むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

「SAPIO」インタビューでますます親中の色彩を鮮明にした李登輝

2007-02-20 23:52:23 | 台湾政治
2月14日発売の日本の右派系半月刊誌「SAPIO」(同28日号)が、右派系歴史作家井沢元彦氏による李登輝・前総統との「特別対談」をp6-10まで5ページにわたって掲載した。「前編」と銘打っていることから、次号にも続くらしい。
当日には入手していたものの、その後所用で論評が遅れたが、この対談で李登輝氏は、これまで台湾の香港系大衆週刊誌「壱週刊」、中国系テレビ「TVBS」、日本「産経新聞」2月12日付け7面長谷川特派員などで垣間見られた「中国擁護、陳水扁への憎悪」姿勢が、実に詳らかに、白日のものに曝された。その意味では私がすでにブログで指摘してきたことが、李登輝(もはや呼び捨てにする)の口で証明されたことになる。また、台湾に明るくないはずの井沢氏がここまで引き出した手腕には(思想的立場は違うとはいえ)敬意を表したい。

◆反日親中化した李登輝

ただ、李登輝「信者」はそれでもまだ目覚めないで、「李登輝先生は奥の細道の旅をおっしゃっている」などとして、李登輝擁護を続ける姿勢を示しているようだが、この対談での李登輝の発言は、明らかに日本・台湾軽視、中国擁護で、反日親中というべきトンでも発言に終始している。
それが明らかなのは、今回末尾の10ページ。
ここで、井沢氏は李登輝に対してしきりに中国批判の水を向けているが、李登輝はそれに乗らないどころか、中国政府を弁護するような発言さえしている。さらに「(台湾は)もう独立国家なんだから、中国との貿易もどんどんやればいい。三通どころか、メディアも宗教も文化も含めて四通も五通もやればいい」などと完全に中国資本の代弁をする始末だ。

◆中国共産党政権の視点で労働者の人権を無視

中国政府弁護というのは、「胡錦濤は江沢民に比べると、妙に落ち着いていて、口数も少ないが、やると言ったら、一歩ずつ着実に実行するタイプ」といった後で「彼が一番困っているのは地理的所得格差が広がっていること」などと、まさに中国共産党政権の視点と立場で「格差」を語っている。
それに対して、井沢氏は「解決できますかね」と疑問を呈して、批判の水を向けているのに、李登輝は中国の現状を新奴隷制と指摘しつつも、労働者の低賃金を「天から授かった贈り物のようにとらえ、海外の資本化がどんどん資本と技術を投資している。それが続く限りは中国経済は伸びていく」などと、まるで労働者の尊厳と人権を無視し、中国経済バラ色論を唱えている。そもそも李登輝は台湾の貧富格差を指摘して台連を「中道左派政党」に衣替えすると主張しているのではないのか?それにもかかわらず、ここでは労働者の労働三権を抑圧し、低賃金で搾取されている中国の労働者の状況には何の同情もせずに、資本家の立場で中国経済発展論を展開している。アホもいいところである。
さらに、ここで米国が中国人民元の引き上げ圧力を加えるなど中国経済に対する嫌がらせをしているという趣旨で、米国批判まで展開している。
もちろん、米帝の論理は身勝手で批判されるべきだが、それなら中国の労働者がいかに米帝などの国際資本によって酷使・搾取され、共産党政権が共犯となってきたことを指摘すべきだろう。
やっぱり李登輝はおかしい。これでは「中道左派」じゃなくて、中国共産党国家資本主義と結託する帝国主義者だ。こんなものは左派ではない。ドイツのシュレーダーと同じ社会帝国主義だ。
さらに、井沢氏は中国のモラル崩壊、所得格差是正政策ができないことを指摘しているが、李登輝は「海岸沿いの経済的に潤っている地域はみな(所得格差是正に)反対します」と涼しい顔である。
次に井沢氏は所得格差拡大で農民暴動の可能性を指摘すると、なんと李登輝は「今のところあれだけの軍隊と公安が睨みをきかせていて、警察がインターネットのコントロールまでやっているなかでは、少し長い目で見る必要があるかも知れません」と、矛盾を指摘して批判するどころか、日本の親中派と同じ「暖かく見守る」態度を表明している。

◆衛星破壊実験も弁護!

さらに噴飯物なのは、衛星破壊実験について「それは中国が世界に誇る、威張るための手段の一つ」と批判はまったくなく、むしろ「世界に誇る」などと賞賛するかのような言い種だ。
衛星破壊実験は明らかに軍事覇権・帝国主義膨張政策を志向するものであって、米帝の懸念表明はどうでもいいとして、これまで反米的だった韓国政府ですら、中国の軍拡志向に懸念を表明したくらいだ。それを李登輝は単に「世界に誇る手段」と述べるとは、完全に狂っている。「中道左派」や「台湾主体性」がどこに行ったのか?

