水彩画と俳句の世界

自然を愛し、感性を大切にして「水彩画と俳句の世界」を楽しんでいます。

七月の詩(幻の城)

2024年06月30日 14時44分25秒 | 春の俳句

                 麓に湯けむり昇る豊後富士 8号水彩  

               幻の城

二月や輪島の駒の棋王戦  惟之

船の出ぬ輪島の海女や春遠し

朧夜や烏帽子の出づる屋敷墓

肺活量使い果たして春歌ふ

幻の城の遺構や春の泥

    誌上句会 兼題「若緑」

特選

風あれば風を諾ふ若緑  三枝子

沖を行く白き客船若緑  洋子

慟哭も呑んでフクシマ若緑  謙治

若緑に対ひて色をととのふる  稔

若緑くずれ砦の石の寂  廣平

方丈の留守を預る若緑  幹男

松の芯一尺伸びて雨上がる  惟之

何となく庭師喜ぶ若緑  悦子

格子戸の連なる町や若緑  由紀子

入選

若緑芝生に足裏つつかれて  万智子

蒼天へ飛び立つさまに松の芯  まこと

緑立つ国境沿いの検問所  光央

少年の挫折乗り越え若緑  つとむ

自分史に重き色なり若緑  征子

平凡のかくも長寿や若緑  珠子

参道の長き並木や若緑  祐枝女

産土は今も変わらじ若緑  泰山

老松に並び立つなり若緑  秀子

若緑日ごとに変わる児のしぐさ  靖子

浜風に吹かれ通しの若緑  靜風

開け放つ本陣跡や松の芯  藤子

少年の口元硬し若緑  洋子

いささかの曖昧も無き若緑  秀輔

山門の良き枝ぶりの若緑  三郎

声明の流る古刹若緑  鈴子

少年の口の尖りや若緑  文夫

やはらかき日に膨らみて若緑  信義

若緑明日へ繋がる今日があり  ふみ女

ストックを両手に山へ若緑  歌蓮

それなりに盆栽の若緑  美代子

大波のくづれ磯馴れの若緑  東音

窓を開け目薬をさし若緑  みどり

緑立つ備前鳥城の壁の黒  選者

    やまびこ(五月号作品から)感銘・照明 私の好きな一句

冬萌の里に瀬音の遠くより  東音

みな老いを楽しんでゐる賀状かな  勝彦

竜の玉まだ捨てきれぬ志  勝彦

余生とは言はず言さす雑煮の座  爽見

卒寿てふ花道もあり屠蘇祝ふ  爽見

出直しの覚悟にも似て枯木立  珠子

にこにこと耳うちする子お年玉  利里子

地震ありて一気に乱すお正月  廣平

満天の星きしきしと底冷えす  廣平

新しい自分に出合ふ初日記  ひさ女

北に行き北しか知らぬ雪はねぬ  泰山

   俳誌嵯峨野 七月号(通巻第636号)より

 

 

 

 

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六月の詩(糺すの森)

