ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          No5 Ward・・・・・10

2015-01-13 | 4章 デリー中央第一刑務所No5Ward

   1月21日(土曜日)
 アフリカンのデブが又ガタ々言って来た。頭にきて房を替わった。良かったのか如何かまだ分からないが。アミーゴが誘わなければ一緒にはならなかった。とにかく煩い奴で、ぼくに対してだけ文句を言ってくるからたまったもんじゃない。今日は土曜日でクラスが休みなので房の壁にペイントをする事になった。今回はCバラック全ての房のペイント作業なのでインド人が道具を乗せたリヤカーを引っ張ってきた。内房にある毛布や私物を外房に引き摺り出し全員でペンキ塗りだ。バケツの水に溶いた白いペンキを壁一面に塗っていく。3m程もある高い所は棒の先に取り付けたローラーで塗っていた。当然ぼくは何も出来ないので下の方を刷毛で塗っていた。昼前に何とか終ったのだがそこで又デブが文句を言って来た。ビリを吸いながらペンキを塗っていたぼくはその吸殻を外房の前に捨てていた。刑務官が煩いのにそんな所に捨てるなと言って来た。朝は内トイレが見えないようにロープを張って布を掛けていたがそのロープが切れていた。その件についてもぼくに文句を言った。
 原因は分かっている。毎食事の時、アミーゴが食事の配分をしているのだが不公平なやり方をしていた。皆に分けていてもデブだけ多く入れたり、わざと少し残してデブに回したりしていた。昨夜、アミーゴに公平に分けろとぼくは文句を言ってやった。各自、前に食器プレートを置き先ずライスから配り始めるのだが全プレートに入れ終わって少ない所があれば不味い。他人のプレートから移し替えられるのは誰しも嫌だ。だから最初はちょっと少なく入れて残りのライスで調整する。アミーゴはライスをプレートに入れながら
「More」
と何度も聞く。相手が黙っていると規定量まで入れる。ぼくにはちょっと多いので途中で
「トラ、トラ」
「バス、バス、Enough」でアミーゴがライスを入れるのを止める。昨夜はそんな事があって、ぼくの量は少ないが残りを4名で分けてしまった。いつも多く食べていたデブはお腹が空いて機嫌が悪いのだろうぼくに当り散らした。このメンバーでは面会もなく外からの差し入れもない。刑務所から配給される食事だけでは足りないのだ。アフリカンもポーランド人のダニエルも大使館の援助は全くない。アミーゴにはそれはあるが大切なお金で食べ物は買わない、スタッフとビリで精一杯だ。アミーゴはぼくを同房にしてスタッフやビリのおこぼれにあずかろうと思っていた。デブは自分勝手にやろうとしていたが皆の不満はあった筈だ。全員の前で食事は公平に分けろと言われれば反論は出来ない。奴は明らかにぼくを追い出したいという態度で文句を言っている。我慢する事はないまだ房を替わるのに何の許可も必要としないのだから。8房のランジャンにチャッキするからと言ったら
「ようこそ、我が8房へ」
と歓迎してくれた。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ジャンキーの旅      ... | トップ | ジャンキーの旅      ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

4章 デリー中央第一刑務所No5Ward」カテゴリの最新記事