むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

毒ミルク事件を契機に台湾で急速広がる馬政権への不信と反中国感情

2008-10-09 03:47:00 | 台湾政治
馬英九政権は低空飛行なら、8月中は陳水扁前総統の海外マネーロンダリング疑惑(まあ証拠はないんだが)が勃発、またたいした失点の加算がなかったため、小康状態になっていたが、9月中旬に発覚した中国の毒ミルク事件や台風の相次ぐ襲来に、失点を重ねて、再び危機に陥っている。また毒ミルク事件では、中国の隠蔽・責任転嫁体質が改めて認識されたことから、SARS以来の反中国感情も台湾社会で盛り上がっている。これも「中国経済との交易拡大での景気浮揚」が唯一の寄りどころであった馬政権にとって失点になっている。
毒ミルク事件では、特に9月23日から24日にかけて、政府衛生署が「商店にならぶすべての疑問ある食品を棚卸して検査する」といったかと思えば「パンなどに一部含まれているだけなら販売可」「一般食品でもメラミンが2.5ppm以下なら販売可」などと、基準と対応が二転三転したことが、大きな不満を呼んだ。特に基準量が2.5ppmというのは、甘すぎるという指摘が相次いだ。このため、衛生署長林芳郁は辞任した。しかし後任でSARS事件のときには名声を上げた葉金川も、対応が不明確なため、批判を受けている。馬政権の支持率は再び下がりはじめ、8月には30-40%前後あったものが(それでも低すぎるが)9月下旬には20%台になった。

馬政権の要職や中枢を占めているのは外省人が多く、いずれも中国に気兼ねをし、明らかに親中、媚中傾向が見られる。これが毒ミルク事件での及び腰の対応に反映されている。
だが、これについては、「身内」であるはずの外省人で国民党系(元親民党所属)の経済学者である劉憶如ですら、なんと自由時報のインタビューで馬政権が中国経済をあまりにも過大評価しすぎたと厳しく批判しているくらいだ(10月6日付け5面)。

しかも、馬政権が唯一頼みの綱にしている中国経済も、悲観論が世界的に台頭している。何よりも、わりと中国礼賛的だったはずの日本の「東洋経済」も5月に出した特集号では悲観論のオンパレードだったくらいだ。その中国で株価と不動産価格が暴落している。
まして、米国発の金融危機が起こっている。これは対米輸出に全面的に依存で成長してきた中国経済にとって、泣きっ面に蜂といったところだろう。
だから、中国経済の先行きは真っ暗であり、それに期待してきた馬政権もアウトである。

#ちなみに、米国の金融危機について、中国当局者は「そらみろ、市場万能主義の新自由主義が破綻した。中国みたいに政府の介入度が高いのが正しい」などといっているようだが、まさに「唐人の寝言」といったところだろう。現在の中国経済は新自由主義そのものであり、政府介入は社会(民主)主義的なものではなくて、政府が富を横取りして庶民を貧困に置く収奪のためなのだから、新自由主義の失敗はそのまま現在の中国の経済構造にも直結するのである。それが見えていないとは、中国人はやはり愚かだというしかない。

しかも、現在国際通貨市場では日本円の独歩高の様相を呈しているように、日本経済は相対的に強いのだが(それは日本経済が90年代の米国国際資本の攻撃やその後の小泉「改革」にもかかわらず、戦後以来の強固な日本型社民主義的経済構造も温存してきたためでもあるが)、馬政権はその日本に対して敵対的な姿勢をとっているのである。

米中に依存し、日本と疎遠になろうとしてきた馬政権の政策は、破綻の一途に向かっている。

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