『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』第35回道路全国連全国交流集会に参加☆「PM2.5」の環境基準決まる**<2010.3. Vol.63>

2010年03月01日 | 神崎敏則

第35回道路全国連全国交流集会に参加
「PM2.5」の環境基準決まる

みちと環境の会 神崎敏則

 第35回道路全国連全国交流集会は、10月24、25日横浜で開催され、41団体200名が集いました。

 一日目は、現地住民団体の案内で横浜環状南線を現地見学しました。横浜環状南線は、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の一部で、横浜の都心から半径10km~15kmを環状につなぐ横浜環状道路です。圏央道は、1メートル1億円以上かかる東京外かく環状道路、首都高速中央環状線をふくめ「首都圏三環状道路」と位置付けられています。

 首都圏のベッドタウンを6車線の高速道路がトンネルや掘割方式で通される計画です。現地に貼り出されているインターチェンジの予定図を見ると、アクセスのために、3層にも4層にも走行レーンが積み上げられていて、あたかも巨大な立体迷路を造ろうとしているかのような、あきれ果てるほどの構造物でした。

 2日目の全体会では、まず、西村弁護士からPM2.5の環境基準が決まった経緯とその評価が報告されました。この「PM2.5」は、微小粒子状物質であり、世界的に、ぜん息、肺がん、循環器疾病の原因物質であることが明らかになっています。昨年9月に導入された大気汚染物質「PM2.5」の環境基準は、「公害被害者や住民運動でかちとったもので米国基準なみの画期的なもの」だそうです。西村弁護士がかかわってきた07年の東京大気汚染公害裁判の和解条項の1つとして、この基準設置を求めていました。

 今後の課題として、(1)測定体制の整備(2)基準達成にむけた発生源対策(3)道路アセスメント(環境影響評価)の実施(4)国レベルでの大気汚染被害者救済制度の創設――を急ぐべきだと訴えられました。

 

有害微小物質「PM2.5」に環境基準 環境省提示へ

 空気中に漂い、吸い込むと肺がんや循環器疾患の原因にもなる微小粒子状物質「PM2.5」について、環境省は先行する米国と同レベルの環境基準を設ける案を固めた。PM2.5は従来の規制物質よりさらに小さく、重い健康被害につながる恐れがあるとされていた。28日に開催の有識者の専門委員会に提示する。秋にも正式に定められる見通し。

 直径が10マイクロメートル(マイクロ=100万分の1)以下の浮遊粒子状物質(SPM)にはすでに環境基準があり、大気汚染防止法のほか、大都市圏では自動車NOX・PM法で排出も規制されている。 PM2.5は、SPMに含まれるが、直径が2.5マイクロメートル以下の粒子をさす。ディーゼル車の排ガスや工場の煙などに多く含まれる。粒子がより小さいのでとらえにくかった。だが、肺の奥深くまで届いて沈着しやすく、SPM規制で主に想定する呼吸器疾患だけでなく、肺がんや循環器疾患の原因にもなるとされる。そこで、PM2.5に絞って基準を設けるため延べ2年にわたり議論していた。

 今回提示する基準は、年平均で1立方メートル当たり15マイクログラム、日平均で同35マイクログラムで米国と同じ。世界保健機関(WHO)の指針より緩いが欧州連合(EU)より厳しくした。この基準なら肺がんなどの健康被害は出にくいという。今後、中央環境審議会の大気環境部会でも了承を得て国民の意見を聴いた上で、早ければ9月にも環境相が告示し、正式に決める。日本国内の都市部のほとんどが、この基準を上回るとみられる。基準を達成するためには車や工場などの排出規制を進める必要があるが、排出源からどの程度出て、どれくらい規制すればよいかなどは今後検討することになる。

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PM2.5環境基準値、年平均15マイクログラム以下に
 ―― 中環審が答申案――

2009年07月16日

 粒子状物質(PM)はさまざまな種類や大きさの細かい粒のことで、なかでも粒径2.5ミクロン以下の微粒子を「PM2.5」と呼ぶ。PM2.5には発生源から直接排出されるものと、ディーゼル自動車の排気ガスに含まれるDEPなどが大気中で光化学反応を起こしてできる二次粒子とがある。気管支炎やぜん息など呼吸器系の病気を引き起こす原因とされており、米国では規制が行われ、日本でも規制の必要性が指摘されている。環境省の中央環境審議会は、昨年12月になされた諮問「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について」について、大気環境部会に微小粒子状物質環境基準専門委員会などを置いて検討を行い、このほど答申案をまとめた。

