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同性愛が当たり前の未来

2015-02-15 14:33:14 | 気になる記事
同性カップルに結婚並み証明書 渋谷区、来月に条例案

東京都渋谷区は、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行する条例案を三月区議会に提出することを決めた。区によると、自治体が同性同士をパートナーとして証明する制度は全国で例がない。性的少数者(LGBT)の権利を保障する動きは世界的に広がっており、家族制度をめぐる論議が高まりそうだ。(東京新聞 TOKYO Web 2月12日)


 同性愛の社会的認知ですか。世界的には動きが遅い方なのかも知れませんが、保守的な島国である日本ではかなり驚くニュースですね。性的嗜好は個人の問題なので、意見は特にありませんが、人類社会の未来予想の一つとして、同性愛が一般化するというのは結構ありうることだと思います。今回はその辺を、またまたSF作品でひもといてみたいと思います。

 ジョー・ホールドマンの『終りなき戦い』は、戦争を生き抜く兵士を描いたSF作品として、『宇宙の戦士』と双璧の座にある名作ですが、同性愛者が圧倒的多数派になっていく未来が描かれています(物語のメインテーマではありません)。
 本作では、徴兵された主人公の部隊が「縮潰星(コラプサー)ジャンプ」という跳躍航法で遠く離れた星系へ移動し、正体不明の敵と闘うのですが、このコラプサー・ジャンプ、直前に光速の9割を超えるスピードを出さねばなりません。その加速に何か月も要するため、ウラシマ効果により1回のジャンプで故郷や植民星の主観時間で数十~百年単位の時間が過ぎてしまう。主人公が生き残って帰還すると、弟が年上になってて、文字通り浦島太郎状態。これでよく戦争状態が保てるものですが、戦闘を重ねるうちに故郷の親類や友人はもちろん、別の部隊に移っていった戦友も死んでいき、せっかく生還しても、その度にどんどん孤独になっていきます。
 一方この間に、人類社会は産児制限のため同性愛を奨励するようになり、文化として定着します。異性愛が当たり前だった20世紀に生まれた主人公が生還すると、「あの人異性愛者なんだって、キモッ!」みたいな状況になり、昇進して部下を持つとみんな同性愛者。さらにもうひとつ戦闘を終えて何百年か過ぎると、クローニング技術と人工子宮の登場によって、女性が出産することはほとんどなくなり、主人公のようなヘテロの人間はほぼゼロになります。

 これはありえない未来でしょうか。その前に過去の歴史を振り返ると、少数とはいえ、同性愛の嗜好を持つ者は常に存在したようです。特権を持つ非生産階級に多いのか、古代ローマや中国の皇帝、日本でも織田信長と森蘭丸等々。もっともこれらは、通常のセックスに飽きてしまい、タブーを破る快楽を求めた結果なんじゃないかと思います。デカダンの果てにタブーに走るというのは、人間の性なのかも知れません。 
 受け入れる社会の側としても、アメリカでは同性同士の結婚を認める州もあり、日本でも渋谷区のような例が出てくるなど、現代は同性愛を認める社会は増えてきているようで、徐々に特別なことじゃなくなってきているみたいです。
 では、社会統治の面ではどうか? 中国は人口抑制のため、一人っ子政策という産児制限を設けました。このような政策の極端な発展形として、同性愛の奨励というのも選択肢としてありうるのではないか。同性愛に対し寛容になりつつある社会の傾向もかんがみて、『終りなき戦い』のような社会は、ありえない未来ではないと思うわけです。

 今のところ、先進国は少子高齢化という未知の袋小路に入ろうとしているので、そうした社会では同性愛者はマイノリティのままではないかと思います。しかし、全世界的には人口爆発の方がはるかに大きな問題であり、マルサスの人口論をひもとくまでもなく、これは限られた資源の配分や領土の確保など、戦争の原因にもなる以上、人類最大の問題とさえ言っていい。人口問題に比べりゃ温暖化なんか些事ですよ。そういう人口過剰の国々で、同性愛を是とする文化が浸透したり、為政者がうまく、あるいはひどく強制的にコントロールすれば、2~3世代経ると同性愛者だらけになっている可能性は充分あると思います。そうすれば、有史以来初めて世界人口が減少に転じる可能性もある。

 ただし遺伝的に刷り込まれた異性への肉欲というのは、同性じゃ代替にはならんのではないかとも思います。こればっかりは、理屈はともかく、さすがに感覚的には理解できません。しかし、未来の世界なら、遺伝的に選択することさえ可能になるかも知れません。言っときますが、私がそれを良いことだと思ってるわけではありませんので、念のため。ともかくも、歴史の多様性というのは、想像力を超えることがしばしばあります。同性愛が受容されつつある社会がどこへ向かうのか、多様な可能性があるのではないでしょうか。

 なお、『終りなき戦い』で同性愛社会が描かれるのは、主人公を孤独にしていくための物語上の仕掛けなのですけどね。生き延びる度に、知っている人が世を去っていき、二度と会うことない。主人公はどんどんひとりぼっていきます。しかし、最後の最後に落涙必至の結末が待っている。SF史上に残る名ラストは、読んで確かめてみてください。
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