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拾い読み★2012-207≪コラム記事≫

2012年07月25日 18時30分35秒 | マリーンズ2011~15
【野次馬ライトスタンド】
26万円の超高額チケットが即完売!千葉ロッテの奇抜なアイデアに学べ。


 7月9日。この日、プロ野球界の常識を覆すチケットの発売が、パ・リーグ首位を走る千葉ロッテマリーンズから発表された。

「超ゴージャス観戦プラン ~2012 この夏 最高の思い出をQVCマリンフィールドで~」と題された8月28日vs.東北楽天戦のチケット。何がスゴイかって、1試合のチケット代がプロ野球史上最高額“26万円”という超高額のシートなのである(1席限定、4名までのグループ購入も可能)。

 通常のマリンシートなら丁度100試合分の値段に相当するこの前代未聞のチケット。そのゴージャスすぎるサービス内容は以下の通りだ。

【その1】 「ロッテシティホテル錦糸町」東京スカイツリーと東京タワーを眺める事が出来るデラックスルーム「リュクシー」にて観戦当日から一泊二日で宿泊。
【その2】 ホテルから球場への送迎はハイヤー。VIP気分でゆうゆうと球場入り。
【その3】 試合前にグラウンドレベルでの練習見学。
【その4】 試合開始後はQVCマリンフィールドのVIPルーム(一般販売なし)「Marines Dream Saloon」にてご観戦。
【その5】 さらに試合中はあなたのお側にMr.マリーンズ、初芝清氏がお付き解説者として、片時も離れずにあなたのためだけの解説をしてくれます。
【その6】 試合に勝利した際はヒーローインタビュー終了後、ヒーローの選手と一緒にお立ち台にて記念撮影を行えます。

ナマ解説の初芝氏は蝶ネクタイ姿で大サービス!?
 どうであろう。これを高いとするか安いとするかは、人によって意見が分かれるところだとは思うが、今話題のスカイツリーに、グラウンドに降りての練習見学やお立ち台での記念撮影、そしてロッテの生ける伝説・初芝清氏を試合中の2~3時間独占できるというのは、ひと夏の経験としてはあまりにも衝撃的かつ斬新すぎる。

 ちなみにその初芝氏。このプランに起用されて「当日はやっぱり蝶ネクタイで行った方がいいのかな?」と球団関係者に相談するほどノリノリだとか。以下、初芝氏のコメント。

「ゴージャスプランの商品サービスに入れていただき、光栄です。当日は1グループの方のためだけに、野球の真面目な話・裏話・解説、なんでも結構です。お客様のリクエストに応じたお話をさせていただきます。野球観戦が盛り上がり、夏の素敵な思い出を作っていただけるよう私・初芝清は頑張ります!」

超高額チケット完売に見る野球観戦の新たなカタチ。
 そんな初芝氏の気合いが伝わったのか、チケットが発売となった7月11日午前10時。発売開始1分でこの超高額チケットは完売。その後もチケットを求める電話が殺到したというから凄まじい。

 このチケットを購入したラッキーでリッチーな御仁は、東京都調布市在住のご夫婦と奥さんの母親、ご主人の妹の4名。前代未聞の扉を開けたマリーンズファンのご主人からはこんなコメントをいただいた。

「妻の母親を日ごろ、旅行に連れて行っており、その中で今回のプランを知り、VIPルームでのんびり野球観戦してみたいと思い、申し込みました。注目されたプランなので、野球ファンとして予約をとれたことに、とても舞い上がっています」

 右を見ても左を見ても、二言目には不景気不景気と辛気臭い発言が出てしまう現代ニッポンにおいて、この高額シートの発売&一瞬で完売という事実は、近年多様化するプロ野球チケットに新たな流れをもたらす可能性を作ったといえるだろう。

 そして、もうひとつ。かつては初芝氏の応援歌の節に乗せて一部ファンの間で「ロッテの夢は観客動員100万人」と自虐気味に歌われていた川崎時代からの不入りの時代を思えば、1試合26万円のシートに購入者が殺到したことは、千葉に移転した後のマリーンズがそれだけ魅力的なチームになった証でもあるのだろう。ガムを貰って喜んでいた昔日の川崎球場を思えば実に感慨深い。

前代未聞のイベントを次々に仕掛ける千葉ロッテ。
 今回の超ゴージャスチケットにしてもそうだが、毎度毎度、千葉ロッテマリーンズという球団が仕掛けてくるイベントには唸らされるものが多い。ユーモアとウィットに富み、時に感動的に、自虐的に、野球初心者でも楽しめるものからコアすぎるファンの琴線にも触れる企画を世に送り出し続ける、その姿勢には頭が下がる。