 本答申案は、PM2.5の環境基準設定にあたって指針とすべき値を、年平均値が1立方メートルあたり15マイクログラム以下で、かつ、1日の平均値が1立方メートルあたり35マイクログラム以下としている。この数値は米国の基準と同じレベルだが、世界保健機関(WHO)の指針値である年平均値で1立方メートルあたり10マイクログラムよりはゆるやかな基準だ。

 また、PM2.5の環境基準設定にあたって、次の課題があると指摘している。

  1.  PM2.5による大気汚染の状況を把握するため、監視測定体制の整備とともに体系的な成分分析が必要
  2.  PM2.5の削減には、工場や自動車などの発生源に対して行って粒子状物質全体の対策を進めることが重要
  3.  PM2.5の発生源は人間活動によるものだけでなく、黄砂や噴煙などもあるとされており、大気中の挙動も複雑であるため、排出状況の把握や排出インベントリの作成、大気中の挙動や二次生成機構の解明などを進め、より効果的な対策を検討すべき

 一方、PM2.5の測定方法については、ろ過捕集による質量濃度測定方法か、それと同等の自動測定機による測定方法を採用すべきであるとしている。同省は本答申案の内容についてパブリックコメントを行い、その結果を踏まえて秋にも基準を告示する予定だ。

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 環境省は、微小粒子状物質に係る環境基準について、平成21年9月9日付けで告示を行った。

 平成20年12月9日に環境大臣が諮問した「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について」に対して、中央環境審議会は平成21年9月3日に環境大臣に対し答申を行った。

 環境省は、これを受けて、環境基本法に基づく大気の汚染に係る環境基準を告示したとのこと。

 今回の告示では、微小粒子状物質に係る環境基準として、「1年平均値が15μg/?以下であり、かつ、1日平均値が35μg/?以下であること。」としている。

 また、微小粒子状物質(PM2.5)とは、大気中に浮遊する粒子状物質であって、その粒径が2.5μmの粒子を50%の割合で分離できる分粒装置を用いて、より粒径の大きい粒子を除去した後に採取される粒子としている。

【環境省】

「PM2・5」新基準設定 「大気汚染の改善急務」公害患者会見

 ぜんそくや肺がんの増加など健康に悪影響を与える微小粒子状物質「PM2.5」の環境基準が9日に告示されたことを受け、全国公害患者の会連合会と大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議は同日、環境省で記者会見しました。全国の大気汚染が大都市部はおろか地方都市でも軒並み環境基準をオーバーしている深刻な実態を指摘し、「被害者の発生をくいとめる早急な対策が必要だ」と訴える声明を発表しました。

 告示されたPM2.5の環境基準は、米国と同水準の年平均値が大気1立方メートル当たり15マイクログラム以下、日平均値が同35マイクログラム以下。PM2.5は直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子で、おもに自動車排ガスが発生源です。

 同基準について、声明は「各地の大気汚染公害裁判の和解で追求され、東京大気裁判和解で約束されたことを受けたもので、大気汚染被害者と市民の運動で勝ち取った成果」と評価しています。

 全国の主な測定地点の濃度は同20マイクログラム前後で、新基準を軒並みオーバーしています。声明は、国や自治体に(1)PM2.5の測定体制の整備(2)自動車の交通量や排ガス規制など発生源対策の着手(3)道路建設などの環境影響調査にPM2.5を加える(4)国レベルの新たな大気汚染被害者救済制度の創設――などを求めています。

 記者会見した同連絡会議の西村隆雄・東京大気汚染公害裁判弁護団副団長は「環境基準設定はゴールではなく、新たなスタートライン。新政権の公約にもある大気汚染公害被害の補償制度の創設の早期の実現を求めたい。高速道路の無料化は公害対策に逆行するので、やめてほしい」と指摘しました。

