阪神電車の久寿川駅から香枦園駅の間が、既に高架になっていた神戸行きに続いて、3月3日に大阪行きも高架になった。この高架工事費用の僅か5%だけを阪神電鉄が。残り半分は国が、4分の1づつを兵庫県と西宮市が負担した。阪神電鉄にとって、こんな有難い話は無い。ここで大企業優遇を云々するつもりは無い▼今は建設省も運輸省も一つになって、国土交通省となったが。この阪神電車の高架事業の所管官庁はといえば、旧運輸省と思っている人が大半であろう。しかし、工事現場には「この事業にはガソリン税が使われています」の看板がある。歴とした道路事業(道路の障害物である踏切撤去)、旧建設省の所管である▼年間の整備新幹線予算は1000億円、全国のダム予算は3000億円。対して道路予算は12兆円。予算が余ったら、足りない所へ廻すというのが、国民の良識である。が、政治屋的・官僚的発想では、既得権益を守るため、無理・無駄ごり押しでも、予算枠は死守するのである。景気回復が望めないわけである▼さて、阪神高架で渋滞は緩和されたのであろうか。総合調査をしなければ、云々できないのは承知している。しかし、地元で生活している感覚からすれば、踏切廃止の日から、その道路での43号線や2号線の信号待ちの列は、何倍かに増加している。踏切廃止の情報を得たドライバーの数パーセントが、武庫川〜甲子園駅間・芦屋市域の踏切から迂回した結果であろう。自動車交通は無政府的(少なくとも日本に於いては)なので、混雑程度が全域で均等化されるには少々の期間が必要であろう。渋滞緩和や通過時間の短縮には、それ程の効果があったとは考えにくい▼そもそも、この区間の東西交通は、日交通量にして40万台に及ぶ。対して南北交通は、5〜6万台に過ぎない。自動車交通の特徴として、東西交通の障害にならないように南北交通容量を増やそうとするならば、東西交通容量も同じ比率だけ増やさねばならない。43号線や2号線の公害の現状を考えた時、もう東西交通容量は増やすべきではなく、むしろ減らすことが求められている▼事実としては疑わしいが、多少の南北交通の歩行者や自動車が、通過時間を削減できたとしよう。阪神電車も些少ながら、高速化・過密ダイヤが達成できるであろう。しかし、阪神電車利用客は数段の階段から、三階建ての階段を上下しなければならなくなる。エスカレーターやエレベーターは在れど、阪神電車の駅利用客は、踏切通過の人数の何倍もいるのであるから、その人たちのロスタイムは計り知れないことになる▼日照被害・電波障害の補償費も膨大である。数十年の歳月と数百億単位の税金を投入して、沿線住民に耐えがたい被害と迷惑を掛けて、得られたものは何であったのか。冷静に考えてみる必要があるのではないか。大山鳴動してネズミ一匹。偏向した車優先社会的感性で、人を無視し続けてきた結果ではないのか。 (コラムX)
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