◆中国資本の走狗

そして、最後には、「台湾は独立国家だから」として三通、四通、五通を主張する。ところが、台湾が独立国家だというのは、台湾国内でのみ通じることであって、中国は台湾を独立国家として認めておらず、「叛乱している地方政権」だから、将来的に併合する、と明言しているのだ。だからこそ民進党政権も、かつての国民党政権も、台湾の民意の大多数(特に庶民層)も、「中国が台湾の尊厳と独立性を認めない以上は、中国との広範囲な交流には反対する」として、李登輝のいう「双方向の交流」は進んでいない。
それが、中国の台湾に対する態度など忘れたかのように「独立国家なんだから、中国からどんどん来てもいい」などとしれっと発言する。きわめて危険な発想だ。
しかも、中国が独立国家だと認めている米国、日本、韓国、シンガポールだって、対中投資も先端技術は規制、さらに中国から資本や人の流入に関しては厳しい規制をしているのが現実だ。独立国家ですらそうである。まして、台湾は中国によって独立性を否定され、併合の対象となっている存在だ。しかもプロレタリアートほど中国に対して警戒と反感を抱いている。そうした他国の事情や台湾の民意を無視して「四通も五通もどんどん」という発言は、完全に中国の国家資本に取り込まれた、代弁者・走狗としての主張に過ぎない。
ここまで李登輝がしつこく中国資本開放論を主張する裏には、中国資本や観光関係業界から、何らかの利益供与があるのではないか、と勘ぐりたくなるほどだ。

◆身障者を侮辱する民主主義の破壊者

それから、憤慨すべきことに、総統夫人の呉淑珍女史が不当な国務機密費裁判に健康悪化で出廷しないことを取り上げて「へ理屈をこねていたずらに長引かせている」などと攻撃している。呉女史のわがままな性格はさて措くとしても、1986年に国民党政権の手によると見られるテロで、半身不随になって、体が弱いことは、台湾人ならみな知っていることだ。だから、呉女史が初公判で倒れたときには台湾人の間で同情が広がったくらいだ。
もともと李登輝が副総統をしていた時代に起きたテロ事件の真相を解明せず、したがって呉女史が身障者となっている気の毒な状況を無視して、「屁理屈」とは李登輝という人間はいったい、最低限の「人道」の精神も持ち合わせていない鬼畜かサタンのように冷酷な輩らしい。身障者への侮辱にもほどがある。
そんなことを主張するなら、先に自身が副総統としてテロに間接的にかかわってきた連帯責任を取るべきだろう。傲慢、勘違いも甚だしい。
しかも、米国でもフランスでも、そしてあのロシアですら、およそ民主主義国家においては、退任した指導者が、現職の指導者とその関係者をここまで罵ることはない。普通はおとなしくしているものだ。ブッシュは陳水扁以上にアホだが、その父親や対立陣営のクリントンが何か大声で批判をするだろうか?
李登輝は「台湾民主主義の父」という自らに与えられた称号まで踏みにじっている。民主主義のシステムと常識を無視して、破壊する民主主義の破壊者である。

◆キリスト者を騙り、信仰を悪用するのはテロリストと同じ心理

さらに、自身が陳水扁と違ってキリスト教という信仰と哲学があるから、公私混同をせずにちゃんとやってきた、などと自画自賛しているが、こうやってキリスト教を他人と比較して、他人を攻撃する道具として使うことは、新約でイエスが再三にわたって禁じ、諫めていることである。
信仰があることを、特にキリスト教を信じることが、そうではない他人に対する優越性のようにうぬぼれるのは、本当の信仰者とはいえない。そもそもこれまでキリスト教徒がそうでない者や身内に対して、どれほどの悪逆の限りを尽くしてきたのか。それをキリスト者として自省しない鉄面皮には呆れる。
それは、まさに十字軍をあおり、聖地とビザンツ帝国を侵害した愚か者どもや、イスラームを騙って無差別に人殺しするテロリストと同じだ。本当の意味での信仰ではなく、信仰を利用している不信心者というべきだろう。
しかも、そもそも信仰というのは本人の内面・内心の良心の問題であって、こうやってやたらとヒケラカスことが、私には理解できない。そういえばプロテスタント系の仲間にはやたら自分の信仰顕示欲が強い、変な人が多いようだが。
また、十字軍といえば、李登輝とそれを盲信する信者たちの言動を見ていると、少年十字軍を寓話化した「ハーメルンの笛吹き男」を彷彿とさせる。台湾のこの笛吹き男は「正名制憲」というラッパを奏でて、信者を催眠にかけながら、目指すのは中国との全面開放、中国擁護という死の道である。


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