MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

夜のブログ

2005-11-29 | 雑記
ブログの更新って、何時ごろがいいんでしょうか?

ここ最近朝起きたらまず更新、しかる後に仕事、という習慣にしていました。
この利点はなんといっても気分が爽快。
朝一発目から「今日はすでに意味のあることをしっかり済ませた」気分が味わえます。
(大したことやってるわけでもありませんが…)

しかし睡眠不足だったり、仕事が早朝からだったりするとそういうわけにもいきません。
そんなわけで昨日、今日と夜遅い更新になってしまいました。
夜に更新する利点としては「これで後は寝るだけだ」と気分が軽くなる感じがすることでしょうか。
しかし一方で「もう眠くて頭が働かないのでちゃんとしたことは書けないよ」という現実もあります。

ベストなのは早寝早起き、早朝さっそうとブログ更新なのですが、そうも行ってないのが悩みの種ですね。
みんな何時ごろ更新するのが多いんですかね?

鳥インフルエンザ

2005-11-28 | 雑記
鳥インフルエンザ話題になってますね。
アウトブレイク寸前、という報道も多く不安が募ります。

そういう危険な新興(?)伝染病といえば、最近ではSARSが記憶に新しいところです。
以前シンガポールに住んでいたとき、SARSが話題になっていました。
しかしそれ以外にも、ニュースを見ると時々伝染病のニュースをやってました。
SARSそのものではなく、マラリアとか何か少し軽めのやつだったと思いますが、普通に「2人死んだ」とかやっていてすごいなと思った記憶があります。

シンガポールなどは、町中年中殺虫消毒しているような潔癖都市ですが、何せ暑くて湿気がすごいので、それでも伝染病が発生してしまいます。
考えてみれば熱帯地方ではそうした伝染病も普通にあるわけで、地球上の人口のけっこうな比率で伝染病とは切っても切れない生活をしています。
日本に住んでいると食あたりもまれだし、「伝染病」といってもほとんど実感が湧きませんが、それも相当のんきな感覚なのかもしれません。

しかしインドネシアでもタイでも鳥インフルが発生してるのに、何でそれらにはさまれたマレーシアでは発生しないんでしょう?
自然環境は似たようなもんだと思うんですけどね。

京の秋

2005-11-27 | 雑記
京都に行ってきました。

ちょうど今紅葉の見ごろで、観光客がいっぱいです。
写真は二条城の庭園です。
京都には他にもこうした散歩にいい場所がいっぱいあるのが好きですね。

<24-2>頭に血が上っちゃうんですが・・・(2)

2005-11-24 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
では、どうしてこうした「意外」な結果が出てきてしまうのでしょうか。

カギは、ヒトの認知プロセスにあります。
ヒトはある物事を経験するときに、何でもオープンにまっさらな頭で受け止めるのではなく、色々な解釈を自動的に付け加えて理解しています。
その無意識の解釈が、目の前の現実や相手の反応と矛盾するとき、自然ないわば防衛反応として、「こんなのはおかしい」と怒りが生じてくるのです。

具体的には、ヒトの理解の過程には4つのステップがあります。
一歩目の理解に基づいて次の一歩を進め、最終的な思い込みが成り立っていくので、ビジネススクールではこれをLadder of inference(解釈のハシゴ)と呼んでいました。
四つのステップとは、次のものを指します。

1. データの選択
2. データの解釈
3. 解釈に基づく評価
4. 評価に基づく前提

簡単に言えば、1.はまず、判断の上で何が大事なことなのか、何を元に物事を判断するか、判断の元となるデータ(現象)の選び方です。

さらに選んだデータ(現象)に対して、それがポジティブなのかネガティブなのか、どう取れるのか、解釈の仕方は人それぞれです(2.)。

さらにあるデータが仮にポジティブだとしても、「だから交渉に対してそれがどういう影響をもつのか」という評価はヒトによって違います(3.)。

最後に、交渉へのある影響がありそうだと分かったとしても、交渉の中でどこまでそれを「前提/所与」と考えるかは交渉者次第でしょう(4.)

