ええと、突然ですが、昨日、「桐野利秋と結婚したい」とおっしゃるほどの大ファンの先輩から電話で、ヤフオクに春山育次郎著の少年読本の桐野の伝記が出ていることを教わりまして、さっそく入札したのですが、値段がつりあがって落とし損ねました。
まあ、仕方がないですね。長年、古書店でさがしていたのですが、出たことのなかった本ですし。コピーはもっているわけですから、まあいいか、と。
それで………、というわけでもないのですが、以下、書きかけで放っていたこの記事を、完成させることにしました。
ちょっとよそで、半次郎~桐野利秋 風伝~(オフィシャルサイト)の企画が進行中であることを、教えていただきました。
最近、頭の中が、オスカー・ワイルドだとかラファエル前派だとか、もうすっかり中高生のころに帰った感じで、そっち方面の英語サイトばかりをただよっていまして、存じませんでしたわ、まったく。
ところで、ご紹介が遅くなりましたが、耳の家のみみこさまが、愛のバトンを受けてくださって、アーネスト・サトウへの熱い愛を、語ってくださっています。
アーネスト・サトウは………、萩原延壽氏の名著のおかげなんですが、読めば読むほど、ほんとうに魅力的な人物でして、私も、バーティとくらべてどちらに愛を感じているかといえば、サトウなんですが、………バーティは、一昔前の少女漫画の登場人物かよ、というくらいに、生まれ育ち、容姿、才能、腕力となにもかもそろいすぎな上に、莫大な財産は転がり込むは、皇太子のお気に入りになって地位も得る、結婚生活も順風で、陰がなさすぎ、とでもいうんでしょうか、でも本当はちょっと変な人みたいな、という疑いがなければ、興味の持ちようもないほどでして………、いや、負けますわ。ありがとうございました、みみこさま。
で、桐野利秋(中村半次郎)についても、Nezuさまがコメントくださいましたように、「結婚したい!」とおっしゃる大先輩がおられまして、負けますです、はい。
とはいえ、こうも長く思い続けてきますと、です。私にも強固に、自分のイメージが出来上がっておりまして、映画化には、複雑な気分です。
ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)、「指輪物語」の映画化話を知ったときには、飛び上がって喜んだんですけどねえ。物語世界がどう描かれるか、というのと、実在した人物がどう描かれるか、というのでは、なんかこう、ちょっと、私の中での受け止め方が、ちがうみたいです。実在した人物の方が、私の思い入れが深いんでしょう、おそらくは。
しかし、今度の映画化の話が、もしかすると、期待してもいいかな、と思えるのは、監督が、「長州ファイブ」の五十嵐匠氏であることです。
この映画、封切りよりはずいぶん遅れて、うちの地方でも奇跡的に小劇場にかかりまして、喜んで見に行き、そのときにも、そしてDVDを買ったときにも、ブログに感想を書こうかな、と思ったんですが、なぜ後半のファンタジックな、つまりはフィクションである恋物語に心惹かれるのか、その理由を、自分で分析しかねていたんです。
そりゃあもちろん、松田龍平演じる山尾庸三がとても魅力的だった、というのは、真っ先にあるのですが、それだけでは説明しきれないものが、確かに存在している感じを受けました。
というのも、この映画は、題名そのままに「長州ファイブ」、つまり幕末に英国密航留学をしていた長州の5人、山尾庸三、野村弥吉、志道聞多(井上馨)、伊藤俊輔(博文)、遠藤謹助を描いている、というふれこみで、実際、前半は確かにそうなのですが、後半はがらりと、山尾庸三一人の恋物語となっていまして、まったくのフィクションであるその部分がなければ、私がDVDを買うことはなかった、と断言できるのです。
なにしろ、ちょうど薩摩留学生のことを調べていたときでしたし、つっこみどころは豊富で、史実とくらべると、思わず、おい!と、いいたくなる場面も多々あったのです。
山尾庸三が、後年、盲聾唖者の教育に尽力した、という事実にしても、俗説では、「伊藤博文とともに国学者の塙忠宝を暗殺したことを後悔して」といわれます。
塙忠宝は「続群書類従」の編者でして、最初にこれを知ったときには、!!!でした。なにしろ当時、音楽や香に関する古書を編纂した「続群書類従」にはお世話になっていましたから、そんなありがたい人物を、「廃帝を画策している」とかのデマに踊らされて暗殺するとは、どういうおっちょこちょいの大馬鹿な二人なんだろう!!! と思ったような次第なんです。
日本の文化をですねえ、大切に守ろうとしている人物を攘夷気分でまちがえて暗殺しといて、あっさり「さあ、イギリスへ!」って、なんとも小憎らしかったんですよねえ。
この映画が、です。そういったことをいっさい出さないで、山尾の「聾唖のスコットランド女性との恋物語」というフィクションに語り代えたことは、通常ならば私は、あざとい感じを受けるはずなんですが、それが………、受けなかったんです。どころか、この恋物語こそに、魅せられました。
それがなぜなのか、自分でもよくわからなかったのですが、今回、大ファンの先輩とともに、映画「半次郎」への期待を語っているうちに、気づかされました。
山尾庸三は、周防出身でした。
以前に書いたような気もするんですが、長州における周防出身者は差別されていまして、赤根武人の不運にも、それがあったのだと言われています。
そして周防には、水軍関係者が多いんです。毛利氏に仕えた村上水軍本家が、伊予から周防大島に移住して、長州藩お船手組をとりしきった歴史があり、瀬戸内海の水運にかかわっていた人々が、多く居住していた地域でした。
映画で、山尾が恋をする聾唖のスコットランド女性は、シェトランド諸島の出身で、シェトランド諸島といえば古のバイキングの地であり、近代化から取り残されたグレート・ブリテンの僻地です。
維新以降、日本が近代化して、汽船が登場し、鉄道網が発達するにつれ、従来からの瀬戸内海の回船はしだいに衰えていき、周防でも新しい波に乗れなかった多数の人々が落魄れていきます。
映画「長州ファイブ」は、前半で、西洋近代への日本人の恋を単純に描きながら、なんといいますか、こう………、近代化を受け入れる中で、見捨てられていく人々への哀惜を込めた断念、みたいなものが、男女のストイックな恋という形で、後半をふくらませたのではないか、と、私には感じられたのです。
だったのだとすれば、五十嵐匠が描く桐野利秋には、もしかすると………、期待できるのではないかと思うのです。
オフィシャルサイトのトップに、永山弥一郎の名が出てくるのも、希望の種です。
明治11年、西南戦争の直後に出ました短い桐野の伝記には、永山弥一郎、伊集院金二郎、肝付十郎の三名のみが、桐野のもっとも親しかった友人としてあげられていまして、このうち、伊集院と肝付は戊辰戦争で戦死していますから、西南戦争の時点で桐野の親友といえば、永山弥一郎のみだったのです。
そして永山は………、まさに桐野への友情に殉じてくれたのだと、私は思っています。
「降り積もるはあの日も雪………」
この歌で、あの日の桐野をしのびつつ、わくわくと次第に期待をふくらませているこのころです。
たしか、GO!GO!7188は、鹿児島出身のバンドと聞いたような。
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まあ、仕方がないですね。長年、古書店でさがしていたのですが、出たことのなかった本ですし。コピーはもっているわけですから、まあいいか、と。
それで………、というわけでもないのですが、以下、書きかけで放っていたこの記事を、完成させることにしました。
ちょっとよそで、半次郎~桐野利秋 風伝~(オフィシャルサイト)の企画が進行中であることを、教えていただきました。
最近、頭の中が、オスカー・ワイルドだとかラファエル前派だとか、もうすっかり中高生のころに帰った感じで、そっち方面の英語サイトばかりをただよっていまして、存じませんでしたわ、まったく。
ところで、ご紹介が遅くなりましたが、耳の家のみみこさまが、愛のバトンを受けてくださって、アーネスト・サトウへの熱い愛を、語ってくださっています。
アーネスト・サトウは………、萩原延壽氏の名著のおかげなんですが、読めば読むほど、ほんとうに魅力的な人物でして、私も、バーティとくらべてどちらに愛を感じているかといえば、サトウなんですが、………バーティは、一昔前の少女漫画の登場人物かよ、というくらいに、生まれ育ち、容姿、才能、腕力となにもかもそろいすぎな上に、莫大な財産は転がり込むは、皇太子のお気に入りになって地位も得る、結婚生活も順風で、陰がなさすぎ、とでもいうんでしょうか、でも本当はちょっと変な人みたいな、という疑いがなければ、興味の持ちようもないほどでして………、いや、負けますわ。ありがとうございました、みみこさま。
で、桐野利秋(中村半次郎)についても、Nezuさまがコメントくださいましたように、「結婚したい!」とおっしゃる大先輩がおられまして、負けますです、はい。
とはいえ、こうも長く思い続けてきますと、です。私にも強固に、自分のイメージが出来上がっておりまして、映画化には、複雑な気分です。
ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)、「指輪物語」の映画化話を知ったときには、飛び上がって喜んだんですけどねえ。物語世界がどう描かれるか、というのと、実在した人物がどう描かれるか、というのでは、なんかこう、ちょっと、私の中での受け止め方が、ちがうみたいです。実在した人物の方が、私の思い入れが深いんでしょう、おそらくは。
しかし、今度の映画化の話が、もしかすると、期待してもいいかな、と思えるのは、監督が、「長州ファイブ」の五十嵐匠氏であることです。
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この映画、封切りよりはずいぶん遅れて、うちの地方でも奇跡的に小劇場にかかりまして、喜んで見に行き、そのときにも、そしてDVDを買ったときにも、ブログに感想を書こうかな、と思ったんですが、なぜ後半のファンタジックな、つまりはフィクションである恋物語に心惹かれるのか、その理由を、自分で分析しかねていたんです。
そりゃあもちろん、松田龍平演じる山尾庸三がとても魅力的だった、というのは、真っ先にあるのですが、それだけでは説明しきれないものが、確かに存在している感じを受けました。
というのも、この映画は、題名そのままに「長州ファイブ」、つまり幕末に英国密航留学をしていた長州の5人、山尾庸三、野村弥吉、志道聞多(井上馨)、伊藤俊輔(博文)、遠藤謹助を描いている、というふれこみで、実際、前半は確かにそうなのですが、後半はがらりと、山尾庸三一人の恋物語となっていまして、まったくのフィクションであるその部分がなければ、私がDVDを買うことはなかった、と断言できるのです。
なにしろ、ちょうど薩摩留学生のことを調べていたときでしたし、つっこみどころは豊富で、史実とくらべると、思わず、おい!と、いいたくなる場面も多々あったのです。
山尾庸三が、後年、盲聾唖者の教育に尽力した、という事実にしても、俗説では、「伊藤博文とともに国学者の塙忠宝を暗殺したことを後悔して」といわれます。
塙忠宝は「続群書類従」の編者でして、最初にこれを知ったときには、!!!でした。なにしろ当時、音楽や香に関する古書を編纂した「続群書類従」にはお世話になっていましたから、そんなありがたい人物を、「廃帝を画策している」とかのデマに踊らされて暗殺するとは、どういうおっちょこちょいの大馬鹿な二人なんだろう!!! と思ったような次第なんです。
日本の文化をですねえ、大切に守ろうとしている人物を攘夷気分でまちがえて暗殺しといて、あっさり「さあ、イギリスへ!」って、なんとも小憎らしかったんですよねえ。
この映画が、です。そういったことをいっさい出さないで、山尾の「聾唖のスコットランド女性との恋物語」というフィクションに語り代えたことは、通常ならば私は、あざとい感じを受けるはずなんですが、それが………、受けなかったんです。どころか、この恋物語こそに、魅せられました。
それがなぜなのか、自分でもよくわからなかったのですが、今回、大ファンの先輩とともに、映画「半次郎」への期待を語っているうちに、気づかされました。
山尾庸三は、周防出身でした。
以前に書いたような気もするんですが、長州における周防出身者は差別されていまして、赤根武人の不運にも、それがあったのだと言われています。
そして周防には、水軍関係者が多いんです。毛利氏に仕えた村上水軍本家が、伊予から周防大島に移住して、長州藩お船手組をとりしきった歴史があり、瀬戸内海の水運にかかわっていた人々が、多く居住していた地域でした。
映画で、山尾が恋をする聾唖のスコットランド女性は、シェトランド諸島の出身で、シェトランド諸島といえば古のバイキングの地であり、近代化から取り残されたグレート・ブリテンの僻地です。
