澤山輝彦
<氷川清話よリ>
講談社学術文庫の一本に勝海舟の「氷川清話」(江藤淳・松浦玲編)がある。勝海舟の談話集である。最初に勝海舟の談話を編集したのは吉本襄という人でその版「海舟先生 氷川清話」は読みやすいものであったから広く世の中にしられてきたものだそうだ。
だがこの吉本本、書き直しが多く原文の意味が損なわれているものが多いという。文庫版解説によればこの書き直しの中には許しがたいものがあると言うし、もっとひどいのは意図的な書き直しがされていることで、海舟の時局批判、明治政府批判はあらかた削りとられている、首相や閣僚を名指しで攻撃している談話が、まるで世間一般を訓戒しているような抽象的道徳論にすりかえられる、日清戦争の最中に戦争に反対した談話などは初めから収録を見合わせていた、というのである。世の中には腰抜けがいるのは今も昔も変わらないのだ。
「高速道路はまだまだ造る必要があると言が、高速道路はもう造るのを止めてもいいのだよ。あんな物を造りまくって流通流通などと言っている内に、自分たちの食べる物の自給率がどんどん下がって行ったのさ。我が国は瑞穂の国と言うではないか。せめて米だけでも完全自給の道を確保しておかないと、いまにひどい目にあうよ」
「道を造れば急患を運ぶのに便利になるなどと国会で答弁していた大臣がいたが、今は病院に着いても診てもらえず、たらい回しになる時世ではないか、もっと根本的に人が生きてゆける道を造らねばならないのだ」
「最近の日本人はおとなしくなりすぎたようだ。特に若者になあ。すこしはチベットの人を見習ってもいいんじゃないかなあ、大学まで進学する若者が多い世の中になったのに、若者に覇気が無いのだ、そこをうまく利用されているのだよ。これは食い物のせいもあるのではないか、米を中心にした和食を見直す時にきているのさ」
勝海舟風、大和濁話でした。
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