このように、思い込みや前提の背後にはいくつもの判断の階層が存在します。
これらの階層のいずれかで、相手(や目の前の現実)とあなたの間にギャップが生じているからこそ、「こんなはずじゃなかった」という事態が生じてしまうのです。

例を挙げて考えてみましょう。

AさんがBさんに物を売る交渉をしているとします。
一回目の話し合いでは、Bさんは話し合いの間中しぶい表情をして、「そんなに予算がないから」と乗り気でない様子を見せていました。
しかし話し合いの最後になって表情を和らげ、「次回の話し合いまでにもう少し検討しておく」と話し、二回目の交渉を約束しました。
二回目の交渉に臨むにあたって、AさんとBさんは交渉にどんな期待をもっているでしょうか。

Aさんとしては「前回Bさんが最後に表情を和らげて前向きな発言をした」こと(データ)を重視したくなるでしょう(1.)。
Aさんから見れば、Bさんの表情はポジティブなもので、とても清々しそうなものに見えました。だとすると、Bさんも交渉戦術上しぶい顔を見せていただけで、ホンネの部分ではまだまだ交渉成立への意欲があるのかもしれません(2.)。
Aさんにとっては、Bさんの面子を立てつつその関心をうまく引き出してやれば、交渉成立に向け有利な進め方ができることでしょう(3.)。
ともかくAさんとしては提案をブラッシュアップして交渉に向かいます。と同時に、二回目の交渉では当然Bさんサイドから何らかの提案があったり、うまくすればこちらの前回の提案を了承してくれるかもしれないと考えます(4.)。

一方Bさんから見ると、「あまり乗り気がしないので前回こちらはずっとしぶい顔を見せていた」という印象の方が強かったりするでしょう。最後に表情が(無意識に)和らいだのは、トイレに行きたいのを我慢していて、やっと交渉が終わったからかもしれません(1.)。
Bさんの常識からすれば、あれだけ一生懸命説明する売り手にあれだけ鈍い反応をしていたのだから、当然ネガティブな反応であったことは相手に通じたと思うでしょう(2.)。
それだけネガティブなら、「基本的にこの交渉はまとまらなそうだ」と相手も評価しているはずです(3.)。
だとすると、(そもそもBさんは乗り気でないので)「あれだけいやな顔を見せておいたから、相手も分かってくれて、打ち切ればそれでOKだと考えます(4.)。

こうした二人が交渉に臨めば、お互い「こんなはずじゃなかった」とひと悶着あることは想像に難くありませんね。

このように同じ経験(この場合一回目の交渉)を共有していたとしても、その中で何が重要だったか、それをどう解釈できるか、それが交渉にどんな影響をもつか、ヒトによって考え方にバラつきが生じることは非常に多くあります。

交渉など生産的なコミュニケーションを円滑に進める一つのカギは、こうした理解の相違を「当然起こるもの」と受け止め、どこでどうお互いがずれているのかを明確にしていくことです。
その際相手を批判したり、どちらの解釈が「正しいか/優れているか」を競う姿勢をなくすことが重要です。
交渉は互いの利益のために行われるものであって、真理を探究する議論ではありません。

-どちらの意見が正しいのか?
-どちらの理解が本当の意味で優れているのか?普遍的なのか?

といったことが交渉の争点になってしまっているとしたら、そしてそのために話し合いが怒気を帯びてきているとしたら、こう考えるべきです。

-どちらも正しい。そんなことは問題じゃない。あるのは前提の違いだけ。

解釈・前提を自在に使ってものを考えられるようになると、よほどえげつない発言を受けない限り、交渉で腹が立つことはなくなるはずです。
基本的にはこれで十分に交渉の上級者なのですが、さらに話を深めていくと色々な技・コツがあります。
そこでこの議論を進めた応用として、相手の挑発的な発言にどう対処したよいか、を次回は考えてみたいと思います。

竜馬がゆく

2005-11-22 | 雑記
掲題の本を読んでます。
というか最近読み終わりました。
幕末の坂本竜馬を主人公にした、司馬遼太郎さんの代表作です。
あまり有名な歴史小説なので、かえって敬遠してあえて読んでいなかったのですが、読んでみると爽やかで思わず引き込まれてしまいました。

色々感想もあるのですが、特に考えてしまったことが、坂本竜馬のような人物への世間の評判です。

今でこそ、こうして彼をヒーローに描いた小説もあり、漫画も(たしか)あり、「坂本竜馬」といえば無条件にポジティブなイメージ一色です。
しかし当時は、彼のような人はどんな風に世間に思われていたんでしょうか?

