私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Johann Sebastian Bach: Brandenburg Concertos
L’OISEAU-LYRE 414 187 - 2
演奏:The Academy of Ancient Music, Christopher Hogwood

バッハのブランデンブルク協奏曲の名は、バッハが1721年3月24日付けの献辞を付けて、ブランデンブルク辺境伯、クリスティアン・ルートヴィヒに贈った自筆譜に由来している。この楽譜の存在により、永らくこの中に含まれる6曲の協奏曲が、伯爵の宮廷で演奏される事を想定して、新たに作曲されたものと考えられてきたが、1950年頃から進んだ研究によって、これらはむしろケーテンの宮廷の楽団の編成に合っていること、また別の形態を示す写譜が多く存在することが分かったことなどから、バッハが献呈譜作製に当たり、既存の作品の中から「種々の楽器を伴う」(献呈譜の標題)6曲を選んだものであると考えられるようになった。
 クリストファー・ホグウッドという人は、以前から一捻りした選曲をする人であるが、この2枚組のCDでも、献呈譜に含まれる「最終形」ではなく、献呈譜とは別の原典から作製された写譜の異稿をもとにしている。第2番、第3番、第4番それに第6番についてはその相違は微々たるもので、聞いて直ちに分かるようなものではない。それに対して、第1番には、 クリスティアン・フリートリヒ・ペンツェル(1737 ? 1801)の写譜によって伝えられているものがあって、これは第3楽章が無く、メヌエットもトリオが2曲しかない。さらに献呈譜の版にはあるヴィオリーノ・ピッコロの独奏パートが無く、メヌエットの二つ目のトリオもかなり異なっている。その作曲された時期も、1713年頃まで遡ることが出来ると考える研究者もいる。この版は、重要な異稿として、新バッハ全集にも付録として収められている。第5番も、いくつかの異稿が知られている。その一つがバッハの義理の息子となった弟子のヨハン・クリストフ・アルトニコル(1719 - 1759)によるパート譜の写しに残された形で、献呈譜や、別に存在するバッハ自筆のパート譜よりも古い形を示しているものとして、バッハ全集では初版発行から19年後の1975年に、追補として出版された。ホグウッドの第5番は、この古い異稿にもとづいている。この異稿の最も大きな違いは、第1楽章の、後の古典派の協奏曲のカデンツァを先取りしている言われるチェンバロ独奏が、献呈譜版の95小節に対し18小節しかないところである。
 編成は、1パート1人の奏者という最小規模になっており、たとえば一番大きな編成の第1番では、弦楽器奏者5人、オーボエ奏者3人、ホルン奏者2人とチェンバロ1人の11人で、当時の音のバランスを知る上で、非常に興味深い。最も編成が小さいのは第6番で、ヴィオラ・ダ・ブラッチョ2,ヴィオラ・ダ・ガムバ2、チェロ、ヴィオローネ(ヴィオール属の最低音楽器)それにチェンバロという7人である。以前にテレビで、カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニーの演奏するバッハのヴァイオリン協奏曲の演奏を聞いたことがあるが、それとは対極をなす編成である。そしてホグウッドの演奏がオリジナルに近いことは疑う余地がない。

発売元:DECCA

現在ウェブのカタログには掲載されていない。
アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックのサイトも参照。

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CD選択眼に感服! (mb000467)
2007-03-21 13:47:09
こんにちは、mb000467です。CD選びの眼に感心しきりです。楽器にもご興味をお持ちのご様子。楽しく各記事を拝見しています。学生時代「ブラ6はいいよね~」なんて話していると、「ブラ6なんてないだろう」の声。よくよく確認すると当方は「ブランデン」、相手は「ブラームス」のことを言っている、なんてことがありました。確かに「ブラ(ームス)6(番交響曲)」はないなぁ。
事後承諾で恐縮ですが、「私的CD評」さんを当方のリンクに加えました。以後、よろしくお願いいたします。
 
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