どうしても気になることがある
――路上生活者のこと――
芦屋市 藤井新造
隣の塀が燃ゆるときは汝の物にもかかわりあり
ホラティウス(ローマの詩人)
昨年のことで旧聞に属するが気になることが一つある。私はこの間(5年間のうち今年の前半を除いて)週に1~2回、尼崎図書館に通っさていた。
そのコースは芦屋川の左岸を通って、国道2号線の業平橋の下をくぐって阪神電車芦屋駅に行く。そこから尼崎に向かうのが通常のコースである。そうすると、昨年の2月業平橋の下をセメントで工事をしている。工事の必要らしきものを感じていなかった私は不思議に思った。何時もここにホームレスの人が居て、ラジオから音楽が流れていた。それが聞こえてこない。
たまたま、その日帰宅して保守系のM議員の市政報告を読むと、ホームレスに関する記事を載せていた。この議員が「一昨年(2002年のこと)ホームレスの自立支援特別法が成立し、地方自治体はホームレスの実態調査と自立支援のための様々な施策が義務づけられた。そこで質問するが現在市内に何人のホームレスがいて、どんな支援を行っているのか」と聞き、当局(芦屋市)は「平成15年2月には芦屋川河川敷や公園などで16人のホームレスを把握していた。その後、巡回パトロールによる説得に応じた自主退去や生活保護の適用による救護施設への入所により、11月末で6人に減少した」と答えている。そこで話をもとに戻すと、業平橋下の工事後はどのようになったか。ホームレスの人が寝られないように敷石の突起部分を上にしてセメントで固めているではないか。ここだけではないのか、そうではあるまいと思い公光橋の下を見に行くと、ここでは明らかに突起部分を高くしてホームレスの人が寝られないようにしている。これではホームレスの人の寝場所を奪い、無理矢理に追い立てたと言う方があたっていまいか。
私とて何も出来ず、具体的な行動を越していないが、彼等の「就労」と「宿泊」については人並みに気にかかることである。それでか当時の神戸新間の記事をメモった用紙がみつかった。その記事では、ホームレスの人数は尼崎市は323人、西宮市は130人。平均年齢56.7才、男性96%。現在の寝場所として公園46%、河川敷32%、道路8%そして路上生活を始めて5年以内の人が72%とある。そのなかで仕事をしている人89%、収入が3万円未満47%、5万円未満が68%。ホームレスに至った経緯は仕事が減ったが24%、家賃が払えなくなった人が14%で、原因として長引く景気の低迷を反映しているとコメントしている。
そして、きちんと就労して働きたいと思っている人が41%いる。兵庫県は一昨年11月行政機関が民間団体などと「県ホームレス自立支援対策連絡協議会」を設置し、計画案は「居住の確保」「就業機会の確保」などをうたい、具体的支援を進めて行くと明言していた。今1年以上も経ち、ホームレスの人々の「居住の確保」と「就業機会の確保」はどれだけ実現したのであろうか、是非知りたい。
と言うのは、今回はからずもアメリカでの状況について次の文章を読んだからである。
「……ロスのあるところでは、バスのベンチが樽型なのだそうです。なぜかというと、ホームレスがそこで寝られないようにしている。公園の水道もそこで水を飲んだり、体をふいたりできないようにするためになくしている。それから道路にスプリンクラーがあり、夜、水を流す。そうするとホームレスがびしょびしょになる。そういうことを本当にやっているのです。おそらく日本もそうした殺伐とした国に近づいていくのだろうと思います(『労働情報』673号木下武男著)」
そういえば、JR立花駅南側の尼崎市バスのベンチの上に、樽型の鉄の環を作っていた。何時頃からであろうか覚えていないが、まさかアメリカのようにホームレスの寝場所を奪うためではなかろうが、真偽を一度たしかめたいと思っている。
話を冒頭に戻せば、最近業平橋の下を通ると又ラジオの音楽が聞こえてくるようになったので、うっとうしい梅雨空の下、私の気持は晴ればれとした。
※ ホラティウスの言葉はアイザツク・ドイッチャーの著作からの孫引きである。
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