薩長同盟とか大政奉還とか、当時の常識から言えば「とんでもない」規格外の構想を打ち上げながら、本人の実態は一介の浪人。
今でこそ彼の構想が近代的で、後付けで考えたらその通りになったということで、始めからバイアスがかかったプラス評価になりますが、同時代のヒトから見たらどうでしょうか。

徒手空拳の若者が世の中をひっくり返すような放言を繰り返す。
何となく現代のホリエモンとか、楽天の三木谷社長と同様に批判を受けたか(もちろんレベルの違いはあれ)、あるいはもっとひどいかもしれませんね。
ホリエモンや楽天は直接よく知らないのでなんともいえませんが、坂本竜馬の同時代にも坂本竜馬の亜流みたいな有象無象がたくさんいて、大法螺を吹いていたんじゃないでしょうか。

そういう玉石混交の中で歴史に名を残すためには、誰もが納得するだけのぶっちぎりの結果を出すか、名を残すよう上手に立ち回るか、それなりの技が要求される気がします。
交渉術もそのサバイバルのための一手段というところでしょうか(強引か?)。

<24-1>頭に血が上っちゃうんですが・・・

2005-11-21 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
交渉に限らず、他人と話をするときに意見が食い違い、相手の無理解に腹が立つことはよくあると思います。
こちらが腹を立てて相手をなじれば、相手もまた機嫌を損ねて感情的な対立はエスカレートするでしょう。
交渉を有利に運ぶためには、感情に囚われることは大きなマイナスになってしまいます。
今回は、こうしたイライラにどう対処すべきかを考えてみたいと思います。

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-なんでこんな簡単なことが分からないんだ!
-そんなわけないだろう!
-これ以上話しても時間の無駄だ!

こんな言葉が喉もとまで出てくることはないでしょうか。

交渉のように双方が自分の都合の良いように話を導こうとする場合には、なおさら相手の頑強さに腹がたってきます。
わざと話を理解できなかったふりをしたり、わざとこちらの言ったことを軽んじて脅しをかけてきたり。
普通の会話以上に、相手への思いやりなどかけらもない言動が平気でとられるのが交渉です。
こうした相手の態度に加えて、話が同じ部分で平行線をたどり一向に進まなくなると、時間ばかりが過ぎてますますイライラが募ることにもなります。

どうしてヒトは頭に血が上ってしまうのでしょうか?

一口に「怒り」といっても色々なタイプがあり、それが引き起こされる条件も多様です。
とはいえ、怒りが生じる源泉を考えてみると、主なものの一つに「意外性」が挙げられるでしょう。
すなわち、ヒトは自分が予期していなかったこと(「意外なこと」)を突然突きつけられると、内容はどうあれムッと不快を感じるのです。
増して、突然突きつけられるものが相手からの攻撃的な発言だったりすると、不愉快さもひとしおです。
テレビのドッキリカメラなどでは、突然のイタズラがやらせだと分かってもプロの出演者は笑ってすませますが、普通の生活で同じことが自分に起こったなら、いくら他愛ない内容であってもかなりのヒトは腹が立つのではないでしょうか。

交渉で「意外性」から腹が立つ場合、こちらの頭の中に相手に対する無意識の(勝手な)前提があるケースが多いものです。
例えば「この交渉相手はこちらに協力的だろう」と思っていて、いざ交渉に入ったら強硬な態度で要求を繰り返されたりしたらどうでしょう。
或いは、「前回の交渉で相手もA案で合意したから、今回は細かい手続きを話し合うだけだ」と思っていたのに、相手がまたゼロから交渉してきたらどうでしょう。
いずれのケースも腹が立つでしょうが、こちらが楽観的な見通しをあらかじめ持っていればいるほど、かえってますます怒りが激しさを増すでしょう。

では、どうしてこうした「意外」な結果が出てきてしまうのでしょうか。

(第24回続く)

免許の更新

2005-11-20 | 雑記
最近免許を更新しました。

前から思っていたんですが、免許の更新ってかなり奇妙な体験ですよね。
筆者はほぼ5年前に北海道の誰もいない田舎道で時速80キロで走っていたとき、道脇の茂みに隠れていたネズミ捕りにひっかかり、たまたまゆるいカーブだったので制限速度30キロだとかで、免停になりました。
これ自体その速度制限に何の意味があるんだろう?という感じですが。

