デイのお迎え15分前。
階下で爺婆の声がする。
爺 「もう、迎えに来るんだからすぐ帰ってこいよ~」
・・・すぐ、帰って・・・? 出かけるのか?
その時私はお化粧中。顔にファンデーションを塗り、まだ眉毛がない。
婆「わかってるよ!じゃあ、いってくるよ~」
待て!! せめて眉毛書くまで!!!
慌てて眉毛をかいて下に降りたときはもうときすでに遅し。
婆の姿はない。
のらり爺は「すぐ帰ってくるっていってたんだけどな~」
小雨の降る中、傘もささずにどこに行ったのか。
お迎えまであと8分。
とりあえず、デイの車が来るほうとは反対の、よく買い物に行く2軒のお店に向かうルートを探す。
婆の行きそうなところ・・・。
気がつくとTシャツにジャージ、エプロンというオバサン丸出しルック(古!)になぜか化粧、という格好だ。
婆の姿はどこにもない。
お店の人に「こ~んなちっちゃいおばあちゃん、通りませんでした?」聞いてみる。
見かけてないようだ。参った。
ついに迷子になったのか?
デイの車が来る前に自宅にいったん戻る。
やっぱり婆はいない。
爺に、荷物を持たせ車がきたら先に行くように伝えて、近所の、婆が寄りそうなお宅へ聞きに回る。
やっぱりいない。
とその前をデイの車が通り過ぎた。
私も家に戻る。やっぱり直接話そう。(爺、いまいち信用できないし)
ドライバーさんにわけを話そうとした瞬間、
「いや~奥さんが(婆のこと)あっちのほう歩いていたんで拾ってきちゃいましたよ~」
と、ドライバーさん。
なにいいいい!?
なんでも、商店街をフラフラ歩いていたんだそう。
ドライバーさんにかいつまんで事の顛末を話し、よかったよかった。
ホント、運がいい。
こんなことになる前からデイに通っていたのは正解だった。
ドライバーさんも「似てるな~」と思って車を止めて追いかけてくれたらしい。
ドアツードアの送迎車の規定からは外れてしまうのだろうけど、感謝感謝だ。
私や爺が怒っている気配を察したのだろう。
車のドアを開けると、婆はシートにうずくまるようにして小さくなっていた。
私 「そんなんしたって、見えてるよ!全くもう!!心配したよ!!」
正直言って婆が「私はすぐ帰ってくるつもりだったよ」と言ってのけると思っていたので、この反応は意外だった。
うずくまったまま、そうっと私の顔をみて「・・・ごめんね。わかんなくなっちゃったんだよ・・・。」
婆も不安になったんだ。怖かったんだね。
傘もささずに、雨の中、歩き回ったんだもんね。
デイの日でよかった。
パートにでている最中にこんなことが起こりませんように。
そして、ドライバーさん、ありがとう。