自動車損害賠償保険。自動車を運転していて、万が一の事故の際、損害賠償を問われた額を補填してもらうものだ。近年、TVでは派手に「わが社が一番安くてお得!」と宣伝している▼最近、万が一を不幸にも経験してしまった。当方、自転車で相手方は125ccのオートバイ。このところの夏のきつい日差しは、日没直前まで、強い光線を放っている。この逆光に、相手方は幻惑され、当方の認識が遅れてしまった。まことに気の毒ではある。当方も、相手方から見られていないなどとは、夢にも思わなかった▼交差点の事故では、よほどのことがない限り、過失責任割合というのが双方についてくる。一見、公平そうで極めて不合理な制度だ。保険会社は支払いを極限まで切り詰めたい。双方、被害者であり、加害者であるとして、双方に賠償責任を問うことで、保険金を支払わなくて済ませる制度である▼理屈は明快。自転車など、1万円もしないわけである。当方の過失責任が1割として、最大、9000円しか相手方保険が下りない仕組みだ。一方、オートバイの修理費が10万円として、1万円を相手方に支払わなくてはならない。「双方、自前で処理したほうが得ですよ。」とは、保険会社の慇懃無礼。病院に通院しなければならなくても、事故外の健康保険のほうが得だということもあるらしい▼何だかんだと屁理屈をつけ、保険金を支払わないのが保険会社の最大の仕事か。保険金の給付率は、何と数10%というではないか。TVコマーシャルとの隔たりを、結果でインチキだと知る。過去に所有した3台の軽4輪と2台のオートバイだけで、1000万円の保険料を支払ったが、1円の支払いも受けなかったのは幸いだったのか?▼「保険は、いざと言う時」庶民はそう思うが、大勢からお金を集めるマネー・ゲーマーというのが実態だ。90年代頃から、アメリカの保険会社が、急速に日本に侵食し始めた。現在、日本の保険市場を凌駕している▼保険会社も必要だし、投機は社会弊害だが、投資は必要だ。ところが小泉構造改革で、投機バクチが進展した。ここで、とんでもない保険業法の改悪がなされた。登山をすると、遭難はつきものである。救出に民間ヘリを飛ばせば、数100万円が必要だ。そのために山岳会は、共済制度をつくった。障害者団体もPTAもしかり。これらの共済の給付率は80~90%である。これをアメリカの保険会社の投機費用に分捕ろうというのが、改悪保険業法である▼資格を取得しなければ、保険料を扱えなくするなど、団体の会費と一緒に集める、ボランティアの排除など、共済つぶしの法律といえる。悪徳共済を取り締まらなかった、政治屋の怠慢をたてに取り、庶民の助け合いをアメリカバクチに売り渡す、まったくの屁理屈である▼保険業の悪徳な裏側を見た思いである。末端で働く保険業者への冒涜でもある。 (コラムX)
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