もっと変なのは、その違反があるために、またほぼ5年たった今回も違反講習(二時間)を聞かなければならないというのです。
その間に一回免許を更新し、その時違反講習も聞きました。
その後は完全に無事故無違反。
規則上丸5年以内にある程度以上の違反があれば違反講習、ということらしいですが。

この講習というのが、やっている側も大変なんだろうな、とは思いますが、ちょっと不毛ですね。
今回は道交法の改正が去年あった、とかで一応新しい知識も少しだけありましたが。
例えばビデオでいいから佐藤琢磨さんでも出演して「F-1ドライバーが教える安全運転のワザ」とかやってくれれば、もう少し興味をもって聞ける気がします。

とはいえ一方で、天気の良い日に昼間から教室にこもって聞きたくない話を聞いていて、とても懐かしい感じがしました。
そう、中学や高校の頃は、こんな風に授業が終わるのを渇望しながら、でも仕方なく机でじっと我慢したりしていたなあ、と思い出しました。

あの頃は毎日そんな風にすごしていたわけで、考えてみたらその頃の自分を褒めてやりたくなりますね。

<23-2>アクティブリスニングってなに?(2)

2005-11-17 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
アクティブリスニングの概念は、「自然状態で普通にやっていてはリスニングはできない」という発想から出発しています。
受動的(パッシブ)に話を受けようと思っていてもつい自分の考えを差し挟んでしまうのが人間だからです。

そこで次のような3つの原則を受け入れることがアクティブリスニングの考え方になります。


(1) 相手に聞いてもらうには、まずこちらが聞く耳を持つ必要

話がうまくいかなくなると、こちらも相手の話を聞けず、それを見て相手がさらに態度を硬化させるという負のサイクルが働きます。
そうして時間だけが無駄に過ぎてはこちらにとっても大きな損失です。
これを正のサイクルに持っていくには、まずどちらかが規範を示す必要があります。
こちらが話を聞く耳をもてば、多かれ少なかれ向こうも話を聞かなければならないプレッシャーが生まれるのです。

(2) 相手に「話を聞いてもらった」と思わせた方が勝ち

論争している相手の話を無条件に聞くことには誰しも抵抗があるものです。
しかし多くのヒトは「自分の話を聞いてほしい」という欲求を強く持っており、増して話が熱くなってくれば話の内容以上に、とにかく今この場でその欲求を満たすことがメインの動機になってきます。
逆に言えば、話さえ聞いてやれば多くの相手はこちらの想像以上に満足感を持ち、高ぶった感情も収まるものなのです。
相手の感情をコントロールする手段として、これほど有効な武器を放っておくのは勿体ないと考えるべきです。

(3) 相手の話を聞くことは学習の機会や情報の宝庫

特に交渉では、相手に情報を引き出させれば出させるほど有利になります。
相手が自らそうした資源を惜しげもなく提供しようというのなら、ありがたく頂戴すべきです。
交渉のような勝ち負けのある会話でなくても、相手の話を学習の機会と捉え、幅広い好奇心を持つことは決してマイナスにはならないと考えられるでしょう。

一方具体的な手順としては、アクティブリスニングは三つのステップから成ります。
3まで至ればまた1に戻るというループで会話を続け、相手の話を引き出すわけです。
簡単にまとめると次のようになります。


1. 承認

相手の言っていることをそのまま受け止めます。
「なるほど」、「そうですか」、「分かります」といった表現です。

重要なことはここで相手の言った内容に対する批評や判断をまじえないことです。
相手が発言してこちらがそれを聞いた、という事実を承認してあげるわけです。

2. 言い換え

会話の接ぎ穂となり、またこちらの理解を確認する方法としてはパラフレーズ(言い換え)が有効です。
「仰ったことをまとめるとXXということですよね」といった表現です。
繰り返しがくどく思えるかもしれませんが、的を得た言い換えであれば相手はむしろポジティブな感情を持ちます。
さらに要約や表現の仕方を微妙にコントロールすれば、こちらが話題をコントロールする主導権を握ることができます。

3. 質問

とりあえず今相手の言ったことを聞けたなら、関連する質問で話題を深掘りしてあげることが有効です。
「YYは具体的にはどういう意味ですか?」とか「ZZの点はどう考えますか?」といった表現です。
的を得た質問はこちらの「聞いている」という姿勢を印象付け、また相手に話題を与えさらにしゃべる機会を与えるので満足感が高まります。
さらに質問する内容をコントロールすれば、自分の聞きたいこと、話したいことの方へ話題をコントロールすることもできます。