 今シーズンのイベントを見ても、前代未聞のオンパレードだ。4月18日の東北楽天戦ではイニング間に落語家・桂米多朗氏が野球にちなんだ落語を披露してくれる「落語付きチケット」」(1万円。パーティールームで特製幕の内弁当と飲み放題付き)を販売。

 5月10日の北海道日本ハム戦。相方のひとりが千葉県出身という漫才師「ナイツ」による「漫才付きシート」(1万円。パーティールームで料理と飲み放題付き)は、雨で中止になったものの、イベント自体は実施。好評を得たことから、ナイツはこの8月29日に試合終了後にグラウンドで漫才を披露するほか、夏休みのスタジアムにおける注意勧告のナレーションを担当するのだとか。

「プロ野球とは非日常的な空間であるべき」(球団広報)
 さらにこの夏休みの企画では、もはや夏の風物詩となった12球団イチの300発の花火を今年も打ち上げるほか、ロンドン五輪に対抗して毎試合前に「マリーンズグランプリ」というファン参加型の「なんらかの1位」を決定する日替わりイベントを開催するのだとか。

 何をするかといえば、お笑い芸人の360°モンキーズの杉浦氏(イースラーの人)を特別審査員に招いて「マリーンズモノマネグランプリ」(7月27日)だったり、マリン名物とでもいうべきか、ウグイス嬢が放つ独特の「サブローーーー」コールにあやかって、誰が一番「サブロー」を長く叫べるかを競う女性限定の「サブローグランプリ」(29日。勝った人はスタメン発表もできるらしい)をやったりと……とにかくまぁ、この球団は実にユーモアとウィットに富んだ企画をよくも考えつく。

「いろんな方面から『よくやるねぇ』と言っていただきますが、僕らとしてはまだまだですよ。貪欲に貪欲に、全球団職員が昨日よりも新しく面白いことを作っていこうと日々アイデアを出しています。超高額シートなどの企画も、観客動員に直結するものではないですけど、話題性を提供し一般のお客さんにも『マリンでは面白いことをやっているな』と思ってもらう狙いがありますからね。プロ野球とは非日常的な空間であるべきであり、球場とは日常のストレスを発散しにきていただいている場でもあるので、夢のある商品、時に奇抜で面白おかしい商品があってもいいとも思いますしね」(広報グループチーフ梶原紀章さん)

OBが専属で解説についてくれる“プレスシート”も。
 バレンタイン監督の2期目となった'04年あたりから、球団改革と並行してファンサービスを充実させていった千葉ロッテ。奇抜なアイデアと「面白そうだと思ったことには挑戦してみる」という実行力、選手の協力体制などもあって、今やQVCマリンは、イベントは面白いわ、メシの種類は豊富だわ、ビールがウマイわ、風は強いわ、岡田は飛び回るわの、ボールパークの名に相応しい夢とエンターテイメントが溢れる野球場となった。

 ライトスタンドは今日も今日とて大入り。だが、その熱すぎる応援故にマリン=ライトスタンドと盲目的に捉えてしまっていた筆者のように、見落としていたことが意外とある。例えば、バックネット裏、里崎の構える真後ろにある記者席を改造したプレスシート(1万2000円~)では、元祖Mr.ロッテ・有藤通世氏などのOBが専属で解説についてくれるということ。10人で観戦できる個室のパーティールーム(6万円)やらオープンデッキシートを併設したバー「バル・エム」なんてのがあること。ついでに言えば、それらは意外と空いているということ。

多彩なアイデアで勝負しても、観客動員数は減少傾向に。
 そして、最も意外だったことは、それだけの多種多様な仕掛けがあり、26万円のチケットにも殺到する熱心なファンがいるにもかかわらず、観客動員数は'05年の日本一、'07年の約170万人をピークに減少傾向にあるということだ。

 昨年の観客動員数は推定約130万人。地域意識の薄い首都圏近郊チームの難しさ、最下位に沈んだチーム成績、3月に起きた震災が湾岸地域に及ぼした影響などの要因が考えられるが、外から見ていると何故この球団の数字が伸びてこないのかは疑問に思えてしまう。

