MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<25-1>感情をきちんと伝えるには?(1)

2005-12-27 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
前回は、話し合いで互いのすれ違いがどうして生まれるのか、を考えてみました。
現実には、こちらがいくらそうしたポイントに注意していても、相手がそれを無視して挑発的な態度をひたすら続けてくることがあります。
こちらの感情が全然理解されない。
相手は全然聞く耳を持たない。
そんな時はどう対処したらいいんでしょうか?
今回は、頑固で相手の感情など全然考えもしないヒトにどう対処するか、より具体的な視点から考えてみましょう。

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-こっちは公平に接しているのに、あいつは自分のことしか考えてない。
-仕方ないから、あいつとは無駄な言い争いせずに、言うとおりにしてやっている。

こんなことは身の回りにないでしょうか?
会社の上司や奥さん・旦那さん、友人など、人との付き合いの中でこうした場面に出くわすことは少なくないと思います。

多くの場合、人はあきらめてこうした場をやり過ごすことでしょう。
いちいち言い争いしてもどうせ相手は聞かないし、時間の無駄だ。
それなら、とにかく言う通りにしてやればとりあえずこの場は収まるんだろう。
一般的にはこうした計算が「大人の配慮」と呼ばれるのも事実かも知れません。
しかしながら、心の中の不満や不快な感情は簡単に消えるものではありません。
たとえその場をやり過ごせたとしても、我慢をした本人としては損をした感覚は否めないでしょうし、こうした不全感は積もり積もれば大きなストレスになります。

交渉においても、議論が白熱してくると、相手の感情などお構いなしに強硬な押し付けに出てくる場合がよくあります。
ヒトによっては、あえて「聞く耳を持たない頑固者」という役を演じきることで、相手から妥協を引き出そうと、意図的にそのように振舞う場合もあるのです。
そうした場面で、「仕方ないから相手の言うとおりにしよう」となっては、まさに相手の思うツボです。

では、どうしたらこちらが感じていることを相手にも理解させ、互いの言い分をきちんと俎上にのせた話し合いができるのでしょうか。

まず、例を挙げて考えてみましょう。


<例>

AさんとBさんはビジネススクールの同級生です。
毎日宿題に終われ、一生懸命勉強しています。
二人は親しい友人でもあるので、ノートの貸し借りや勉強の相談など、いつも互いに助け合っています。

あるときAさんが授業を欠席することになり、Bさんに代わりにノートを取ってくれるよう頼んできました。
忙しい中、わざわざ綺麗にノートをとって他人に渡すのも負担になります。
とはいえ友人からの頼みでもあり、BさんはAさんのためにノートの代書を引き受けました。

週末になり、BさんはAさんと約束して会うことにし、頼まれていた授業のノートを渡します。
ところがAさんの反応はBさんの予想を裏切るものでした。

A「折角のノートだけど、この最後の10枚は速記し過ぎて読めない部分があるね。」
B「ちょっと待ってよ。確かに完璧なノートじゃないかもしれないけど、大筋の部分は読めるだろう?教授が話すことを書き留めるのでやっとなんだから」
A「いつもならそれでも問題ないよ。だけど、今回はレポートを書いて出さなきゃいけないじゃないか。しかも期限は明後日の月曜日。この10枚がレポートを書くのに一番重要な部分だろう?」
B「まあ、それはそうだよ。だけど…」
A「だったら悪いけど、この10枚をタイプして読めるようにして送ってよ。今日中に。それから僕が急いでレポートを書いて、まあギリギリだな」
B「そんなこと言ったって…」
A「ノートは読めなきゃノートじゃないよ。僕はタイピストじゃないし、第一このノートは僕には細かい所が読めないから清書しようがない。じゃあ、僕は用があるからこれで。ノートは今日中に必ず、ね」

そう言ってAさんは席を立ちます。
Bさんは引きとめて文句を言おうかと思いますが、Aさんはどうせ聞く耳を持たず、一方的に自分の都合を並べるだけだろうとあきらめてしまいます。
Aさんはいつもこんな風だからです。
あきらめて自分がノートをタイプしてしまえばそれで済む。
とはいえ、今日は別の友人と飲みに行く約束があったのですが、約束はどうもお流れになってしまいそうです…

さて、BさんはどうすればAさんともっと上手にコミュニケーションができるのでしょうか?

(第25回続く)

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