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マダムnihaoのフレッシュ搾りたてブログ。お気軽にお立ち寄りください。

町家の雛遊び

2009-04-13 09:30:00 | マダムH
 城下町の見知らぬ横町はワンダーゾーン。
切り取られた時間と秘めやかに淀んだ空気のなか
置き去りにされた記憶と郷愁が棲みつくと人は言う........
いまだ古い町並みを残す盛岡市鉈屋(なたや)町
旧暦の雛祭りのイベントがあるというので出かけてきた。


     
 

 通りを歩いてすぐ目に入った景色が、平成の水百選に選ばれた湧水『大慈清水』
四つの井戸が並んでいて、一番上の井戸から食料水、米研ぎ、野菜・食器洗い、洗濯の用途で利用する。
藩政時代からの伝統的な水利用を、いまだに地域の人たちが守り継承しているというから驚いた。

 盛岡町家の『旧暦の雛祭り』は、昔ながらの町の良さを知ってもらおうと、市民団体の「盛岡まち並み塾」が開催している。今年で第六回。
会場となる町家では、美しい和服を着た......あっ、いや、和服を着た美しいボランティアのご婦人たちが、親切に案内や説明をしてくれた。


   


 お雛様との出会いには心弾む喜びがあるが、今年は会場の一角に、友人H嬢の母上・テルさんの手仕事のコーナーがあるという楽しみも重なった。
布に囲まれ、針を持っている時が一番幸せというテルさんは、なんと70歳を過ぎてからパッチワークを習い、これらのミニチュアの着物や丹前や布団を作り始めたという。
多くの人々が彼女のコーナーを訪れては、感嘆の声を上げていた。
それもその筈、驚くほど丁寧で精巧な作品ばかり。








 92歳という高齢のご婦人のどこに、このようなエネルギーがあるのだろう?
丈夫で病気ひとつしたことがないし、愚痴や他人の悪口を聞かされたこともないとH嬢は言う。
確かに.......たまにお会いしても、友人の母上というよりは、歳の離れたお友達のような気やすさで心地よい。
テルさんもまた、若い人と話をするのが大好きだと言ってはばからない。
いつまでお喋りしていても話題は尽きず、その盛岡弁には味わいがあるし、気前よく古い端布を回してくれるのもありがたい。
なによりも、余生をまっすぐ見据えて楽しんでいる素敵な人生の先輩だ。

 「私は92でがんす!」 
テルさんは、誰にでも何度でも自分の年齢を自慢する。
92歳まで歩んできた自分の歴史と、まだまだ手仕事を続けたいという意欲を誇りにしているんだな、きっと。
人はある一定の年齢に達すると、年齢が勲章になるらしい。
『あら還』でうろたえている私は見苦しい。

 「どうかお元気でよいお仕事をしてください。」
と祈りつつ帰途についた。



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20 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (うらら)
2009-04-13 13:29:23
60の手習い、と言いますが70の手習いですか!
とても丁寧な仕上がりですね。
92でそれだけのエネルギーがあるってスゴイです。
きっと好奇心旺盛な可愛いおばあちゃんなのでしょうね。
どうせ年を重ねるのなら、そんな年の取り方をしてみたいものです。
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Unknown (士別)
2009-04-13 14:02:12
92でがんす。すごいね。与太っている場合ではない。頑張らなくてもいいなんて言っている場合ではない。しっかりしなきゃね。実物を見てみたい。作品も92でがんすもね。
10日間ほどの旅でくたくたになっている私はなんなんだ。小さな手仕事ほど段々面倒になっているのに、92歳か凄いね。貴女の器用さにも驚いていたんですが、まだ上がいるんですね。つり雛も可愛いですね。
お雛様はいつ見ても優しい気持ちになりますね。ひょっとしてまだ女の子の気持ちが残ってたのかな?
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うららさんへ (nihao)
2009-04-13 18:11:46
70の手習い、しかもそこに喜びと生き甲斐を見つけ、精力的に手仕事をこなすエネルギーは凄いですね。
昔の女性は、70くらいになって、やっと自分のための時間を作ることが出来たのかもしれません。
それに比べて現代の女性たちは、いえ!私は、あちこち痛いは目はしょぼつくは......な~んにもする気がなくなって、60の引退を考えてしまう。
テルさんの真似はできそうにもありませんわ。
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士別さんへ (nihao)
2009-04-13 18:30:16
そうでがんすよ、士別さん。
おたおたしていては駄目でがんす!
10日間の旅行で(え~っ!リッチね)疲れはてていては、この先何にもできませんよ。

