二酸化窒素(NO2)のカプセル調査に対し、行政当局は当初、その性能は疑問であるとした。しかし、国民のコンセンサスを得た調査手法を無視するわけにも行かず、最近は尊重する立場になりつつある。否定的であったのは、住民団体を支援している天谷氏が開発したものだから。大気汚染の調査を行政が独占的したいのに、住民主導の調査でイニシアチブを執られたくない、という意図があったからであろう。▼ともあれ、住民主導の大気汚染調査をするようになった意義は大きい。しかしながら、科学的知識をもった指導者に、必ずしも恵まれているとは言えず、その努力が多少空舞している調査も無くはない。化学反応を応用した調査ゆえ、化学に多少の知識が必要。また、測定局とのリンクを調べる必要があり、自治体職員ともつながりを持たねばならない。データの分析は最も大切で、発生源とその拡散を推計しなければならない。▼最近は東京・大阪・兵庫などに、集団で大気汚染を調査する団体が出来ており、カプセルの取り付けと回収だけをすれば、数値を解析してもらえる。問題はデータの分析である。カプセル調査の利点は、同時に多地点の数値を把握できることにある。但し、数値は1日限りのもので、正確さは測定局程ではない。年間変化や経年変化を見るのには不利である。それは自治体の測定局にゆだねたほうが良い。しかし、近くに測定局が無く、その地点の状況を是非とも把握したい時は、四季に一度、最低一週間連続の調査をすればよい。▼自治体の測定局は機器だけで数千万円もし、特定地点のデータしか得られない。発生源から調査地点に汚染物質がどのように到達しているのか。大気の流動性や、拡散の推定がカプセル調査で可能になる。その為には、気象に関する知識が重要になる。▼とは言ってもカプセル調査は、調査団体に申し込めば小学生でも可能。とにかく実施してみることである。何時どの地点で測定した数値か記録されていれば、その資料自体が将来、何度も利用価値のあるものになる。また、測定してみる事によって、その人の大気汚染に対する理解が必ず進むものである。長くやっていれば、町の大気汚染学者が生まれることであろう。カプセル調査のメリットはそんなところにあるのかもしれない。▼ところで尼崎公害訴訟の地裁判決(‘00.1.31.)で、二酸化窒素の健康被害が認められず、浮遊粒子状物質(SPM)の被害が認められた。その為、カプセル調査からSPMの簡易測定・酸性雨の簡易調査にシフトする傾向がある。その調査を否定はしないが、二酸化窒素は自動車から出る大気汚染の中心であり、今もって重大な健康影響がある大気汚染物質であるのに変わりは無いのである。(コラムX)
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