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今、自分が出来ること。やれること。それを精一杯やっていかなくちゃ!!

コラム備忘録【1/16】

2021年01月17日 00時18分03秒 | マリーンズ2021
≪2021/1/16≫

「キャッチボールもしたくなかった」 ロッテ美馬が語る移籍1年目、2桁勝利の舞台裏

2017年に続き、自身2度目の2桁勝利も「キャンプ中はマジでやばかったです」

 コロナ禍により未曾有のシーズンとなった2020年。試行錯誤の120試合を戦い抜いた末、2位となったロッテは7年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。CSではソフトバンクの牙城を崩せなかったが、若い選手たちが独特の緊張感を味わい、優勝への想いを強くした意味は大きい。

 昨季チーム最多にして唯一の2桁勝利となる10勝を挙げ、先発陣を牽引したのが、美馬学だ。2019年オフに楽天からFA移籍してきた34歳右腕は、2017年以来、自身2度目となる2桁勝利について「メチャメチャ打ってもらったおかげ」と打線に感謝する。

「完全に援護してもらえたおかげ。楽に投げさせてもらって、なんとかリードを守れたので、勝たせてもらったっていうだけですね。相当ランナーを出していたからリズムは悪かったんですけど、『僕だけこんなに?』って不思議なくらい打ってもらいました」

 とは言うものの、ソフトバンク戦は7試合で投げて5勝1敗、防御率2.70という相性の良さを発揮。「なんだかんだで勝てていたのが自信になったのはあると思います」と振り返る。

 新天地での1年目。「若手投手を引っ張る存在になってほしい」という井口資仁監督の期待にも応え、プロ10年目で初めて肘に違和感を感じることなくオフを迎えるなど、全ては順調に進んだかに見えた。が、実は「野球について、人生で一番くらい悩んだ」シーズンだったと明かす。

「キャンプ中はマジでやばかったです。キャッチボールもしたくない。そのくらいバグりました」

 バグった原因は「考え過ぎ」にあった。アマチュア時代から怪我がちなキャリアを送っている美馬は、体に余計な負担が掛からないように「フォームはどんどんシンプルにするようにしています」という。よりよいフォームを求める中で昨オフ、自身の理想に近い形にたどり着いた。

 満を持して臨んだ石垣キャンプ。だが、新しいチームで迎える初めてのキャンプで気負いがあったのかもしれない。「これだ」と思うフォームにこだわり、繰り返し投げ続けるうちに、人知れず迷路に入り込んでしまった。

「キャンプイン当初はいい感じで投げられていたんですけど、そのフォームを追い求め過ぎましたね。新しい球団に来て『よく見せなきゃ。ちゃんとしなきゃ』みたいなものもあったと思います。いつもならシーズン中でも少しずつ投げ方を変えながら合うものを見つけていたのが、去年は考え過ぎて『このフォームで投げないとダメ』という感じになってしまった。

 みんなあまり気が付いていなかったかもしれないけど、ブルペンとか相当ヤバかったです。ブルペンキャッチャーの方々は気付いていたと思いますよ。キャッチャーが捕れないところに投げたのなんて初めて。人に見せられないくらいでしたから」


試合中に熱くなる美馬を絶妙に抑える、捕手・田村の冷静な声掛け

 2月末には早々と開幕投手に指名されたが、内心は「これじゃ投げられないなって相当焦ってました」と苦笑いで振り返る。どうにもこうにも思うような球が投げられない。右脇腹も痛めてしまった。そんな焦る右腕を、吉井理人1軍投手コーチは適度な距離感を持って見守った。

「ブルペンで酷い球を投げても、吉井さんは別に何とも言わなかったですね。『ダメだったら投げるのやめてもいいんやで』みたいな感じで、変に『こうした方がいい』『ああした方がいい』って言われることはありませんでした。ただ、ポイントでちょっとした一言をくれるんですよ。『ちょっとこうなってるかな』って気付かせるような一言を。そこを意識してみると『あ、なるほど』と思えることが多い。『どうしたらいいでしょう?』って聞くと『ああやってみたら?』『こうやってみたら?』と選択肢を提案してくれる。そういう距離感が良かったのかもしれません」