でも、テルさんのように、やり甲斐のあることを見つけることは難しいことですね。
92よ、92!
私は92歳の自分をイメージすることなんてできません。
だったら今頑張るしかないけれど、軟弱な心身では何をやっても長続きしない。
昔の女性にはかなわないでがんす。
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70歳から (すずめ)
2009-04-13 19:40:15
70の手習いですか。すごいですね。
年齢に関係ないのですね。
やりたい事なんでもチャレンジということですね。
出来るかなぁなどと考えてる間に1歩踏み出すことですね。わかるのですが、その1歩が・・・
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すずめさんへ (nihao)
2009-04-13 20:25:23
70から何か始めたとしても、はたして何年出来るだろうと、余命が気になって仕方がありません(笑)
そういえば私の母も、70歳くらいで油絵を始めて、家族をビックリさせました。
亡くなって荷物の整理をしたら、下手な絵が山ほど出てきて.......大正の女たちは、ホントに逞しい。
たぶん若い頃にできなかったから、余計がんばるんでしょうね。
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Unknown (HUZU)
2009-04-13 21:05:13
「92歳でがんす」は私の母です。見にきてくれてありがとう。この展示会は、母にとって始めてのお披露目の場で、毎日背中を丸めながらコツコツ針仕事をしている母が、小さい頃子供たちの着せ替えごっこのお人形の着物を作り始め、懐かしんでる姿を見て是非皆に見てもらいたいなと思いました。
そして、nihaoさんのブログでも生き返りましたよ。ありがとうね。
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HUZUさんへ (nihao)
2009-04-13 22:10:52
二日間お疲れさまでした。
こちらこそ目の保養をさせていただきました。
年季の入った技を見て、とても刺激を受けました。
それにしてもすごい人出、大人気でしたね。
テルさんもご機嫌の二日間だったのでは?

鉈屋町には初めて足を踏み入れました。
盛岡にはまだまだ行っていないワンダーゾーンがたくさんあります。
横町散策の魅力を発見しました。
次はどこに行こうかな?
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Unknown (京こまめ)
2009-04-13 23:50:12
いいですね、町家めぐり。
水の利用法も生活の知恵で娘たちにも見せてあげたいものです。
ああ、これが『吊るし物』ですか。ひとつひとつ拡大していただきたいほどです。
かわいいですね~。

幾つになっても趣味をもって楽しまれてるテル様はお元気ですね。
気持ちも若くていらっしゃいますね。
やっぱり、趣味をもたないといけませんね。
本当に理想的な老い方です。
我が家のお年寄りも元気で長生きを目標にがんばらねば。できれば趣味を見つけてもらってね。
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こまめさんへ (nihao)
2009-04-14 08:54:41
盛岡は「みちのくの小京都」と呼ばれていて、歴史と伝統と風情を感じさせるワンダーゾーンが、まだたくさん残っています。
この井戸も、いまだに地域の人たちが大切に利用していることを知り驚きました。
水質の汚染を防ぐため、屋根がついていて井戸には軽い傾斜があります。
よく考えられていますね。

テルさんの生き方から、私は自分の老後を見つめ、こまめさんは義父母さまの老後を見つめる。
ああ、この違いは何だろう?
やっぱり年齢の差ですね。羨ましいなあ。
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