凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

もしも前九年の役で蝦夷が大同団結していたら

2005年02月01日 | 歴史「if」
 東北を旅していると、いろんなことが夢想されてしょうがない。三内丸山遺跡を見ても当時の隆盛が如実に現れているようだし、時代が下って亀ヶ岡遺跡を見てもそうだ。もしかしたら縄文帝国とも言える世界が東北にはあったのではないか。正史は常に征服者によって描かれる。大和朝廷は彼らを蝦夷、俘囚と差別的に表現するが、歴史がどこかで逆転していたら立場はまた別のものになったに違いない。
 インカ帝国やマヤ帝国、はたまたアボリジニやアメリカインディアンのように征服された民族には哀愁が漂いどうしても肩入れしたくなってしまう。日本にもそうした血塗られた歴史がある。弥生帝国である大和朝廷は、縄文帝国を支配下に治めようとして侵略を繰り返した。
 よく知られる坂上田村麻呂は征「夷」大将軍として東北地方を攻め、徐々に大和朝廷の勢力を拡大していった。アテルイとの壮絶な戦いの後、東北地方は律令制の下で陸奥、出羽の国として支配下におさまったようにも見える。しかしまだまだ縄文帝国は滅びず、反体制勢力として生きながらえていた。

 前九年の役はそのような状況で起こった。朝廷に従属していたかのように見えた蝦夷であるが、徐々に力を蓄え、地方豪族として国司に反旗を翻し、税を拒否し反乱を起こした。その中心が安倍頼時である。もともとは奥羽は彼らの大地であり、力をつければ征服者に対峙するのは当然のこと。
 対して朝廷は源頼義を征夷大将軍として差し向け、衝突することとなる。せめぎ合いが続き、一時は講和したものの安倍頼時の勢力は衰えないためにさらに戦端を開き、奥羽を勢力下におさめようと朝廷軍は攻めるものの、地元勢力は強く頼義も敗退を余儀なくされるところまできた。

 しかしここで、源頼義は戦時外交によって逃れる。安倍頼時のさらに北に地盤をもつ安倍富忠に工作し、味方に引き入れ内部分裂を図ったのだ。
 児童用の歴史マンガで前九年の役を読んでいた子供の頃の僕は、子供ながら本当に悔しかったことを思い出す。「血迷ったな富忠!!」という安倍頼時のセリフを今も思い出すことが出来る。
 安倍頼時は富忠を説得しようとしてわずか2000人の兵で赴き、待ち伏せされ流れ矢に当たって戦死してしまう。カリスマ頼時がここで討たれたのはあまりにも惜しかった。もしも安倍富忠が頼時と手を結んでいたら。

 しかし、息子の安倍貞任は優れもので、軍を建て直し源頼義をあと一歩のところまで追い詰める。もはやこれまで、と頼義が観念しかけたところへ、頼義の息子である源「八幡太郎」義家が援軍として現われ、朝廷軍は壊滅を免れた。
 このように、安倍一族は朝廷軍を圧倒している。このまま進めば安倍一族の勝利で、奥州共和国が誕生していた可能性は高いのだが、またも源頼義は外交工作に出る。出羽の国の豪族である清原光頼を味方に引き入れるのだ。
 また子供歴史マンガの安倍貞任のセリフを思い出す。「清原め! 蝦夷の者でありながら内民の味方になるとは!!」安倍貞任は打ち破られ、前九年の役は終わりを告げる。

 もしも安倍頼時や安倍富忠、清原光頼が大同団結していたら果たしてどうなっていただろうか。源頼義、義家軍はおそらく奥州を平定できまい。この前九年と次の後三年の役で源頼義の一族は力をつけたわけであるし、この清和源氏の家系が後の頼朝、義経に繋がっていくことを考えると、パワーバランスが狂っていくことが充分に予想される。果たして清和源氏がそこまで力をつけられたかどうか。
 そして、強固な奥州王国が実現していたことが夢想される。安倍氏はカリスマ的要素がある。このあと後三年の役があり、そこでの勝利者は清原清衡である。清衡は、母親が子連れで清原武貞に嫁したため清原氏になったが、実は安倍貞任に味方し前九年の役で敗退した藤原経清の遺子であり、その母親は安倍頼時の娘、貞任の妹だ。安倍の血筋は脈々と受け継がれたのである。
 清衡は旧姓の藤原を名乗り、ここに奥州藤原三代の栄華が始まる。
 清衡は外交で安倍氏が滅んだことを重々承知しており、朝廷工作を充実させた。しかし、四代目の泰衡に至って源頼朝に滅ぼされてしまう。あのとき蝦夷が大同団結して清和源氏を打ち破っていたなら、結末は違ったものになっただろう。日本の歴史に占める東北の位置づけももう少し変わっていた可能性がある。