 コロナ禍で開幕が遅れたことも、迷う美馬にとってはリセットに費やせる貴重な時間となった。

「脇腹の治療もできたし、ようやく冷静に自分を見られるようになりました。それまでは、どこがダメなのか考えると全部がおかしく見えてしまって……(苦笑)。実際に開幕した後も、シーズンが終わるまでたまにヤバいなっていう時もありましたけど、キャッチャーのリードもあってなんとか凌げましたね」

 迷いは越えたものの、少なからず不安を抱えて迎えたシーズン。それでも2桁勝てたのは「キャッチャーのおかげ」とも話す。

「去年は、特にソフトバンク戦では同じことを続けると打たれるので、毎回何かを変えようと意識していました。『今回はフォークがダメだからスライダーでいこう』『インコースを攻めてみよう』っていうのが、うまくハマりましたね。田村(龍弘)のリードもありますし、柿(沼友哉)も分かろうとしてくれた。マリーンズで1年目でも、キャッチャーとしっかりコミュニケーションを取れたことは大きいと思います」

 一見すると温厚そうだが、マウンド上では「メチャメチャ感情的になっちゃうんです。出さないようにはしていますけど、何試合かはキレてましたね」と笑う。シーズン中には、思い通りにいかず熱くなる右腕のタイミングを見計らうかのように、田村が話しかけてきた。

「僕が熱くなると、冷静に『これがダメだったら、こっちにしましょう』とか、『バッターがこんな感じで来てますけど、次どうします?』とか、イニングの合間にうまいこと話しかけてくれましたね。ただ、アイツは基本、試合中ずっと喋ってるんですけど(笑)。それでも同じチームになってバッテリーを組んでみて、データもよく見ているし、すごく考えているなと思いました。

 キャッチャーが出すサインに根拠があれば、信頼して投げられるじゃないですか。ただミーティングで言われた通りにサインを出しているんだったら、『いや、俺はそれは投げられない』と思ったり、疑って投げてしまうことになる。でも、あそこまで考えて強気にサインを出してくれるんだったら『それでいこう!』って決意を持っていけましたね」


日本一を知る男の嗅覚が告げるタイミング「今年が勝負な感じ、しますよね」

 美馬が熱くなるのには理由がある。「負けると悔しいですからね、結局。なかなか簡単に片付けられないと思っちゃうんです」と言うと、こう続けた。

「143試合の中の1試合って考える人もいるかもしれないけど、僕は1試合1試合が勝負だと思っている。だから、勝ちたいんですよね。その気持ちがすごくあるんで。それでも冷静にやった方がいいんだって、去年勉強になりました。ただ最後、CSのソフトバンク戦は抑えられずに爆発しちゃいましたね(苦笑)。引き分けでも負けに等しい状況で、あそこで追いつかれたら相手を勢いづかせるだけだと思っていたので」

 ソフトバンクと戦ったCS第1戦に先発した美馬は、6回まで3-1と2点のリードを守っていたが、2連打と送りバントで1死二、三塁とし、同点の走者を残したまま降板。中継ぎが救援に失敗して同点に追いつかれると、ベンチで大いに悔しがった。怒りの矛先は、もちろん走者を残した自分に向いていた。

 2020年は悔しい締めくくりとなったが、チームとして今季に繋がる手応えも感じたという。

「飛び抜けて戦力が揃っていたわけでもないし、途中コロナで離脱する選手も出た中で、なんだかんだ耐えた。若手も育ってきているし、それを考えたら可能性があるチーム。僕もフルシーズンを戦い抜いて、ダメな時でも耐えられる投球で、しっかり勝っていきたいです。今年が勝負な感じ、しますよね」

 2013年には楽天で日本一を経験した男が持つ嗅覚は、今年が勝負だと感じ取っている。2010年以来11年ぶりの日本一に実現に向け、熱さと冷静さのバランスを保ちながら、マウンドで腕を振り続ける。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

(フルカウント)

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≪2021/1/16≫

ロッテ安田は“本物の4番”に成長できるか? 向上した変化球の対応と見つかった課題

2019年は2軍の4番として2冠王、2020年は1軍の4番へとステップアップ

 2020年のロッテを語る上では、シーズンの大半で4番打者を務めた安田尚憲内野手の存在は外すことができない。プロ2年目の2019年は2軍で4番を務め、19本塁打82打点でイースタンの2冠王に輝く活躍を見せた。昨季は開幕1軍を勝ち取ると、そのまま1軍の4番へとステップアップ。シーズン最終盤には打順を下げたものの、自身初の規定打席到達を果たし、21歳の若さで三塁手のレギュラーの座をつかんでいる。