2024年05月28日 10時06分03秒 | 春の俳句

               赤い四阿のある森(栗東市安養寺)F8 

      糺すの森

霜焼けて幼に還る八十路かな  惟之

積雪の庭へ迷はず飛び込む子

三井寺の円空仏や春立てり

合格の笑顔のライン届きけり

春浅き糺すの森を妻とゆく

     誌上句会 兼題「鳥帰る」

特選

翳となり光となりて鳥帰る  三枝子

鳥帰る備前の山の皆まろし  紀久子

偕老の鍬振る上を鳥帰る  泰山

鳥帰る沖に巨船の居座りて  靖子

鳥帰るどこから見ても古墳山  憲勝

秀逸

残されし二羽は番か鳥帰る  洋子

鳥帰る切なきまでに首伸ばし  廣平

天心に声くぐもりて鳥帰る  藤子

鳥引くや運河に光溢るる日  幹男

病院の池に餌台鳥帰る  翠

転校の最後の授業鳥帰る  倫子

鳥帰る亀に別れを告げもして  つとむ

入選

静寂にはおのが呼気のみ鳥帰る  謙治

見上げれば比叡を越えて鳥帰る  博女

災害の街を残して鳥帰る  光央

鳥帰る田舎訛りの懐かしく  まこと

比良山に見えつ隠れつ鳥帰る  惟之

鳥帰る雲に入りゆく比叡山  靜風

鳥帰る列にはぐれし鳥一羽  万智子

鳥帰る今日から空を広くして  ふみ女

夢に見る生家懐かし鳥帰る  敏子

鳥帰る行くあても無き鳥も又  稔

カリヨンの遠音はるかに鳥帰る  祐枝女

鳥帰る絆深めて父祖の地へ  秀子

捨て難き縁深めて歳還る  悦子

安曇野の空四五羽づつ鳥帰る  秀輔

風かよふ多摩の河原や鳥帰る  洋子

鳥帰る飛行機雲をすぢかいに  文夫

東海の朝の光や鳥帰る  克彦

停戦の願いとどけよ鳥帰る  信義

防空監視哨跡や鳥帰る  三郎

鳥帰る入日の雲の流れをり  博光

引鳥や日に三本のバス無人  啓子

引鴨の入日横切る日本海  和夫

また来ると惜しみ旋回鳥帰る  歌蓮

鳥帰るたれかどこかで待つやふに  珠子

鳥帰る近江の湖のさざなみに  鈴子

小紋のごと行儀藪に鳥帰る  美代子

    やまびこ(四月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

一人居の灯してよりの寒さかな  勝彦

地に返る軽さとなりて落葉降る  紀久子

無人駅一人の下車の咳ひとつ  爽見

数へ日の一日は母に逢ひにゆく  優江

自動ドア出て寒風平手打ち  研二

枕元母の愛せし寒椿  裕世

数え日を数へて何もせずにゐる  優江

みかん剥く孫七人の真ん中へ  優江 

大晦日心に響く第九かな  和子

ひたすらに散る山茶花を見てひとり  鈴枝

幾年を巡りて今日の落葉踏む  勝彦

風音も味の一つとおでん鍋  爽見

顔見世やまねき見上げてより入る  洋子

       俳誌嵯峨野 六月号(通巻第635号)より 

 

 

  

 

 

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五月の詩(初太鼓)

2024年04月30日 10時15分14秒 | 新年の俳句

          初夏の由布岳 F8 水彩

   初太鼓

初太鼓東寺の掘に塔の影  惟之

いずこから鳶の笛や初御空

元日の安否確認妻の里

夫つくり妻盛り付けのお節かな

母と子の装ひ新た初手前

    誌上句会 兼題「立春」

特選

立春の日の斑の踊る海鼠壁  洋子

朝の脊も伸ぶる老ひの歩春来る

立春や第一コーナー馬なりに

秀作

立春や捻日をを廻して鳴る時計  紀久子

立春や百回目指してスクワット  敏子

立春や関守石に日を宿し  幹男

立春のひかり石くれにもとどき  みどり

入選

すぐそこに立春見へて足踏みす  博女

立春の魚拓取る墨匂ひたち  三枝子

白だしの煮物の照りや春立ちぬ  米国

湖に吹くトランペットた春立ちぬ  惟之

立春や朱印の美しき火伏札  藤子

生き物の皆ざわざわと春立てり  悦子

立春の浅瀬に宿る光かな  文夫

立春と言へど難儀や能登の里  克彦

天窓に日の広ごりて春来る  信義

立春のひかりとなりし渚かな  靖子

立春や補助輪取れて風を切る  廣平

立春の名のみばかりの北大地  泰山

玄関の明るさに知る春立つと  稔

立春や芝焼きを見る高校生  祐枝女

立春や豆を啄む鳩の二羽  翠

始りはバッハの調べ春立ちぬ  ふみ女

立春や隣に越し来若夫婦  秀子

立春の消へぬ飛行機雲ふたつ  啓子

立春や山の寝覚めに遅速あり  秀輔

立春や湖上ゆつくり観光船  靜風

立春や浄心門の千社札  三郎

春立つや開かずの扉開く音  鈴子

そちこちに響く槌音春来る  洋子

立春のしずくを飛ばす水車かな  倫子

ポケットにワイド文庫や春来たる  歌蓮

立春の灯台だけが違ふ色  博光

立春大吉掲げし寺の外柱  珠子

立春や使ひ初めの御朱印帳  知恵子

立春や朝の紅茶をゆつくりと  美代子

立秋の音は竹林走る水  つとむ

    やまびこ(三月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

父母のしらぬ傘寿や暮れの秋  仙命

まだ成せる事のあるはず天高し  啓子

小雪や久しく鳴らぬ黒電話  海男

父と子のあのねの話初冬の湯  良精

老ひて尚学ぶことあり今朝の冬  俊江

ただならぬ世を生きぬいて着ぶくれて  爽風

太陽に愛され痩せて吊るし柿  みどり

うたた寝の夢をつなっげて冬ぬくし  利里子

なほざりの庭も厭わず石蕗の花  和江

短日や午後の仕事が走り出す  ひさ女

    俳誌嵯峨野 五月号(通巻第634号)より

 

