歌集十点
前川協子
京伏見「雪香具礼(ゆきがくれ)」とうカフェにて
酒粕パスタの美味(うま)きに酔いぬ
灼熱の恋も知らずに年古りて
脳科学者は慾持てと説く
裸木がXYと絡みいて
梢が風に揺らぐ元日
今一度逢いたしとう賀状見て
逢うが叶わぬ亡き人想う
老残の身を情無やとこぼしてた
亡母(はは)懐かしき八十路(やそじ)の初春(はる)に
スケジュール真白な侭の如月(きさらぎ)を
迎えて侘びし手術を前に
初々しお下げ髪の看護士が
頬染め交替告げくる朝(あした)
娘(こ)の発(た)ちしあとの部屋には仄かなる
匂い残れりカーテンを引く
手術後の点眼にも慣れ久々に
春陽(はるひ)を浴びて外出(そとで)楽しむ
唐突にケキョケキョケキョと鶯の
初音聞こえて閑(しず)まれり
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます