『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』横断車道(8)**<2000.12. Vol.8>

2006年01月03日 | 横断車道

「嘘も百回つけば本当になる」、これはヒットラーが言った格言である。デタラメな嘘でも、まことしやかに何回も言っていれば、人々は騙されて真実と思い込むものである、と言う意味である▼芦屋市と西宮市で事業が進行中の市道「山手幹線」は、沿道の市民から強力な反対運動を受けている。環境や財政問題で、市民にとって何のメリットもない事業であるのは言うまでもない。尼崎公害訴訟では一定濃度以上の浮遊粒子状物質を、原告宅敷地に侵入させて通行に供してはならないと言う、差し止め判決(’00/1/31神戸地裁)まで勝ちとった。これを受けて政府も世界に遅れ馳せながら、ディーゼル排煙の発癌性を認めるにいたっている。また、乗用車や3.5t以下のトラックはディーゼルを認めない方向になった。幹線道路を住宅地に接近して造るべきでない事は、時代の趨勢である▼「週刊ダイヤモンド」では、芦屋市を財政破綻度ランキングの全国上位自治体の18位としている。「週刊朝日」では、西宮市の財政赤字を全国自治体の4位としている。山手幹線事業には芦屋市で500億円、西宮市で300億円を見込んでいる。これは当初の見積もりで、道路事業では終わってみれば当初予算の倍はかかるのが一般的だ。半分は国からの補助金としても、市債の金利も含めて数百億円の市民負担は免れない。全市民一人当たりの負担は、芦屋市で70万円。西宮市で7万円ということになる▼芦屋市全体と西宮市の西半分の市街地は、瀬戸内海と六甲山脈に挟まれた僅か南北に2kmの土地である。山手幹線を含めなくても東西道路交通の、日交通容量は50万台を上回る。このように狭い地域に膨大な交通容量を持つ地域は、全国的にも珍しいといえる。東西交通容量を増やす必要は皆無である。東西交通量の増大は、必ず南北交通の障害となるのは交通工学の常識である。弊害を造るだけの山手幹線である▼そもそも眠っていた山手幹線を掘り起こしたのは、バブル以前に計画されていた阪神間南北高速道と東神戸トンネル(高速道)の、アクセス道路として必要であったからである。その二つの高速道路計画が、強力な反対運動と財政破綻で空中分解した今日、山手幹線の必要性そのものが無いのである▼ところが市当局は、カラー刷りの立派なリーフレットで震災対策だと説明しだした。防火帯になるとか、救援物資の輸送路になるというのである。あんまり繰り返し言うので、市民の中には信じる人も出てきたようだ。これがヒットラー式の嘘を本当にする手法である▼阪神淡路大震災の際に村山内閣は、14兆円の復興資金を計上した。被災者を蹴散らして、行政内部では14兆円の争奪戦が繰り広げられた。何でもかんでも震災復興と称すれば、棚ぼた式に臨時資金が入るのである。港湾拡張も鉄道整備も区画整理も、道路整備もそれである。被災者の生活支援は放置して、ゼネコンと行政と族議員が復興資金の争奪戦をしたのである▼そもそも建設省や土木局の連中に震災対策を言う資格は無い。震災当初、倒壊家屋の下で救助を求める市民を放置して、当時ゼネコン汚職で肩身の狭い業界に、いかに仕事が段取りできるのか調査に奔走していたのは誰か。震災で救出された人命の8割は、自衛隊でも機動隊でもレスキュー隊の手でもない、隣人市民の手であった。区画整理でコミュニティーを破壊しては、震災に強い街づくりにはならない。被災者の立場にたたない土木局には分からない事であろう▼国道2号線以北の西宮市では、周辺道路が通行不能になったばかりに、当初、渋滞が発生せずに、長田区と同じ火災発生件数があるにもかかわらず、初期消火に成功している。長田区では周囲に自動車専用道を抱えていた為に、乱入してくる車に消火活動が妨害され、大火災に発展して多くの人命が失われた▼国道43号線沿道では、幹線道路沿い故に長期間に及び環境破壊が続き、南北分断が続いた。当然、生活復興が遅れた。震災発生時間帯が幸いにも早朝の交通量が少ない時間であった為に、道路火災が少なかった。昼間の地震であれば、道路は火の海となったであろう事は言うまでもない。一般的に5m以内であれば、車両火災は延焼してゆく▼支援物資の輸送路の問題であるが、150万被災者の食料は、1回分で11t車にして1台にしかならない。自治体の職員は支援してくれた人の気持ちを配慮して、支援物資の大半は復興活動の阻害物になったことを言わない。混乱した現場で、無秩序に送られてくる物資は、必要なところに必要なものを届けられなかった。市役所は支援物資でふさがり、受け取り拒否された支援物資は、郵便局をも埋め尽くして業務を妨害した。道路で渋滞した支援トラックの9割は必要なかったのである。有珠山の被災地自治体が、早々と支援物資を断ったのは、当を得たものであった▼あの阪神淡路大震災の際に、山手幹線が完成していたら、被害はもっと大きくなったと考えられる。山手幹線が震災に強い街づくりにならないし、復興活動にメリットがあるとは考えられない。大震災の際は、総ての民間車の通行を禁止しないような行政の無能ぶりが続く限り、幹線道路は震災被害増大にしかならない。江戸幕府でさえ、火災時に大八車を持ち出した者は厳罰に処したという。交通政策の先進地東京都では、大震災の際には環状7号線以内に車が進入しない対策をたてている▼白を黒といって恥じない市当局の宣伝に、もっと怒り、土木局のヒットラー式の嘘宣伝を、住民側は徹底的に反撃しなければならない。 (コラムX)

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