むじな@金沢よろず批評ブログ

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台湾一部反日勢力による尖閣騒動がもたらした思わぬ効果

2008-06-21 17:35:03 | 台湾政治
今回台湾の一部反日勢力による尖閣騒動で、思わぬ効果がもたらされた。
今回の騒動は、最初から台湾にとって不利でしかないと私は直感していたのだが、予想以上に馬英九政権と外省人反日勢力の知能が低かったことで、台湾・台湾人と日本人にはマイナスだけがもたらされ、プラスになったのは日本政府だけ、という惨憺たる結果に終わった。
煽った当人たちは騒いだほうが日本も振り向いて交渉しやすくなると考えているようだが、一般人が妄動して政府の外交力が低下するだけだから、日本がこれで交渉に応じる可能性はさらに低下したというべきだろう。要するに、「騒げば勝ち」というのは狂ったショービニストの勝手な妄想に過ぎない。
そもそも騒ぎは一部の外省人が起こしただけで、大方の台湾人は尖閣問題には無関心で、むしろこの問題で日本との関係を悪化させるのは得策ではないと考えていた。そういう点では台湾市民社会は全体的には成熟している。
もちろん馬英九政権を選んだのは台湾人自身であり、その責任は負う必要があるとはいえ、馬英九の反日や外交を選んだわけではないのだから、今回台湾人に多くの不利益がもたらされたことは台湾人には気の毒だろう。

(1)戦争一方手前の外交手段を何の覚悟もなくもてあそんだことで、台湾が主権国家であることを自ら否定し、北朝鮮、あるいはヒズボラなど「ちゃんとしたテロ集団」にも及ばない、単なる海賊集団でしかないという印象を国際的に与えた。
(2)まして日中間で東シナ海ガス田共同開発の話が妥結し、韓国も内政の危機を外交に向けておらず、北朝鮮も最近はおとなしい中で、台湾だけが「突出」して狂っていたから、「台湾はまともな国家ではない、国家ですらない」というイメージが突出してしまった。そして、そうした東アジア国際情勢の空気も読めずに騒いだ馬英九政権と反日勢力の幼稚さ、知能の低さも突出していた。
(3)馬英九「先生」がこれを「主権問題」と言い張るなら、主権問題の交渉権は政府、外交部にあるのだから、一部暴徒の勝手な行動を政府が抑制すべきなのに(日本では尖閣に勝手に上陸した右翼団体を逮捕しているし、一般の漁船も勝手に操業できない、北方四島や竹島についてはなおさら)、それを放棄した時点で、馬英九政権の統治能力、外交能力の欠如を自ら証明した。
(4)台湾の対日外交の強力な窓口であった許世楷代表、日本事務会の蔡明耀、を更迭したり日本事務会を廃止したりするなど、みずから交渉のパイプを切ってしまって交渉力を低下させてしまった(戦前の日本と似ている)。
(5)「主権」を声高に主張するわりに、台湾の法令でも違法であるところの遊魚船の違法を最初に指摘しなかった。法律も守らないで、主権を主張できまい。
(6)日本に対して「主権」を声高に主張しながら、同時に行われた「両岸会談」では中国に対して「主権問題の棚上げ」を主張するという一貫性のなさ。しかも陳水扁政権が台湾主権を強く主張したことを批判して成立した途端に、主権を主張する矛盾。これで台湾国民の多くがそっぽを向いた。
(7)本来台湾の漁民が漁場としてきたことから、漁業権の問題であるところを、無意味に「主権」を強調して騒ぎすぎたため、日本政府が警戒して一帯の警備と防衛は強まる。そうなるとこれまで黙認状態だった漁業行為が規制され、実際に困るのは台湾漁民だろう。活動家は困らないだろうが。
(8)台湾在住日本人と台湾に関心や好意を持ってきた日本人が不快な気分にさせられた。しかも外省人のやり方は、どういうわけか日本人の不快のツボを刺激するやり方なだけに、不快感だけが残った。
(9)日本世論を反発させた結果、最近は世論で左右される傾向もある日本外交が、台湾に対して厳しくなることが予想される。最悪の場合、ノービザ廃止、それも台湾人には中国人以上に厳しくなる可能性もある。
(10)日本政府とくに海保と海自がこの件を奇貨として、予算増額の口実を獲得し、これまで慎重論が多かった尖閣周辺の警備と防衛の強化、これまで出てこなかった海自の参入も可能となるだろう。ましてこれまで尖閣をめぐって台湾との対立を望まなかった右派保守派もこの件で態度を硬化させている一方、親中の色彩が強い左派の多くは台湾相手には防衛強化も反対しない以上、日本でこの動きを阻止する世論はなくなった。
(11)本来主権問題を棚上げして実務的に漁業権交渉してきたものがストップし、ますます交渉がやりづらくなる。

ただ、今回の件で、それまで漠然と「尖閣は台湾領なのに日本が不当に占領している」と考えていた台湾人の多くが、日本領であるという事実を認識したという効果はある。それに、反日の煽動が、台湾では結果的に効果をもたらさないということもはっきりした(というか、日本と一戦を交えて、日本と戦う台湾人なんて5%もいないだろう、戦わずにあっさり投降して日本人になりたいと言い出しそうだw)。
これは将来的に尖閣の漁業権をめぐる交渉が再開された暁には、台湾側が漁業権に限定するしかなくなったという意味で、長期的には日本と台湾双方にとってプラスだろう。

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