「ライトの席取りでいつも苦労しているのであんまり感じなかったですけど、確かに内野席やレフト側はあんまり入っていないような気もします。球団がいろいろやってくれているのは有難いと思いますし、マリーンズ自身も本当に面白いチーム。僕の周りはみんな熱狂的なマリーンズファンだし、球場に来たことない人を連れてくれば、一発でマリーンズファンになってくれるんですけどね。千葉の中心部にファンが固まっているのか、球場が駅から遠いのか……何が原因なのでしょう」(稲毛区・金澤さん)

地元の「千葉色」をアピールするチバチバしい球団運営。
 千葉移転20周年という節目の年を過ぎたマリーンズは、今シーズン改めて球団としての方向性を再提示した。

 それが、「Thanks 20 years “ALL for CHIBA” シリーズ 」である。

 今季、マリンを訪れた人は「やっぱりちーばーちーばーこのばーしょーが大好きさ♪」というフレーズがヘビーローテーションで繰り返されているのを耳にしたのではないだろうか。この曲「千葉、心つなげよう」は、「Thanks 20 years “ALL for CHIBA” シリーズ」のひとつとして、球団の枠を超え「千葉の人たち全員が歌える曲」という大きな志の中から生まれた。球場以外でも、ローカルのチバテレビやらで頻繁に流れているとか。

 そう、今季のマリーンズは「千葉」なのだ。いや、'92年の移転以来ずっと千葉の球団として地域に根ざした球団運営を目指してきたのではあるが、今年はより一層「千葉感」が色濃くなったというのが正しいか。

 その軸となる「Thanks 20 years “ALL for CHIBA” シリーズ 」(6月~9月の各球団との全5試合)は、地元千葉への「今までの感謝の気持ち」と「今後も千葉とともに闘う思い」を前面に押し出した企画であり、先の楽曲の制作をはじめ、21年目で初のCHIBAユニフォームを発表したり、マリーンズ版エアバット『ちバット』での応援を作ってみたりと、実にチバチバしい試みを続けている。

移転騒動もあったけれど……ロッテの千葉愛は本物だ!
「正直、この企画を聞いて物凄く嬉しかったです。数年前には『マリーンズが千葉から移転する』みたいな報道が聞こえてきて、心中穏やかではなかったですからね。今年、球団として“千葉とともに闘う”と宣言してくれたことでモヤモヤが晴れました。歌も郷土愛を喚起させてくれる内容ですし、CHIBAユニフォームもシンプルでいい。先日も同僚が会社に着てきてそのまま球場に行っていましたよ」(習志野市・T村さん)

 しかし、何故今改めて千葉なのか。前出の広報・梶原さんは言う。

「これまでも千葉という地域に密着した球団運営を心がけてきましたが、20年という節目の年を過ぎて、改めて“地元に愛して貰える球団になること”が、球団を成り立たせる上で最も需要なことであるという思いを強くしています。千葉とひと口に言っても54の市町村がありますから、まだまだマリーンズファンが少ない地域も多い。今年は幼稚園まわりなどもしていますが、『千葉にはマリーンズがある』ということを知ってもらうために、もう一度原点に立ち返って、市町村ひとつひとつを周ることもできればと思っています。もちろん、優勝して千葉に明るいニュースを届けることが最大の地域へのアピールですけどね」

千葉県民620万人に愛される球団を目指して。
 一昨年、下馬評を覆し、シーズン3位からの「史上最大の下克上」を成し遂げた千葉ロッテ。そのスローガンとなった「和」が日本一の原動力となったように、マリーンズというチームは選手、球団、ファンが団結した時には恐ろしい力を発揮している。その逆もまた然りなのだが。

 その力を知るが故なのだろう。今季のスローガン「和のもと ともに闘おう!」は、未来を見据えた球団が本当の意味で千葉という地域と共に生きると覚悟を決め、その和を千葉県全体へと広げようと呼びかけているようにも感じる。

 夢のある野球場を目指し、千葉での21年目を戦う今シーズン。かつて、「観客動員100万人が夢」と揶揄された川崎の不人気球団は、今ならば何というだろうか。梶原さんは言う。

「ロッテの夢は千葉県民620万人、すべての人に愛してもらえるような球団です」

 千葉がひとつに団結した時、マリーンズは福岡にも北海道にもアメリカにも例を見ない、もっと非日常的に、バカバカしくも魅力的で面白いチームになる。その為にも「千葉」への誓いを改めた今シーズンの優勝は是が非でも成し遂げたいところだ。後半戦のマリーンズの「和」の力、そして千葉の人たちがマリーンズの「和」の中にどう巻き込まれていくのか、その動向にも継続して注目していきたい。

~村瀬秀信 = 文

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