3まで至ればまた質問への回答が帰ってくるので、これに1の承認をしてプロセスを繰り返してやればよいわけです。

コミュニケーション手法や話し方は、それらがあまりに日常的なためこうしてハウツーにまとめると奇異な感じがするかもしれません。
しかし「何もしなくてもできる」と自分を過信していては、誰もが陥る悪いクセを踏襲するばかりになってしまいます。
そうした意味では、「自分の意識次第で自分の話し方が大きく変わる」という認識をモノにすることこそ、こうした手法の本当の価値なのかもしれません。

ここまで交渉でのコミュニケーションを扱ってきました。
しかし現実では相手との話し方を工夫しようにも、頭に血が上ってそれどころではなくなる、という場面も多いかと思います。
そこで次回からは、交渉で自分の感情にいかに対処するか、を考えていきたいと思います。

<23-1>アクティブリスニングってなに?

2005-11-14 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
コミュニケーションのハウツーは世の中にたくさん出回っています。
ビジネススクールの交渉論も基本的には「自分でそうした本を読みましょう」というスタンスでしたが、アクティブリスニングという概念は特に紹介されていました。
そこで今回はこの考え方をみてみたいと思います。

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-なんで話がかみあわないんだろう?

交渉に限らず誰かと話しているとき、誰もがこうした苛立ちを感じることがあると思います。
会話を円滑に進める技術があれば、いろいろな場面で非常に役に立つでしょう。
特にお互いの利害が絡んだ真剣な話し合いではそうしたワザがとても重要になります。(たとえば交渉のように)

では、話がかみあわないのはどうしてなのでしょうか?

話している内容が本当に支離滅裂な場合も時にはありますが、多くの場合話しのキャッチボールが成立していないことに原因があるようです。
話がスムーズに進まず喧嘩になった時を思い浮かべてみてください。
例えば、次のような発言をしてしまうことはないでしょうか。

「その考えは間違っているよ」
「そっちの言うのも分かるけど、こっちは他にやりようがないんだ」
「君は本当はこうすべきなんだよ。まず…。次に…」

どれも赤提灯に飲みに行ってクダをまいている時に出てきそうなセリフです。
「こんなこと自分は言わない」と思っているヒトも多いでしょう。
しかし何かの拍子にこうした言い方はひょいと顔を出すことがあります。
なぜなら、何かを強く主張したりアドバイスをして聞かせる事は誰にとっても大きな満足感をもたらすからです。
相手の話を聞いてやるつもりでも、いつの間にかこちらばかりが意見を主張し、言いたいことを言ってさっぱりしたと感じていることがあるものです。あれこれアドバイスした方からすればそれでも良いでしょう。
しかし話を聞いてもらう方からすれば話し足りない気持ちが残りますし、自分の意見が反映されないアドバイスを心から受け入れるのはとても難しいことです。

結果として聞いてもらうつもりだった方は「分かってもらえない」「どこか話がかみ合わない」と感じ、その不満が会話をさらにぎくしゃくさせていくものなのです。相談事のように明確な話し役/聞き役が決まっているケース以外でも、こうした感覚が積もればは話し合いをすれ違いに追い込む元凶になります。

相手の話をきちんと聞いてやることは、話を「かみ合わせる」上でとても重要です。
そして相手の話を聞く上で典型的な障害は、上に述べたような誰もが持つクセだと言えます。
具体的には、

1. 断定(「その考えは間違っている」)
2. 自己防衛(「こっちには他にやりようがない」)
3. 問題解決(「君はこうすべきだ」)

といったスタンスが過剰なことが問題なのです。
しかし人間誰しもこうした行動を自然に取ってしまうクセをもともと持っているので、自然な状態ではこれらを排除するのは非常に困難です。

ではどうすれば相手の話をうまく聞けるのでしょうか。

(第23回続く)

野生の思考

2005-11-13 | 雑記
掲題の本を読んでいます(みすず書房)。
1960年頃に書かれた、クロード・レヴィ・ストロースの科学評論です。

ストロースといえば、構造主義の旗手として有名な、フランス戦後思想史の星です。
この本は文化人類学者である同博士が、「野生」「野蛮」という概念について、特に「未開人」とされる様々な民族を例に論じた本です。
基本的には、

