釜石の日々

国会へ提出された事故調査報告書

庭のモミジの木には今朝もメジロたちがやって来た。チィー、チィーとか細く可愛い声で鳴いていた。出勤して駐車場から歩いて薬師公園の前を通るとウグイスの声が今朝も迎えてくれた。ほぼ一日中そこで鳴いている。7月になってもメジロやウグイスが身近にいるのはとても奇妙な感覚になる。通常はこれらの鳥たちは春の鳥たちだからだ。花が長く咲く理由も同じく、いい気温が長く続くせいなのだろう。今日は日射しが強くないので、屋外を歩いても気持ちがいい。釜石の夏はちょうど高原地帯の夏のようだ。風に吹かれていると何年か前に行った上高地を思い出す。釜石市街地を取り巻く小高い山々は緑に溢れ、市街地を清らかに澄んだ甲子川が流れている。一見するとこれらの自然は何も変わっていないように見えるが、そこには目に見えない汚染が広がっている。昨年の原発事故は東北の豊かな自然を変えてしまった。汚染は何世代にも渡って残って行く。東北の自然がすばらしいだけに、事故による汚染には怒りが湧いて来る。事故の経緯を知れば知るほどその怒りも増して来る。と同時に、これまであまりに原発に無関心であったことへの自らの責任にも気付かされる。昨日国会に設けられた「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」は衆参両議院に事故調査報告書を提出した。今回の事故についての調査委員会は4つある。他に東京電力による内部的な調査委員会と内閣府に設置された事故調査・検証委員会、民間の福島原発事故独立検証委員会がある。東京電力の内部の調査報告はすでに先月公表されている。予想通り、すべての面で企業としての責任感に欠如する内容であった。昨日公表した国会の調査委員会は元日本学術会議会長である東京大学医学部黒川清名誉教授を会長として、地震研究者の石橋克彦神戸大学名誉教授や元放射線医学総合研究所主任研究官であった崎山比早子氏、ノーベル化学賞を受賞された田中耕一東京大学医科学研究所客員教授ら9人の委員で構成されている。報告書は委員会のHPからダウンロードできるが、一時サーバーがダウンしたようだ。報告は「今回の事故は、これまで何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず、歴代の規制当局と東電経営陣が、それぞれ意図的な先送り、不作為、あるいは自己の組織に都合の良い判断を行うことで、安全対策が取られないまま3月11日を迎えたことで発生した。」と断じ、安全についての監視・監督機能は崩壊していたとしている。事故の直接的原因は、地震と津波という自然現象だが、1号機では、地震により、小規模のLOCA(小さな配管破断などの冷却材喪失事故)が起きた可能性を否定できないと述べている。政府が100億円以上かけて構築したSPEEDIについては「初動の避難指示に活用することは困難」として、その有用性を否定しており、むしろ、モニタリングの強化を提言している。黒川委員長は記者会見で「事故はまだ終わっていない。この提言の実現に向け動き出すことが事故で失った世界や国民からの信頼を取り戻すことになる」と述べている。しかし、この報告書で指摘されている監視・監督機能が崩壊したまま何も手を打たれず従来通り、すでに大飯原発は再稼働されてしまった。報告書は住民への医療提供や帰宅、移転、補償など住民被害への十分な対応の必要性を提言している。米紙ニューヨーク・タイムズや英紙ザ・ガーディアンなど海外のメディアも大きく報じている。
甲子川の清流には鮎や岩魚が泳ぐ
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