壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『マングローブ』を読んだ、その3

2010年08月31日 | 読書(文芸、フィクションほか)
革マル派の、組織維持のやり口はえげつない。例えば、JR東労組では、他の労組の職場の仲間とバーベキューに参加しただけで、組織破壊者と吊るし上げられる。そして、彼が運転中には嫌がらせをされる。同じ運転士同士、事故の危険は承知のうえでだ。果ては、信号隠し事件や置石事件も発生する。(以上、要約終わり)

背筋がゾッと寒くなりました。松崎明。本の出版時に70歳でしたから、今では何歳でしょうか? いまも隠然とした力を及ぼしているのでしょうか?

警視庁公安課の、革マルのアジト摘発も書かれていましたが、ほんと、ゾッとします。そこには、対立する労組の幹部などキーパーソンの電話盗聴録、自宅合カギ、その他がダンボールうん百個分も押収されたそうです。

革マル派と手を切った早稲田大学元総長、奥島先生のインタビューが巻末にありましたが、留守中に何回も自宅に進入されたそうです。

一方、ハワイでは、松崎邸近くの市民のコメントに、次のようなものがありました。「以前はお孫さんが見えて、いいおじいちゃん振りでしたが、最近はお孫さんも見えず、英語がしゃべれない松崎さんは、ここでの生活は相当苦労されているようですよ」。これでは、労働運動の闘士が、単なる好々爺です。何のためのハワイ別荘なんでしょうかね。

ま、松崎氏個人の話はさておき……。JR東日本といえば、都心の一部を除き、競合路線がなく、殿様商売。近年は、東京駅八重洲口のビル開発やエキュートなど小売事業が話題になるなど、プラスのニュースばかりですが、金儲けでなく、安全第一で運行してほしいものです。

『マングローブ』を読んだ、その2

2010年08月31日 | 読書(文芸、フィクションほか)
JR東労組の組合員が収める組合費の一部は、革マル派の活動費に流れているとも見られる。一般組合員は、そんな上層部の専横を知らされもせず、年間約9万円もの組合費を納めている(ちなみにJR東海やJR西日本の組合費は6~7万円)。

松崎の転向は、外向けのパフォーマンスで、実は革マルに在籍したまま。彼以外にも多くの革マルが、JR東日本に社員として、そしてJR東労組員として、まぎれ込んでいる。

こうした松崎の勝手な組織運営を批判する良識派は、JR西日本とJR東海の労組を中心に新組合としてJR連合を設立。現在は、箱根の峠を境に、JR総連とJR連合が組合員約7万で拮抗した勢力を保っている。

民営化への移行時に、松崎に弱みを握られたJR東日本では、労使癒着が進み、一介の労働運動家に過ぎない松崎が、社長の人事に口を挟むほどまで力をつけていく。常識派の経営層は、次々と左遷、パージされていく(この人たちが、西岡氏の取材源でもある)。もはや、JR東日本内での自浄作用は期待できない。

『マングローブ』を読んだ、その1

2010年08月31日 | 読書(文芸、フィクションほか)
「マングローブ」といっても、熱帯の海浜部に密生する樹木ではありません。極左・非合法組織、革マルの秘密部隊のコードネーム(暗号)です。

『マングローブ』(西岡研介著、講談社)を読みました。副題は、「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」。

1994年6月、『文芸春秋』の記事をめぐり、駅売店のキオスクが同誌の取り扱いを拒否。大問題になったことがありました。それ以降、マスコミ界のタブーになっている「JR東日本革マル問題」。これに改めて挑戦したのが、06年7月から始まる『週刊現代』の24回に及ぶキャンペーンであり、それを基に加筆されたのが同書です。

以下、概要です(記憶違いがあるかも)。
国鉄時代、労働組合は複数あった。その1つが、強力な国労で、もう1つが、非合法組織である革マル派ナンバーツーの松崎明率いる鉄労だった。松崎は革マルを抜けたと公表するが、その実は不明。国鉄改革に熱心な経営層は、国労と対立する鉄労の松崎を懐柔し、“鬼の国労”の力を削ぎ、民営化路線を突き進む。

一方、鉄労は、JR民営化後はJR東労組、その上部団体であるJR総連となり、松崎はその重職に就く。以降、JR東労組の関連会社や関連団体を隠れ蓑に、私的蓄財を進め、ハワイや沖縄、群馬県嬬恋に別荘を持つまでに。設立資金は、自分の金でなく、組合費なのに、関連会社の社長に、JR社員でも組合員でもない息子を据え付ける……。組合を私物化していく。

『弁護士が書いた究極の文章術』を読んだ

2010年08月27日 | 読書(ノンフィクション、実用)
●詩A
ぼくはつよい。
ライオンとたたかって、勝ったから。
もうじゅうを打ち負かす力がある。
だから、ぼくはつよい。

●詩B
ぼくはつよい。
ライオンとたたかって、負けたから。
もうじゅうを恐れない勇気がある。
だから、ぼくはつよい。

詩Bには、意外性があります。「つよい」と言っておきながら、「負けたから」なのですから。その意外性を説明するのが、「恐れない勇気」です。

『弁護士が書いた究極の文章術』(木山泰嗣著、法学書院)を読みました。同書によると、よい文章とは、読み手の予測を裏切らない文章です。意識するとしないに関わらず、すべからく読者は次の展開を予測して、文章を読んでいるから。なるほど。その通りでしょう。であれば、詩Aと詩Bをどう評価するか。

へそ曲がりの私は、意外性のある文章、ギャップのある文章に惹かれます。もちろん、意外性の根拠は必須ですが。例えば「リンゴ」を見て、「リンゴ」としか答えないなら、面白くないですね。「赤い」とか「甘い」とか「青森」とか、何らかのオリジナリティを期待してしまいます。

同書は、ご自身の文章術にのっとり、実用文の作文術について書かれた本で、非常に読みやすく、ためになる内容でした。簡単にすらすら読めます。実用文入門の方は、ぜひ。

ちなみに、『800字を書く力』(祥伝社新書)も、読者の予測という点を強調しており、なおかつギャップの効果についても言及していました。こちらも、ぜひ。

『蒲田行進曲』を見た

2010年08月25日 | 見聞きしたこと
役者バカ。まさに、そうでしょう。でも、愛すべきバカ。

先日、テレビ放送された『蒲田行進曲』を昨夜、録画で見ました。面白かった。役者とこじきは3日やったら辞められない、といいますが、あんな楽しげな生活なら、それもいいかもと思えます。ただ、精神の安定を保てるか。

エンディングもよかった。まだ未鑑賞の人は、ビデオ店へGo!