-『野蛮』という概念は西欧人が勝手に決めたものだ
-だからある文明を外部から勝手に『野蛮』だと定義するのは無意味だ
-『野蛮』とされている文明には素晴らしい『野生』の知恵がある
(フランス語だとsauvageでどちらも同じ単語)

といった視点から、様々な土俗習慣や文化の差異を論じています。

中国人や昔のアジア人から見たら、ヨーロッパ人こそ南蛮人だったわけで当たり前だろこのやろうという議論はさておき。
面白いと思ったとっかかりは、「モノの名前は何で決まるか」という議論です。

詳しく言うと、例えば海の状態をあらわす表現。
海に住んで漁をする民族にとっては、多種多様な表現があります。
(例えば日本にも「なぎ」とか「しけ」とか、もっと詳しくあるでしょう)
一方で山に住んで普段海に触れない民族では、表現の数が少ない(あるいはそもそも無い)ことがよくあります。

歴史的には、ヨーロッパ人が世界を航海する中で、彼らにとって当たり前の概念が『野蛮人』にはなかったりするのをみて、

-知的に劣った民族は、言語で表現される概念が少ない

という理解が生まれていきます。
これに対して、文化人類学はそれを否定し、

-知的レベルではなく、生活上の必要性が言語表現の違いを生む
-現に、『野蛮人』は生活に密着したモノについては、文明人(西欧人)が弁別していないレベルまで複雑に分かれた言語を持っている

といった議論をするわけです。
こうした議論(『文明対野蛮』)が成立する根底にあるのは、前にも書いた自文化普遍主義なのでしょう。

-そりゃ民族によって単語の種類も全然違って当たり前だろう

とならないあたりが昔のヨーロッパだったんだろうなと感じました。
(今のフランスもまだそうかも知れませんが…)

松井ヤンキース残留か

2005-11-11 | 雑記
プロ野球もメジャーリーグも、今ちょうどFA獲得交渉や契約交渉のシーズンです。

で、ふと思いだしたんですが、この時期になると「代理人」という名のネゴシエーターが沢山でてきますね。
ヤンキースの松井選手の代理人であるアーン・テレム氏などは、凄腕交渉人としてけっこう有名なみたいです。

以前、交渉を仕事にしている例として、映画の「交渉人」(対テロリスト交渉)みたいな極端な例を出しましたが、考えてみたらこういうスポーツ選手の代理人の方がより身近な例かもしれません。

スポーツ選手の代理人は、金額が桁外れだったりするにせよ、やっていることは要するに給料や労働条件のネゴです。
そういえばビジネススクールでも、「給料ネゴシエーション・ワークショップ」と題して、卒業後就職するときにに条件を吊り上げるための練習をやってました。
特に欧米社会だと、MBA取って入社する際に諸条件は交渉次第なのが当たり前だったりします。
そのためか、みんな結構本気で練習に熱を入れていたような記憶があります。
そういう意味でも、優れたビジネスパーソンには当然のスキルとして高い交渉術が求められるのかな、と思いますね。

しかし松井選手なら交渉次第で何億円と年俸が変わってしまうんでしょうが、普通のヒトが給料交渉を相当頑張っても大して差がつかないような気も…
(「そんなヒマあったら働けよ」という感じでしょうか)

<22>コミュニケーションの4Pってなに?

2005-11-10 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
準備が終われば、さあいざ交渉の始まりです。
さて、交渉の場に実際に出てみると最初に試されるのは、相手とどういうコミュニケーションをとるか、です。
効果的な話し方についてはいろいろな手法やハウツー本が世の中に出回っていますが、今回はビジネススクールで特に取り上げていた「話し方の定石」について説明します。

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-どんな話し方をしたら交渉で有利になるんだろう?