 今回は、2020年のシーズンにおいて安田が残した各種の数字から、若き逸材のバッティングを分析。コース別・球種別の打率、打順ごとの成績、ポストシーズンも含めた今季の本塁打の内訳といった要素から見えてくる、安田の長所と課題に迫るとともに、若き4番が年間を通じて見せた奮闘ぶりを、いま一度振り返っていきたい。

 まずは、安田がこれまで1軍の舞台で残してきた数字について見ていく。過去2年間における出場試合数は合計17試合にとどまっていたが、昨季は全120試合中113試合と、大幅に出場機会を伸ばした。打率.221、6本塁打という数字はやはり4番としては物足りなさを感じるが、出塁率は.326、IsoD(出塁率から打率を引いた値)は.105。これらの数字からは、優れた選球眼を持ち合わせていることが読み取れる。

 選球眼についてより踏み込んだ数字を紹介すると、昨季の安田が相手投手に費やさせた1打席あたりの平均投球数は4.254となっている。この数字は、今季のパ・リーグで規定打席に到達した選手たちの中では、近藤健介、西川遥輝に次ぐ3番目の多さである。打席での粘り強さ、投手に球数を使わせるといった貢献度という面では、既にリーグ屈指のものを備えていると言えそうだ。





ラストバッターを務めた試合では、また違った存在感を見せていた

 次に、昨季の安田が先発メンバーとして出場した打順と、その打撃成績について紹介。4番での出場が87試合と最も多く、必然的にその成績も昨季を通して記録した数字と類似したものに。とはいえ、打率、出塁率、長打率、OPSといった各種の数字は年間成績をいずれもわずかに上回っており、多少の差とはいえ、4番に対して一定の適正を示していたとは言えそうだ。

 ただ、先述の通りにシーズン最終盤には4番を外れて7番に回り、最終的には9番も経験。その9番という立ち位置では、2試合以上に出場した打順の中では最も優秀な数字を記録しており、中でも出塁率は.429と、まさに出色の数字を残した。11月5日のソフトバンク戦では2死満塁から点差を3点に広げる貴重な押し出し四球を選び、後続の荻野貴司の2点適時打につなげたように、粘り強く上位につなぐ役割を果たしていた。

 また、途中出場では4打数無安打と1安打も放つことができず、代打としては活躍を見せられなかった。早い段階でレギュラーに抜てきされたこともあり、そもそも代打としての出場機会自体が少なかったこともあるが、安田は3打席以上に立って真価を発揮するという見方もできる。


走者の有無によって打率には大きな変化が

 続けて、塁状況別打率を見ていこう。走者なしが打率.160、走者ありが打率.285となっており、走者ありを細分化すると、走者一塁が打率.329、得点圏が打率.256という数字だった。このように走者がいない場面での打率はかなり低くなっていたものの、走者が1人でもいれば、その打率は.125も上昇。また、得点圏よりも走者が一塁にいる際の数字のほうが高く、その打率は.329と高水準に達していた。

 昨季のロッテは機動力を生かした攻撃を行うケースも多く、一塁走者がバッテリーに揺さぶりをかける中できっちりと狙い球を仕留めることができているこの傾向は、チームの主軸として頼もしい要素と言えるだろう。得点圏での打率もシーズン打率に比べて.035高く、4番に必要な勝負強さという点では、一定のものを示していた。

 その一方で、走者がいない際の打率の低さは気になるところ。当然ながら、初回が3者凡退で終わった場合は、続くイニングは走者なしの状況で4番からの攻撃が始まる。すなわち、今後も4番の座にとどまるためには、自らがチャンスメークを行うべき局面でも結果を残せるかが、重要になってくることだろう。持ち前の選球眼が生きる分野でもあるだけに、来季以降はこの課題を克服していってほしい。


重圧に負けず、常に自分のバッティングを貫けるか

 また、アウトカウント別の数字についても見ていくと、0アウト時の得点圏打率が.375、1アウトの得点圏打率が.289であるのに対し、2アウトの得点圏打率は.206と大きく落ち込んでいた。すなわち、比較的プレッシャーのかからない場面では勝負強さを発揮できているものの、チームにとってもそのイニングではもう後がないという状況になると、一転して数字を落としているということになる。