 

    

 

 

 

 

   

 

 

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四月の詩(雪の女王)

2024年04月02日 14時30分49秒 | 冬の俳句

                              睡蓮池(大津市大萱) F6 水彩                      

        雪の女王

クリスマス王雪の女見にゆく子  惟之

冬天や猿飛佐助ゐた城址

冬晴や弘法杉の幹太し

街道に火の見櫓や遠伊吹

夜叉ヶ池照らしてをりぬ冬の月

   兼題(雑炊)

特選

雑炊を炊く土鍋のひび古し  廣平

雑炊をカフェーで啜る日曜日  幹男

雑炊に溶かして啜るわだかまり ふみ女

秀作

世の隅に座り直して蟹雑炊  三枝子

一人身の朝昼晩のおじやかな  佑枝女

しあわせや両手に包む蟹雑炊  藤子

直箸の文化交流ふぐ雑炊  光央

妻ありて蟹雑炊のありがたし  泰山

雑炊やつつがなきをかみしめて  靖子

入選

病み上がり雑炊の味ためしつつ  博女

亡き友と語りし夜の締め雑炊  謙治

雑炊のひと匙づつを病む母へ  洋子

雑炊を囲む家族や外は雨  秀子

無事下りて仲間と囲む河豚雑炊  惟之

雑炊や夜回りの声彼方より  治子

雑炊の味に深みを残り野菜  万智子

年始めとて締めの雑炊うつくしく  稔

雑炊の出汁に畑へも笑顔かな   文夫

女子会のお開きそそと雑炊に  洋子

雑炊を吹いて猫舌まつろはす  秀穂

雑炊の椀あたたかき夕餉かな  翠

敗戦の雑炊を思ふ母の味  靜風

芋雑炊田舎銀座の里恋し  珠子

到来の具は大粒や牡蠣雑炊  知恵子

雑炊のふうふう吹いて過去しのぶ  喜美江

早朝の雑炊匂ふ亡き母の味  みどり

雑炊や誠実なまま生きてをり  紀久子

雑炊に昔語りのはじまりぬ  博光

おじや噛む乗せる三つ葉を好む夫  啓子

指白き女将の手際う雑炊  鈴子

卵黄を二つ落として締め雑炊  信義

円卓のこころ豊かに牡蠣雑炊  美代子

雑炊や万の神を祀る祖父  三郎

雑炊につまる感慨山のごと  つとむ

     やまびこ(二月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

思い出に始まる母と子の夜長  鈴枝

表札に夫の筆あと秋深し  梅子

父母こゆる齢いただき今日の月  郁子

しなひつつ光をこぼす竹の春  爽見

ふり向けばまうしろに立つ秋の影  爽見

蓮の実の跳んで捨てたき過去のあり  三枝子

追伸に本音のありき秋の虹  怜

叱られた子供待ってる犬と月  方城

かえりみてこんなに生きて枯野人  憲勝

立話入れていれてと秋の蝶  布美子

川音は闇に吸われてちちろ虫  山女魚

烏瓜夫からもらひ生ける朝  文香

手に包む津軽のひかり林檎剥く  ひさ女

行く雲や山家の軒に干し大根  克己

   俳誌嵯峨野 四月号(通巻633号)より

  

 

 

  

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三月の詩(水打つ蜻蛉)