維新以降、日本が近代化して、汽船が登場し、鉄道網が発達するにつれ、従来からの瀬戸内海の回船はしだいに衰えていき、周防でも新しい波に乗れなかった多数の人々が落魄れていきます。
映画「長州ファイブ」は、前半で、西洋近代への日本人の恋を単純に描きながら、なんといいますか、こう………、近代化を受け入れる中で、見捨てられていく人々への哀惜を込めた断念、みたいなものが、男女のストイックな恋という形で、後半をふくらませたのではないか、と、私には感じられたのです。
だったのだとすれば、五十嵐匠が描く桐野利秋には、もしかすると………、期待できるのではないかと思うのです。
オフィシャルサイトのトップに、永山弥一郎の名が出てくるのも、希望の種です。
明治11年、西南戦争の直後に出ました短い桐野の伝記には、永山弥一郎、伊集院金二郎、肝付十郎の三名のみが、桐野のもっとも親しかった友人としてあげられていまして、このうち、伊集院と肝付は戊辰戦争で戦死していますから、西南戦争の時点で桐野の親友といえば、永山弥一郎のみだったのです。
そして永山は………、まさに桐野への友情に殉じてくれたのだと、私は思っています。
「降り積もるはあの日も雪………」
この歌で、あの日の桐野をしのびつつ、わくわくと次第に期待をふくらませているこのころです。
たしか、GO!GO!7188は、鹿児島出身のバンドと聞いたような。
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≫映画化
素敵な半次郎様だと良いですね。
実際より年上の方が演じるので 落ち着いた半次郎様かも。
落札は、おそらく無理だったと思います。
あの本は、けっこう欲しがっている人がいるはずでして。
春山育次郎は、かなりこまめに取材して、そこそこまともな伝記を書いた人なのですが、少年読本の一冊であるがために、図書館にもない場合が多かったりするんです。
お友達の大先輩様と、映画完成のあかつきには、鹿児島まで先行ロードショーを見に行きましょう! なぞと、おそらくまた、あきれられるだろうなあ、というほどの盛り上がりを見せておりますです(笑)
郎女さまの「期待できるかも」のお言葉に、ますます「幸せ度」がアップしてきています。
10月のキャスト発表に、すでに首がながくなっています。
でも 殺陣は上手いので 半次郎様に期待できるかも。。。
≪鹿児島まで先行ロードショー≫
腐れ縁の大先輩様に早速お誘いを受けました(恐)
実現できると良いですね。
もうぜひ、先行ロードショーには、ごいっしょしてくださいませ! 宿泊は城山観光ホテルでいかかでしょう(笑)
遅ればせながら、バトンありがとうございました。
(よほどに…サトウでバトン返しをしたい衝動にかられましたが…)
バーティー、ほんとに「一昔前の少女漫画の登場人物かよ」ですね、、、
ゴージャスにもダーティーにもうかないニュートラルなとこが、なんとも魅力的。
「遠い崖」では意外と萩原さんのツッコミが少なくて(冷たくて?)
少し遠目な感じが、少し欲求不満だったりミステリアスだったりでしたが、、、
こちらで「リーズデイル卿とジャパニズム」で読めて、嬉しいです。
ご挨拶にもうかがわず、失礼しておりました。
荻原さんはきっと……、貧乏で苦労した方がお好きなんです。(笑) サトウとウィリスとの仲については、「こ、これって!」と慌てたくなるくらい、熱く描いておいでですよねえ。しかし、たしかに私も、バーティとでは、ついパークス公使と三つどもえで、
サトウ「ぼ、ぼくは日本語通訳なのに、あのくそおやじは、フランス語の通訳をさせるんです。フランス語もしゃべれないやつを、なんで本国は公使なんかにするんですか!」
バーティ「いやほんと、大英帝国の公使として恥ずかしいかぎりだよなあ。……大丈夫だよ、アーネスト。例えあいつににらまれても、君にはぼくがついている」
なんぞという漫画みたいな場面しか、思い浮かびませんのです。
年をとって、二人でバッツフォードの和風庭園を歩きながら、若き日に思いをはせる姿の方が、しっとりといい感じかも、と。
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そうだ。東郷隆の「香水」という短編は御存じですか?晩年(と、いってもたいした歳ではないわけですが)の桐野利秋を凛々しく描いているのです。