白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―ウイリアム バイナムの医学史―

2019年03月26日 | 健康

今年も亦、昨年と同様に3月に入ってからの気温は高止りとなり、東京では下旬を待たずに早々と桜の開花宣言がありました。そんな春爛漫の季節の到来となりましたが、先月来から読書三昧で過ごして仕舞い、ブログの更新もすっかりご無沙汰してします。

 

―この頃何故か 早咲きの染井吉野の花弁の紅が 薄いと感じられる!-

それと言うのも老人の歳を経ての最大の関心事は、日々の健康生活習慣の継続維持であり、続いては何方もはっきりは予測できないやがて到来する死期であります。そうなると当然とは言え現代医療のお世話になって結果的に医療死させられるか、それとも、敢えて老衰自然死を自ら選んで迎える覚悟ができるかであります。

そんな事から、予てより是非読んで見たいと思って居たのが、其のヒントにもなるような西洋医学史であり、探して居て、偶々区立図書館で見つけた本が、標題の「ウイリアムバイナムの医学史」であります。

現代医学は、近年次々と高度な医療診断機器が開発されたり新医療技術が登場し、又多くの新薬や新しい療法が明らかにされて進歩して居り、其れ等が高い評価を受けている一方で、片や医療費の高騰や過剰な投薬が多くなるなど様々な批判も多く浴びていると理解されるのが昨今の医療の姿です。

其れも其の筈、科学とされる現代医学にあっては、当然とは言え長引く慢性疾患等の治療や難病に当たって尚も多くの解明すべき課題を残して壁に突き当たって居り、現代医療文化として培われるべき臨床医学としての評価からは制度的に見て何かが欠けて居り、今日の多様な時代変化の中に有って様変わりしている様々な疾病で、多くの患者さんの期待や要望に応えられない状況に陥って居るようにも思われるからであります。

 

名著と言えるウイリアムバイナムの医学史―アマゾンより

扨て、標題の話に入りますが、医学史としての同書では、医学の歴史を医者たちの仕事をする場所の違い、目的の違いで 「臨床書物、病院、共同体、実験室」の五つの類型に分類し、それぞれの時代に現れた医学を年代別に示して、其れ等が層をなして現代医学が構成されているとする捉え方で医学史を展開しています。

其の中で特に興味を引かれたのは、臨床の医学はヒポクラテス派から始まる、現代のプライマリ・ケアに共鳴するものであり、書物の医学」は中世以来のものであって、現代医学界を象徴する情報の爆発的増加と関係が深いと言う下りであり、医学の今日的な状況とその課題を彷彿される医学史の捉え方であります。

その上に当然とは言え、医学の長い歴史に有って臨床、書物、病院、共同体、実験室の5つの類型を考えることができるとしたのは、これらに象徴される医学類型が、古代から19世紀まで年代順に現れては層をなすように重なって、現代の医学が形づくられて来たとする医学史観に立っている事であります。

それでは、古代ギリシャ・ローマ人が作り上げた臨床の医学とはどのようなものであったか?

中世に発達した書物の医学」の特徴は何か?

フランス革命期のパリで起きた「病院の医学」とは、どのような意味で革命的だったのか?

19世紀のコレラなどの感染症と近代社会が生んだ貧困の問題に直面して、国家はどのようにして共同体の医学をつくりあげたのか?

「実験室の医学」はどのようにして医学を変革したのか?

 20世紀以降においては、それぞれの類型はどのように発展し、又変革して共存しているのか?

 

―プライマリーケアーは健康維持の基本となる医療理念!-

それらの問いの応えの全てを本書からくみ取り理解するには、其の背景となっている各時代の相対する多くの一般知識が必要となりますが、同書ではその類型的な把握に基いて、それぞれの医学の特徴を簡潔に記述しています。そして終章では、現代医学(西洋医学)がどのように発展して来たかの経過の核心を突いて纏めて居り、現代医学が将来どうあるべきかを深く考えさせられる示唆に富む、一寸苦言にもとも取れる厳しい考察を展開されて居ります。

其の意味からすれば本書は私見ですが、日本人が今日の西洋医学を知る上での大変ユニークな分析を行って居り、貴重な医学史書として読んで痛く感動させられました。人にはそれぞれの医学認識レベルに違いがあり、又医療に対する理解や受け取り方があるとは思いますが、文化としての医学の歴史にご興味のある方の為に、同書に有りました原著者紹介と訳者紹介を、参考までに下記に転写致しますのでご参照下さい。

原著者紹介
William Bynum(ウィリアム・バイナム)
ロンドン大学名誉教授.イェール大学医学部, ケンブリッジ大学を経て,1973~1996年までロンドン大学ウェルカム医学史研究所の所長を務める.専門は医学史.著書にScience and the Practice of Medicine in the Nineteenth Century (Cambridge University Press, 1994), Great Discoveries in Medicine (Thames & Hudson, 2011)《邦訳『Medicine:医学を変えた70の発見』(医学書院, 2012)》,A Little History of Science (Yale University Press, 2013)《邦訳『歴史でわかる科学入門』(太田出版, 2013)》などがある.
訳者紹介
鈴木晃仁(すずき・あきひと)
慶應義塾大学経済学部教授.東京大学教養学科卒業. ロンドン大学ウェルカム医学史研究所PhD, アバディーン大学トマス・リード研究所などを経て現職.専門は医学史. 著書にMadness at Home (University of California Press, 2006), Reforming Public Health in Occupied Japan (Routledge, 2012, 共著) などがある.
鈴木実佳(すずき・みか)
静岡大学人文社会科学部教授.東京大学教養学科卒業. ロンドン大学PhDなどを経て現職.専門はイギリス文学.著書に,『セアラ・フィールディングと18世紀流読書術』(知泉書館, 2008),訳書に『清潔の歴史―美・健康・衛生』(東洋書林, 2010)などがある.

 

尚、文中に有りました「臨床の医学」はヒポクラテス派から始まる現代のプライマリ・ケア 云々の意味ですが、下記に表記しますので併せてご参考にして下さい。

 

プライマリ・ケアとは: 国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、且つ、全人的に対応する、地域の保健医療福祉機能を指して使う用語です。

現代はそのプライマリ・ケアの充実こそ、医療本来のあるべき姿であり、人の健康維持の起点となる医学理念です!

 ブログランキング ブログコミュニティ にほんブログ村

 家庭菜園(プランター菜園) - 花ブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