MBAで交渉実習をしているときに悩んだ点です。
英語でやる難しさがあるのはもちろんですが、それ以上にどんな態度や姿勢を見せたらいいものか試行錯誤を繰り返したものでした。
ある講義では、「コミュニケーションの4P」なる概念を紹介していました。
それぞれの頭文字がPなので四つの要素を4Pと呼んで覚えやすくしてあります。
この四つの要素が、交渉でのコミュニケーションで忘れちゃいけない重要なカギだというわけです。
今回はこの4Pの概念を取り上げて、簡単におさらいして見てみましょう。

まず、4Pとはそれぞれ何でしょうか。
並べてみると以下の四つになります。

1. Purpose
2. Product
3. People
4. Process

以下、順に一つずつ見てみましょう。


1. Purpose (目的)

なんのためにその相手と話をするのか、そもそもの目的のことです。

相手と話す際には、どんなことを達成したいのかあらかじめ頭の中で明確にしておくことが重要です。
話し合いが終わって席を立つ自分を想像して、その時点で達成していたいゴールが何かを考えれば目的はおのずと明らかになるでしょう。
第二部で説明したキーワードに翻訳すれば、Interest(自分の利害関心)をあらかじめ整理しておくことと同義と言えます。

2.Product (成果物)

話し合いの結果として生まれる、具体的な成果物のことです。

合意案やその付帯条件とも言い換えられます。
話し合った内容を後々まで有効にするためには、具体的な条件に落としこみ、書類などの形にすることが大切です。
話し合いの席を立つ前に、議論した中身がはっきりとした成果物に落ちているか、再確認が有効でしょう。

3.People (参加者)

話し合いの参加者に対する関係作りです。

話し合いは多くの場合一度で終わるものではありませんし、またある交渉で得た評判は、良かれ悪しかれ将来の話し合いに影響を及ぼします。
要は、あまりに相手に嫌われる交渉を続ければ周囲は交渉を避けたり容赦なくえげつないやり方に訴えてきますし、相手に好かれていけば先々も譲歩を得られる可能性は高まるのです。
話し合いの直接の目的や成果に加えて、一方で相手と良い関係が築けているかは常に横目で見張っておくべきです。

4.Process (手順)

最後に、話し合いの手順は非常に重要です。

何を、どこで、いつ、どのように話すかを決めることは円滑な議論に不可欠です。
何より、以前にも説明しましたが、話し合いの内容とは別にまず手順を合意することで、お互いの協調関係を作り交渉をスムーズにする効果も見込めるのです。
また中級者以上の交渉ではこの手順をどちらが支配するかで勝負が決まってきます。
自分に都合のいい流れを作るには具体的な発言内容そのものよりも、物理的な背景(声の大きさ、発言の頻度など)も大きく作用するからです。

以上、4つのポイントを頭に入れて、次回はコミュニケーションの上級編である、アクティブリスニングについて話を進めたいと思います。

フランス大暴動

2005-11-08 | フランス暮らし
今フランスで暴動が起きているらしいですね。

ニュースで見かけると、結構大変なようです。
フランスに国際線の飛行機で行くと分かりますが、パリ北東にあるシャルル・ドゴール空港は市内から結構離れていて、電車で一時間近くかかったりします。
で、時々近郊電車でその辺りの車窓の風景を見ていたことがあったのですが、パリを取り巻く環状高速の外側から空港にかけて、近郊のスラム街や汚い団地に驚いた記憶があります。

当時は「フランスでもこんなバンコクのスラムみたいに汚い所があるのか」と思っただけでしたが、ニュースによるとそれがまさに移民の居住区のようですね。
パリ市内と空港を結ぶ電車(筆者も乗っていた)が今月からしばしば運休している、と聞くと事態が深刻なのかなと心配になります。

早く平穏になって欲しいものです。

<21-3>交渉準備のイロハ(3)

2005-11-07 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
5. Commitment(コミットメント)

ここまで1~4と順に利害関心・合意案・正当性・交渉外の代替案を見てきました。
これだけそろえばたいていの交渉には対応できそうです。
しかしながら、レベルの高い交渉人であれば忘れてはならない要素がまだいくつかあります。
何より大事なのは、交渉のゴール、つまり交渉が終わった時点で達成しておきたい条件を明確にしておくことです。
言い換えれば、交渉相手と自分がこの交渉を通じて何にどこまでコミットメントを持つか、目指すべきプランを練っておくのです。
こうすることで、交渉を通じてずっと「本来目指していたもの」から視点がぶれることを防げますし、その交渉が有利に進んでいるのかを把握することができます。
こうしたコミットメントを考える際に、目を配っておくべき要素は2つあります。