 岩手や宮城を旅すると、この地に君臨していたかもしれない安倍一族のことを思い、いつも違った歴史のことに思いを馳せてしまうのだ。奥羽の覇者への思いは尽きない。
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5 コメント

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はじめまして (Mami)
2005-02-02 13:04:01
はじめまして。Mamiと申します。



前九年の役だなんて、歴史の時間が懐かしいわぁ。 そう、私は今でも歴史好きなんですよ。



それに、カテゴリーがいっぱいというのも私と一緒だーーと思い、おじゃましてしまいました。



また寄らせていただきますね。
返信する
いらっしゃいませ♪ (凛太郎)
2005-02-02 22:17:24
歴史は僕もさほど専門的に知っているわけではないのですがただ好きなだけでして(汗)。少しづついろんな話を書いていけたらなぁと思っています。

書いているカテゴリーはバラバラなんですが、また是非おいで下さい。僕もMamiさんのところへもお邪魔させていただきますねー♪
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Unknown (jasmintea)
2005-02-06 11:51:16
先日はお寄り頂いてありがとうございました。

この時代はNHKの大河ドラマ「炎立つ」で興味を持って本を読み漁りました。

渡辺謙さんの藤原経清、ど迫力でステキでした



ちなみに私も格闘技大好きなんです。最近はK1やプライドばかり見ていますがずっと昔は毎週「週刊ゴング」を買っていました。

鶴龍と長州・谷津の抗争やブロディ、ハンセンとか大好きでした☆



また遊びに参りますね♪
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歴史もプロレスも楽しい♪ (凛太郎)
2005-02-06 23:54:43
わざわざコメントいただき恐縮です。(^-^)



「炎立つ」の頃は忙しくてTVを見ていなかったので残念でしたが、興味深い時代ですよねぇ。正史に語られないことが多いと、つい興味をもってしまうものです(笑)。



ゴングを毎週買っておられたとは素晴らしい☆

長州がアバラを痛めていた時の谷津の孤軍奮闘とベルト奪取は結構興奮したものですねぇ。鶴田もブロディももう居ないとは信じられませんが、ぼちぼちあの頃の思い出もプロレス技に絡めて書いていこうと思います。^^



またこちらもお邪魔させていただきます♪
返信する
横浜カモメ (JAXAマン)
2016-09-20 23:45:25
ガミラス国歌「永遠に讃(たた)えよ 我が光」
作詞:出渕裕(いづぶちゆたか) 
作曲・編曲:宮川彬良(みやがわあきら)

1.
青き花咲(はなさ)く大地
気高(けだか)きわが故郷よ
響(ひび)け 歓喜(かんき)の歌
神の加護(かご)は われらとともにあり続けん
ガーレ=ガミロン*1
讃(たた)えよ 祖国の勝利を

2.
気高(けだか)きは勝利の意志
示せ 遍(あまね)く宇宙に
理想 貫(つらぬ)く愛
神の加護(かご)は われらとともにあり続けん
ガーレ=フェゼロン*2
誇りある鋼(はがね)の国家

*1ガーレ=ガミロン:ガミラス萬歳(ばんざい) 「ガミラス」が「ガミロン」となっているのは、格変化(かくへんか)によるものだろう。英語は、格変化が基本的にないが、人称代名詞だと、I my meなどと、主格、所有格、目的格で変化するようなもの。
*2ガーレ=フェゼロン:総統万歳(そうとうばんざい) 「フェゼロン」は、ドイツ語の「総統」であるFührer(フューラー)に由来(ゆらい)するようだ。
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