 自分が凡退したらチャンスが潰えるという場面でも、必要以上に気負うことなく自分のバッティングができるかが、もう一つの課題となってきそうだ。チームの主軸には単なる技術面のみならず、メンタル面でも高いレベルの安定性が求められる。来季以降はその重圧に負けることなく、あらゆる場面で自分のバッティングを貫けるようになれば、その存在はチームにとっても、より頼もしいものになるだろう。

 昨季記録した殊勲安打の数は16本で、チーム内では井上晴哉の18本に次ぎ、レオネス・マーティンと並んで2位の成績。内訳は先制打9、同点打3(うち1本塁打)、勝ち越し打3(うち1本塁打)、逆転打1となっていた。

 初回に先制のチャンスで打席に入る4番を務める機会が多く、先制打が9本と頭一つ抜けて多かった。同点打と勝ち越し打はそれぞれ3本、そのうち1本が本塁打と、この2つは全く同じ数字に。

 その一方で、逆転打はシーズンを通じて1本のみだった。同点打に比較して逆転打の数が少ない理由としては、チーム全体の打率が低く、塁状況を考えても2打点以上を挙げるチャンスがそこまで多くはなかったことや、安田自身の長打率がそこまで高くなかったことが考えられるだろうか。複数の打点を一度に稼ぐためには長打、特に本塁打の数が重要になってくるだけに、来季はさらなるパワーアップに期待したい。





得意な球種と苦手な球種、その傾向とは?

 続けて昨シーズン記録した、球種別の打率を紹介したい。投手の球種を8つに分類した場合、得意としている球種と苦手としている球種がそれぞれ4個ずつと、まさに二分されるような結果となった。打率.109と大苦戦を強いられたスライダーをはじめ、ストレート、シュート、フォークといった球種への対応には苦慮していたが、その中でもストレートを苦手としている点は、威力のある速球を投げ込んでくる投手の多いパ・リーグにあって、やや気がかりなポイントと言えるか。

 その一方で、シンカー・ツーシーム、カットボール、カーブといった球種はかなり得意としていることがわかる。カーブ・チェンジアップというブレーキの効いた球に対する反応に優れていることからも、緩急をつけた攻めにはしっかりと対応することができ、緩い球を捉えられるだけの読みと技術を持ち合わせていることが読み取れる。

 また、シュートに関してはやや苦手としているものの、カットボール、シンカー・ツーシームといった、速球に近い球速から鋭く変化するボールを得意としているのも見逃せない点だ。速い変化球への対応力に関しては優れたものがあるだけに、速球そのものに対するコンタクト力が向上してくれば、投手にとってはより攻めづらくなる打者となってくる。





昨季記録した7本塁打の内訳は、さまざまな面で興味深いものに

 先ほど紹介した球種別の打率に関連して、ポストシーズンも含めた、安田が2020年に公式戦で放った本塁打の内訳を参照。長所と課題が、また違った角度から見えてきた。

 表にある通り、7本全てが変化球を打って記録したものに。裏を返せば、速球を打ち返して本塁打にしたケースは、今季を通じて1つも存在しなかったということだ。パ・リーグの投手たちのストレートに力負けしない打撃ができるかどうかは今後長距離砲として覚醒できるかどうかを占ううえでも、非常に重要な課題となるだろう。

 しかしながら、この結果は安田の変化球を捉える技術の高さを証明するものでもある。苦手としているフォークを捉えて記録した本塁打も2本あり、ソフトバンクの千賀と西武の高橋光という、鋭いフォークを決め球とする投手から放っているという点でも価値がある。また、内角に入ってくる石川のパワーカーブを引っ張って本塁打にしたケースもあり、変化球であれば、一線級の投手の得意球を捉えられるだけの技量を備えていることがうかがえる。

 打球方向としては全てが引っ張りで、変化球を強くたたいて引っ張ることが得意と言えそうだ。ただ、8月9日のオリックス戦で見せた、左腕・山田の速球に対して逆らわずに弾き返し、レフトの頭上を越える2点適時打を放ったシーンに象徴されるように、逆方向に伸びる打球が全く見られなかったわけではない。そういった打球がより力強さを増し、スタンドまで届くようになってくれば、長距離砲としての幅もさらに広がってくる。