2024年02月29日 17時22分41秒 | 秋の俳句

       開設110年の東京駅 8号水彩

     水打つ蜻蛉

次次に水打つ蜻蛉山の池  惟之

津田梅子を印刷中や秋の暮

菰巻いていろは松なり彦根城

結ひ上げて七五三なり椿山荘

木之本の地蔵菩薩や初時雨

    誌上句会 兼題「初時雨」

特選

感染症ひとけたへりし初時雨  博女

イマジンの聞こゆ公園初時雨  光央

仮縫ひの針の軋みや初時雨  三枝子

初時雨こんにゃく色の武相荘  秀輔

秀作

発つ子等の尾灯潤ます初時雨  稔

初しぐれ漆の椀の出汁の味  文夫

竹林の中の明るさ初すぐれ  博光

これよりは西国街道初時雨  鈴子

風の音舟軋む音初しぐれ  みどり

初時雨昭和の路地をぬらしけり  信義

初時雨俳句の道の果てもなし  珠子

入選

窓叩く小さき手のひら初しぐれ  廣平

初時雨背に気配の夜坐かな  謙治

待つ人の遅れ気になる初しぐれ  洋子

初時雨無断で借りる寺の門  まこと

大比叡のケーブル待や初時雨  知恵子

軒先に犬は遠見の初時雨  幹男

朝市に出会ひの村や初時雨  藤子

初時雨ちょつと寄道したやうに  ふみ女

初時雨比叡の道を修行僧  靜風

山里の茅葺屋根に初時雨  裕枝女

初時雨いろ増す京の四方の山  秀子

故郷は無人駅なり初時雨  紀久子

晩鐘のしづかな里や初時雨  靖子

嵯峨野路の童地蔵や初時雨  惟之

寺前の片手拝みや初時雨  富治

芭蕉像の菅笠ぬらす初時雨  敏子

感情をぽつりとこぼす初時雨  悦子

はじめてのペットを迎え初時雨  倫子

孫作るカレーの味し初時雨  翠

マンホールの蓋に市の花初時雨  美代子

庭しかフエードアウトの初しぐれ  啓子  

異国語の飛び交ふ渋谷初時雨  洋子

明け方の土の湿りや初時雨  つとむ

    やまびこ(一月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句)

たんたんと流る暮らし走馬灯  久子

花芒さみしき時は野を歩け  みどり

肩車の小さき手の捥ぐ林檎かな  咲久子

コスモスの乱れに山の動きけり  東音

鰯引く水平線を曳くごとく  勝彦

稲の花憲法九条ありてこそ  爽見

赤とんぼ小首かしげて止まりけり  悦子

老いて尚飽きぬこの里合歓の花  和江

寝入る児の薄き爪切る夏の夜  久代

オラショ聴く島の教会秋日和  藤子

秋夕焼乳房ひきずり牛帰る  泰山

   俳誌嵯峨野 三月号(通巻第632号)より

 

 

  

 

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二月の詩(こぼれ萩)

