壁際椿事の「あるくみるきく」

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『判断力』

2011年11月28日 | よむ

『判断力』(奥村宏著)を読みました。判断力や大局観を養うための、心構えや取り組みについて書かれており、非常にタメになりました。

とくに、1995年の大和銀子と住友銀行の合併を巡る誤報など、具体的な事例が多く取り上げられており、分かりやすかったです。

(以下、少し長いですが、孫引き)政府の審議会が経済学者を使うことはあっても、経済学者の意見を尊重する構えはまったくない。「省益」にかなう発言をする学者を、各省は御用学者に取り立てる。(中略)御用学者や業界団体の代表だけを集めて審議したのでは、公平さを欠くとの批判をさけるために、審議会が取り上げるテーマについて、日ごろ、省益に反する発言をしている学者をわざと審議会の委員にくわえる。

その際、どういう人選がおこなわれるのかというと、書いたものが論理的に誤っていたり、現実の一面しかみていなかったり、事実とを誤認していたりする学者を(あえて)選び出す。(中略)そして、論理的にか、データを用いてか、学者の反「省益」的言説を、完膚なきまでに官僚が反証してみせる。反省益派の代表を自認する学者は、こうして無条件降伏を余儀なくされる。そのあげくに、「こういう先生方にもご参加いただいた委員会におきまして、ごらんのような答申がまとまりました」という段取りになるのである。(佐和隆光『経済学への道』より)

これは経済政策について書かれたものでます。しかし、批判する学者や市民は多いのに、なぜ原子力行政が推進されてきのか。その理由が、分かりました。

(以下孫引き)経済学を学ぶ目的は、(中略)いかに経済学者にだまされないようにするかを習得するためである。(『マルクス主義経済学の検討』(ジョーン・ロビンソン著)

書かれた内容は、スゴイ皮肉ではありますが、一般的に「学問」の真実(批判精神の養成)ではありますね。

最後に。『動物牧場』などで知られるJ・オーウェルから。オーウェルは、ある経済学者(B)を批判します。Bの複数の著書で、書かれている内容がコロコロ変わる点を指摘し、続けます。「どの点をとってみても、Bが現に起こっている事態の継続を予言していることがお分かりになるだろう。こういう傾向は大きな精神の病であり、一部は臆病に、また一部は権力崇拝に根ざしている」(一部略)

自分で考える。とっても大変だけど、とっても大切なことですよね。老若キャリア、職業を問わず、ぜひ。


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