得意分野と課題が見える、今季のコース別打率

 最後に昨季記録したコース別の打率についても見ていきたい。内角高め、ど真ん中、真ん中低めという3つのコースに対しては、かなりの強さを発揮していたと言える。とりわけ、真ん中に入ってきた失投をミスショットせずに捉えることができている点は、勝負強さが求められる4番として頼もしいポイントと言える。また、内角高め、ひざ元のボール球といった厳しいコースの攻めに対して、臆することなく対応できている点もポジティブな要素だろう。

 また、先ほど紹介した千賀、高橋光から放った本塁打は、いずれも真ん中低めのフォークを捉えたもの。ボールゾーンまで落ちきらずにストライクゾーンに入ってきた変化球を、いわゆる高確率で長打にできる“ツボ”とすることができれば、相手投手にとっては追い込んでからも一筋縄ではいかない打者となることだろう。それに加えて、今季は苦戦したフォークに対する打率も、相応に改善される可能性が高まってくるはずだ。

 また、真ん中の高さに来る球に対しては、内角のボール球を除いていずれも打率.250以上を記録しており、他のゾーンに比べて得意とする傾向が出ている。その一方で、内角を除く高めの球にはいずれも打率.100台以下と苦戦しており、低めの球に対しても真ん中と、内角のボール球以外は打率.200台前半と、やや不得手としていた。

 外角の高めは打率.139と極端に苦手としており、高めに浮いた球を捉えきれていない。内角、真ん中に来る球についてはさほど苦手としていないだけに、外角攻めに対する対応が大きな課題と言えそうだ。同じ外角でも、真ん中の高さに来る球に対しては一定の数字を残しているため、アウトコースに対する対応力を総合的に上げていければ、より穴の少ない打者へと成長していけそうだ。

 それ以外の細かな数字に目を向けると、安田がレギュラーシーズンで本塁打を放った試合では6戦全勝。安田のホームランはチームにとっても縁起の良いものとなっており、いわゆる“不敗神話”が形成されている。来季もこの流れが継続するか否かに、注目してみる価値はあるかもしれない。

 左右別の打撃成績に目を向けると、対左の打率が.177、対右の打率が.243と、左投手のことをかなり苦手としていることが見えてくる。また、今季記録した本塁打のうち、左腕から放ったものは辛島のカットボールを捉えた1本のみ。先述の通り安田はアウトコースを苦手としており、左投手が投じる外角低めのボールへの対応力向上は急務と言えそうだ。

 それでも、8月20日のソフトバンク戦では、左キラーとして知られる嘉弥真新也投手の速球を逆方向に流し打って安打にし、サヨナラ勝ちのきっかけを作ったように、左腕の外角攻めに流し打ちで対応するシーンも散見された。パ・リーグには優秀な左のリリーフ投手が多く存在するだけに、来季は対戦内容と成績の両面で、左腕とのマッチアップに改善がみられるかが重要なファクターとなってくるだろう。


昨季の貴重な経験をさらなる飛躍につなげられるか

 21歳の若さで4番として抜てきされ、順位争いの重圧の中でチームの中心を務めた経験は、安田の今後の野球人生においても、大きな価値を持つだろう。だが、チームが激しい2位争いを繰り広げたシーズン最終盤に4番の座から外されたように、将来への期待を抜きにして単純な数字だけで判断すれば、4番打者に相応しい成績を残せていたとは言い難い。

 それでも、エース格の投手の決め球を本塁打にしている点をはじめ、重圧のかかる打席が多い中で冷静にボールを選べている点、走者がいる局面では優れた打率を記録していた点、緩い変化球に対してきっちりと対応できている点といった、今後に期待が持てる非凡な打撃センスの一端は、今シーズンの戦いを通じて着実に示していたことも間違いない。

 このオフに、昨季の戦いを通じて浮かび上がってきた課題へ取り組み、選球眼やブレーキングボールへの対応力といった長所はそのままに、打者としての弱点を徐々に減らしていくことができれば、今後は押しも押されもせぬ4番打者へと進化を遂げることも、十二分に可能なはず。この1年で得がたい経験を積んだ俊英は、この苦戦を糧にさらなる飛躍を果たせるか。安田が新たなシーズンで見せるバッティングには、あらゆる意味で要注目だ。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

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