2024年02月01日 10時58分14秒 | 秋の俳句

                                             懐かしい林檎たち 6号 水彩

      こぼれ萩

穏やかに上る八十路やこぼれ萩  惟之

秋天へ祈る平和や慈母観音

秋寒や一億円の束重し

秋の宵ラクビ―を見てバレー見て

十歳の孫が三人秋うらら

      誌上句会 兼題「浮寝鳥」

特選

クレーン車伸びゆく中洲浮寝鳥  洋子

浮寝鳥はやくも一陣来て睦む  靖子

長旅を終へて浮寝の鳥の群れ  安惠

心置きなく浮寝鳥数へをり  東音

さざ波の揺れにまかせて浮寝鳥  三枝子

秀作

山迫る余呉の湖浮寝鳥  清次

小魚を追ひし辺りや浮寝鳥  治子

ただ一羽湖岸離るる浮寝鳥  翠

浮寝鳥それぞれそっぽむいてをり  文夫

群れゐても一羽一羽の浮寝鳥  廣平

子守唄漏るる病窓浮寝鳥  謙治

浮寝鳥淵に夕闇迫りけり  洋子

浮寝鳥寄り来てやすむ浮寝鳥  博女

湖の波に抱かれ浮寝鳥  鈴子

ありなしの風にも揺れて浮寝鳥  賀代

大池の一隅占めて浮寝鳥  佑枝女

晩節の吾に等しき浮寝鳥  珠子

暮れなずむ堰に群れゐる浮寝鳥  惟之

陣形を変へ浮寝鳥風任せ  まこと

神の池はなれて四五羽浮寝鳥  紀久子

内堀の夕日ゆるるや浮寝鳥  敏子

入選

櫓の揺れに合わせ舟漕ぐ浮寝鳥  光夫

漂いて夢の最中浮寝鳥  泰山

目つむりて遠き過去追ふ浮寝鳥  みどり

薄日さす都会の川の浮寝鳥  幹男

浮寝鳥静謐の世を願ふかに  秀輔

星こぼる湖のしじまや浮寝鳥  秀子

余生にも波風ありて浮寝鳥  靜風

浮寝鳥久美浜湾てふ里の浦  稔

身軽さを羨ましとも浮寝鳥  美代子

夕光に向きさだまらぬ浮寝鳥  藤子

母恋し夕日の湖の浮寝鳥  三郎

浮寝鳥写生の我もまどろみぬ  啓子

浮寝鳥の影やまたたく夕の星  信義

東雲や尾羽振りをる浮寝鳥  博光

    やまびこ(十二月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句から

武蔵野にふくらむ入日橋涼み  東音

走馬灯みんな回ってみんな影  利里子

さらさらと風の文字生む稲田かな  廣平

昼寝覚水のやうなる夢のあと  梅子

蚊帳に入る作法うるさき母なりき  方城

初秋の波に漂うごと二度寝  洋子

西瓜切る十の瞳にみつめられ  そよ女

まつさらの風と山会ひぬ今朝の秋  耕

原爆忌心ひとつの一分間  小鈴

    俳誌嵯峨野 二月号(通巻631号)より    

 

 

 

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令和六年一月の詩(明智越)

2023年12月29日 15時43分01秒 | 秋の俳句

              湖北秋暁 F30号(水彩)

 新年あけましておめでとうございます。60歳半ばで始めたブログ「水彩画と俳句の世界」は、とても良い仲間と結社に恵まれ、これまで無事に続けることができました。今年もどうぞよろしくご愛顧を賜りたくお願い申し上げます。

     明智越

秋麗やりすの横切る明智越  惟之

山並へ子らと駆けつこ稲穂波

橡の実をラインで見せて名を問う子

劇団の初舞台なり孫の秋

峠より京一望や花すすき

    誌上句会 兼題「枯木立」

特選

枯立木下を玉川上水路  清次

里山に住み枯木立枯木立  三枝子

眠らない都会の灯り枯木立  東音

枯木立いつも誰かが蘆花の墓  珠子

法灯を守りて比叡の枯木立  靜風

秀句

公園の遊具はきりん枯木立  安恵

現世やわが身と似たり枯木立  泰山

山荘や星を宿せる枯木立  翠

夕映えのl落暉を背に枯木立  鈴子

枯木立ペダルのギアを上げにけり  光央

枯木立吊るす屋台のお品書き  知恵子

となり家の土蔵をしのぐ枯木立  みどり

妖精のオブジェが招く枯木立  洋子

蒜山は遠くに見えて枯木立  由紀子

一羽づつ烏のとまる枯木立  洋子

彼木立見え隠れして黄泉の国  治子

てっぺんに鴉の巣あり枯木立  惟之

寒太郎ひゅうひゅう抜ける枯木立  賀代

我に似し野に一本の枯木立  つとむ

独り言聞ひてゐそう枯木立  敏子

    やまびこ(十一月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

紫蘇もんで生命線の染まりけり  千代

鎖場の鎖のみ込む夏の霧  勝彦

大西日背負いておりる琵琶湖岸  博女

明日といふあてにならぬ日トマト捥ぐ  隆を

八の字にくぐる八十路の茅の輪かな  怜

バス停に手書きのダイヤ夏祭  そよ女

億年を思えば一時蝉も吾も  豊子

大き影ゆらし黒揚羽の無音  史子

よく笑ふ子を真ん中にソーダ水  美幸

故郷へ道ひと筋や青田風  敏子

幸せは自分で見つけ日照草  清子

炎昼や貼りつく家の影  信儀

母からの浴衣今年も袖通す  裕世

   俳誌嵯峨野 一月号(通巻第630号)より

  

 

    

 

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十二月の詩(夕焼)