1 クローズアップされるPM2.5汚染

 この間、わが国の大気汚染をめぐっては、SPMについて、東京全域で環境基準を達成したのをはじめとして、全国的にみても、環境基準達成率は大幅に改善されてきた。

 しかしその一方で、学校保健統計調査でみても気管支ぜん息患者は増加の一途をたどっている。ここでクローズアップされているのがPM2.5(微小粒子)による大気汚染問題である。

 粒径2.5ミクロン以下の微小粒子(PM2.5)は、人為由来の自動車、工場、事業場からの燃焼物により構成され、粒径が小さいため肺の深部に侵入、沈着する割合が大きく、粒子表面に様々な有害物質が吸収・吸着されていることから、発ガン性を含む健康影響がより大きいことが以前より指摘されていた。

 このため米国では、1997年の改定で新たにPM2.5環境基準が設定され、さらにその後の調査・研究の進展も踏まえて、2006年9月にPM2.5基準が強化された。またWHO(世界保健機構)も、2006年10月に全世界に向けてPM2.5ガイドラインを新たに設定、提案するところとなった。そこでわが国におけるPM2.5の汚染についてみると、全国の都市部では自排局はもちろんのこと、一般局においても、先のWHOガイドライン、米国環境基準を大幅に超過する深刻な汚染実態となっている。

2 この間の経緯

 こうした中、わが国で2000年1月の尼崎大気汚染公害訴訟判決において、幹線道路沿道における気管支ぜん息の危険の増大は、自動車由来の微小粒子による影響であると認定された。そして各地の大気汚染訴訟のたたかいでは、その後もPM2.5環境基準の設定に向けて果敢にアタックして、一定の条項もかちとってきたが、PM2.5環境基準設定に向けた具体的動きはないまま推移してきた。

 しかし、さすがの国・環境省も、2007年4月の衆議院環境委員会での「早期に環境基準の設定を」との付帯決議をうけて、2007年5月に、微小粒子(PM2.5)の健康影響を検討する「微小粒子状物質健康影響評価検討会」を立ち上げ、2007年8月成立の東京大気汚染公害訴訟の和解条項で、「(上記検討会の)検討結果を踏まえ、環境基準の設定も含めて対応について検討する」と基準設定も視野に入れた対応へと変化のきざしを見せてきた。

 その後同検討会は、本年4月、報告書をまとめるに至った。報告書はその結論において、「総合的に評価すると、微小粒子状物質が、総体として人々の健康に一定の影響を与えていることは、疫学知見並びに毒性知見から支持される」として、微小粒子の有害性を明確に認めるに至った。そしてとりわけ注目されるのは、従来認められていた呼吸器疾患への影響に加えて、心筋梗塞などの循環器疾患、さらには肺ガンへの影響も認めたうえで、疾病の増加、増悪のみならず、死亡リスクの増加の影響まで認めたことである。

 かかるうえは、中央環境審議会に諮問したうえで、政府としてただちにPM2.5環境基準の設定に進むべきということになる。しかしながら環境省は、さる4月の中央環境審議会大気環境部会に、検討会報告書の報告を行ったうえで、「今後PM2.5の定量的評価をめぐる方法論の整理に作業期間が必要」、「年内目途に報告させていただきたい」などと発言し、環境基準設定をさらに来年にまで先送りする構えを示している。

3  一刻も早く環境基準設定を

 しかし、先に述べた事態を前にして、政府としてこれ以上、環境基準の設定を先延ばしすることは、絶対に許されない。さる3月27日、東京において日本環境会議、岡山大学大学院教育改革支援プログラムの主催で、WHOの第一線の専門家を招いてPM2.5国際シンポジウムが開催された。ここでも、WHOガイドライン設定の経緯とその根拠となった科学的知見が詳細に紹介されたうえ、PM2.5の健康影響は今や明白であり、WHOとしては、欧米のみならずアジアを含む全世界に通用するものとしてPM2.5ガイドラインを提案していることが強調された。

 この間、各地の大気汚染公害裁判をたたかってきた全国公害患者の会連合会と大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議(大気全国連)は、PM2.5環境基準の早期設定を求めて、宣伝活動・環境省交渉と旺盛な活動を展開してきた。事は待ったなしであり、東京大気裁判和解条項での約束を守らせ、一刻も早く基準設定を実現すべく、全力で取り組んでいく決意である。

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