『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』**歌集十点**<2015.3. Vol.88>

2015年04月13日 | 前川協子

歌集十点

前川協子

京伏見「雪香具礼(ゆきがくれ)」とうカフェにて
          酒粕パスタの美味(うま)きに酔いぬ

灼熱の恋も知らずに年古りて
          脳科学者は慾持てと説く

裸木がXYと絡みいて
          梢が風に揺らぐ元日

今一度逢いたしとう賀状見て
          逢うが叶わぬ亡き人想う

老残の身を情無やとこぼしてた
     亡母(はは)懐かしき八十路(やそじ)の初春(はる)に

スケジュール真白な侭の如月(きさらぎ)を
          迎えて侘びし手術を前に

初々しお下げ髪の看護士が
          頬染め交替告げくる朝(あした)

娘(こ)の発(た)ちしあとの部屋には仄かなる
          匂い残れりカーテンを引く

手術後の点眼にも慣れ久々に
          春陽(はるひ)を浴びて外出(そとで)楽しむ

唐突にケキョケキョケキョと鶯の
          初音聞こえて閑(しず)まれり

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