2023年11月29日 14時03分32秒 | 夏の俳句

                                  楽聖 水彩 6F

      夕 焼

夕焼へ尻取りをして母子ゆく  惟之

炎帝や地球沸騰はじまりぬ

繙けば吉祥天や秋涼し

核なき世果たせ果たせとつくつくし

半世紀ぶりの再会星祭

   誌上句会 兼題「彼岸花」

特選

彼岸花ほそぼそ記す農日記  みどり

彼岸花心つもりを子に話す  珠子

今日少し夫に会ひたや彼岸花  京子

彼岸花父母耕しの畦の道  東音

師の句碑に師の師の句碑に彼岸花  清治

子や孫と登る棚田や彼岸花  博光

彼岸花咲いて寂しさ増す野道  桂子

彼岸花かたまり咲くも淋しかり  靜風

五重の塔真向かひにあり彼岸花  紀久子

秩父路の同行二人彼岸花  翠

庭隅にすつと一本彼岸花  鈴子

祖も親も一つ屋に居て彼岸花  泰山

僧房の道は坂道彼岸花  文夫

永らへて今年も出会ふ彼岸花  靖子

檀家寺の入口に生ふ彼岸花  つとむ

曼殊沙華夫と歩調を合わせけり  安恵

彼岸花百年の恋焼き尽くし  治子

沿線の先の先まで彼岸花  光央

燃えて火の色褪せ空し彼岸花  三枝子

手を繋ぐ姉妹の下校彼岸花  知恵子

入選

古民家の裏庭白き曼殊沙華  洋子

句碑面磨かれ映る彼岸花  啓子

曼殊沙華咲くやお春の古刹訪ふ  藤子

畦沿ひの赤き炎や曼殊沙華  まこと

彼岸花開花待たれる昨日今日  祐枝女

河川敷一面占める彼岸花  信義

幼き日彼岸花避けて遠回り  敏子

陽を受けてティアラの如し曼殊沙華  秀輔

赤よりも白が目をひく彼岸花  美代子

彼岸花魔性の赤を愛しめる  廣平

彼岸花田圃アートの片隅に  洋子

彼岸花けふはあがらむ石仏  謙治

ふるさとをわすれぬ畦の彼岸花  秀子

赤赤と畑の守護神曼殊沙華  惟之

八十年在所の寺に彼岸花  稔

泣かないでと言ひつつ飾る彼岸花  博女

   やまびこ(十月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

月下美人月の色してひらきゐる  きぬ

あるがまま生きるは難し濃あぢさゐ  梅子

俎板の音にも夏の来てをりぬ  千代

羽虫すら潰せぬ指よ沖縄忌  佳代

ががんぼや系図に探す我が名前  勝彦

打水の呼ぶ水の風風の神  爽見

薫風を待たせて潜る躙り口  方城

水郷は雨こそよけれ濃紫陽花  みどり

句に学ぶ余生でありぬ蝸牛  みどり

六月の富士海の上雲の中  清次

水無月の有りと老舗や梅雨晴間  啓子

草を取る庭に奥行もどりけり  翠

山里の暮色のけぶる合歓の花  朋子

それぞれに生きて集ひし盆踊  たまき

   俳誌嵯峨野 十二月号(通巻第629号)より 

 

 

 

 

  

 

 

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十一月の詩(千光寺)