第一に、どんな項目について互いのコミットメントを発生させたいのかを明確にします。
これは2.代替案のところで説明した代替案の方程式を構成する一つ一つの項目と同じです。
例えば価格交渉であれば、価格・数量・納期といった項目が並ぶでしょう。
第二に、今回の交渉でどの位のレベルまでコミットメントを発生させたいのか、項目ごとに整理します。
ある項目について話し合うといっても、議論の行き着く段階にはいくつかレベルがあります。
細かく言えば、どんな交渉でも:

その項目について意見を表明する→合意案のオプションを出す→どの合意案が良いか意見を表明する→ある合意案で仮合意する→最終的に合意する

と5つ位のレベルがあります。今回はどこまでの結果を出したいのか、整理しておくことで交渉のゴール、そこに臨むスタンスがさらに明確になるのです。

6. Relationship(相手との関係)

交渉の争点(話し合いの内容)について準備が終わったら、あとは交渉を支えるプロセスの要素に視点を移します。
具体的にはまず、相手との人間関係をどんなものにしたいか考えるのです。
ここで整理しておくべきなのは、相手との関係のありたい姿と、そこへ至る道筋です。
実際に準備する際には、下記のようないくつかの段階を踏むほうが分かりやすいでしょう。

まず第一に相手との関係が現在どうなっているか、箇条書きにしてみます。
対立的か・協調的か、互いの理解がどこまで進んでいるのか、を考えていきます。
書き終えたら、それが理想的にはどのようにあってほしいのか、理想像を横に書いていきます。
次に、もし互いの理解や関係構築への積極性にギャップがあるとしたら、何が原因になっているか、阻害要因を箇条書きにします。
これらを元に、理想の関係を気づいていくにはどんな打ち手がありそうか考えておくわけです。

7. Communications(コミュニケーション)

最後に、話し合いの中でどんな調子でコミュニケーションをするか、も予め方針を考えておきます。
「コミュニケーションの準備」と言っても、内容は二つの意味があります。

一つには、議論の内容、つまりどんな筋立てで話を持っていくかのストーリーを考えることが挙げられます。
ここまで準備した各要素から、相手を説得するために議題の順番、こちらから提案するオプションを順番に書き下します。
一方で、コミュニケーションを構成するのは話の内容(what)だけではありません。
同時に重要なのは、どんな風に話をするか、つまりhowの部分であり、交渉の進展に非常に強い影響を及ぼします。
この部分については、準備そのものというよりも実際の会話の中で技が問われる動態的な部分が大きいので、次回以降この点にフォーカスを当てて議論を進めていきたいと思います。

椎名誠さん

2005-11-06 | 雑記
椎名誠さんのファンです。

昔からよく彼のエッセイや小説を読んできました。
(おそらく出版されてる単行本はほぼ全部読んだと思います)
仕事上がりで頭がすっきりしない時も、なんとなく読めてしまいちょっと面白おかしい感じが好きで、どんどん著作を買いあさってきました。

で、ふと気づいたんですが、彼が80年代から使っている文体や書いていることは、ブログの先駆的存在ではないでしょうか?

もちろん、彼の著作にはいくつか明確に分かれたジャンルがあり、中には怪奇的小説、SF小説などもあります。
でも、一番数が出ているエッセイ(とそれもどき)を考えてみると、内容は日常でふと気づいたことや、世間に対して一言物申すものや、読書紹介、日記そのものなど、まさに今ブログとして色んなヒトが毎日せっせと書いているものを先取りしていた気がします。

エッセイだったらどんなものでも、ブログにある程度似てるのは当たり前じゃないかと思われる方も多いかもしれません。
ただ、彼のエッセイは二つの点で特殊だと思います。

一つには、日記そのままの形で出すなど、私小説的な姿勢(というか私的な世界をそのまま書いているという演出)が徹底しています。
今でも出ている単行本で日記そのままの形式のものがいくつもありますが、それで本になる(売れる)というのは稀有なことじゃないかと。
もう一つには、20年前には決して今のブログのようなくだけた文体が一般的ではなかったことです。
当時は「昭和軽薄体」などと賛否両論で評論されていたと思いますが、当時のエッセイを見ても今のブログと共通した(というかお手本にすべき、というか)面白み/うまさがあふれていると思います。

「読んでも読まなくても大して変わらないんだけど、何となく読みたい」と思わされてしまう。
その辺がすごいところだな、と思います。