

私たちの出番

 ことしは衆議院議員の任期が9月で切れます。いずれにしても9月までに解散か、任期切れの総選挙です。現在のところ、政治評論家は自民党も民主党も、単独過半数は無理だろうという予想です。

 保守政治の特徴は、議会の討論で問題を鮮明にし、世論に訴えて政策を遂行することが出来ません。「拠らしむべし、知らせるべからず。」が、今もって基本なのです。そのことから、議会で過半数を取ることが、絶対条件なのです。しからば結論は見えています。選挙後は自民・民主の保々連合であることは明きからでしょう。そうした時には公共工事は突出して、高速道路だらけということになってしまいます。自動車の走らない高速道路が出現します。

 私たちのネットワークは政治団体ではありませんから、選挙に関わるというのは難しいと思います。しかし、高速道路造りが日本の経済活性化に、 逆噴射であることを世論にすることは出来ます。日本の将来の経済に、国民的注目が集るこの次期に、公共事業(特に高速道路建設)より福祉・医療・教育の方が、経済効果があることを訴える機会にしたいと思います。

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