2023年10月31日 16時35分41秒 | 夏の俳句

    湖北の百合園 三浦武弘

      千光寺

小倉山みどりに映へて川の音  惟之

葉隠や戸無瀬の滝のほそぼそと

緑蔭や大悲閣道ひと疎ら

保津川の緑蔭上る渡し舟

万緑へ鐘の一打や千光寺

  誌上句会 兼題「星月夜」

特選

アンデスに国境は無し星月夜  光央

信号の無き湯の街や星月夜  惟之

アイガーの北壁くらし星月夜  つとむ

ベドウィンの野営のテント星月夜  清次

無言館鉄扉の重し星月夜  泰山

星月夜自墳の水の音清し  安恵

秀作

星月夜午前二時なる屋根の上  治子

星月夜こころやさしくなりにけり  東音

バレエ教室の十周年や星月夜  加代子

テント場のリュックに座り星月夜  知恵子

老いと言ふ静けさにゐる星月夜  靜風

星月夜ジャズ流れ来る港町  鈴子

星月夜万葉仮名の母の文  翠

待つ人の下駄の音来る星月夜  珠子

蒙古船群がる沖や星月夜  まこと

山小屋に被さってくる星月夜  美代子

手を引かれ逃げる路地裏星月夜  富治

平和なる世なればこその星月夜  靖子

叡山の行者の道や星月夜  敏子

振り仰ぐふるさとの山星月夜  洋子

未だ少しこの世に未練星月夜  廣平

雨あとの山の端まで星月夜  三枝子

沖合の潮目定かや星月夜  藤子

雨戸繰る暫しを亡夫と星月夜  洋子

山小屋を出て一歩より星月夜  博光

入選

星月夜ドビッシイーのこぼれ落つ  ふみ女

両に寝て真夜のしづけさ星月夜  啓子

人影の明るき小路星月夜  信儀

星月夜夢の中でも逢えるかも  みどり

異郷とて母の呼ぶ声星月夜  謙治

表まで送られ仰ぐ星月夜  祐枝女

逝き人の笑顔の写真星月夜  博女

星月夜山に抱かれる盆地かな  文夫

賓客の無き月見楼星月夜  秀輔

親と子の星座探しや星月夜  秀子

小渕沢のペンション二階星月夜  歌蓮

星月夜はらからは南の前線に  三郎

島影の遠近見えて星月夜  紀久子

   やまびこ(九月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

日を水のごとくに湛え柿若葉  爽見

捨てきれぬものに埋もれて更衣  三枝子

百姓のまねして余生茄子を植う  秀子

米粒が星になる朝花南天  美和

まだ人手借りずに過ごし梅雨に入る  海男

万緑や長命といふ贈り物  梅子

母と子の母校は同じ桐の花  近子

源流に滴りといふ力かな  篤子

大声で泣く児の眩し子どもの日  桂子

宵宮や亡き妹とすれつがふ  雄彦

母の日や静かに崩すオムライス  幹男

   俳誌嵯峨野 十一月号(通巻628号)より

 

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美しい絵画作品集(第2集)

2023年10月18日 13時59分01秒 | その他

         湖面に写る海津大崎の桜(2020.4)

 三浦武弘さんの「私の絵画作品集」の第2集です。作品は2021年の増刷版ですが、いずれも光に満ちた三浦さん独自の筆遣いで、秀作ばかり。あとがきに寄れば「雪の金閣寺」「宝泉寺」の二作は、作者の苦楽の想いに筆を止められ、描き上げられたおりには、「有難く、感謝、感謝の人生で有りました。今後は命ある限り、私の大好きな絵画に挑戦し、続けたい。」と述べられています。ここにその作品集を掲示します。  

 夢に見た青いバラ (2019.8) 

  自宅に咲いたカンナ(2019.11)

 文化会館のしだれ桜 葉 (2020.4)

  文化会館のしだれ桜 (2020.4)

 芽吹きを待つメタセコイア並木 (2019.9)

 晩秋の尾瀬が原と至仏山(2020.4)

 西の湖のヨシ焼 (2020.4)     入選作品

 びわ湖のヨシ焼 (2020.5)

 私だけの滝の白糸  (2020.5)

 満月の夜桜  (2020.8)

   森のひざし (2020.10)   入選作品

  すやすやお休みなさい 2020.2

   いつか見た夕焼と菜の花

  竹林と紅葉の宝泉院 大津市美術展覧会 入選  (2020.4)

 満月に輝く雪の金閣寺 (2020.10)

 びわ湖にうろこ雲  (2021.7)

   怒り(薬師寺の仁王像) 草津美術展 入選(2021.9)

 湖北の夕焼け (2021,10)

  小川村の秋景はメルヘンチック 滋賀県美術展覧会 出展 (2021.11)

  迸る湖辺の桜よわが心   惟之  

  夢に見た青きバラとはピカソかな 

        カンナ炎ゆ熱き絵ごころ赤黄桃

  糸桜静かに揺れて子らの声

  芽吹き待つメタセコイアや比良比叡

  晩秋の尾瀬ヶ原なり至仏山

  蒲生野の野焼なりけり比良比叡

  白糸の滝のしぶきや曽我兄弟

  白樺と菜の花よぎり蓼科へ

  満開の桜月夜となりにけり

  緑なす森の日差しや夢うつつ

  夢うつつ愛猫眠る春の昼

  夕焼の空へ映りし大菜畑

  大原や紅葉麗し宝泉院

  満月に耀ふ雪の金閣寺

  うろこ雲広ごる湖や比良比叡

  炎暑かな阿形の口の大きかり

  夕焼に染まりし湖や竹生島

  小川村のメルヘンチック秋の景  

                           以上

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

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