8日付けの台湾リンゴ日報が6面(政治)で伝えたところでは、台湾の黄志芳外交部長(外相)が4月中旬に密かにレバノンを訪れ、シーア派抵抗運動組織ヒズボッラーの指導者ハッサン・ナスラッラー師と会見していたことがわかった。ヒズボッラーのHPが4月13日にニュースリリースで「ナスラッラー師が自身の暗殺を企む動きに反対する人たちと会った」とした中に黄部長の名前も含まれていたという(外長密訪恐怖頭子 曝光4月拜會真主黨首領 學者:外交應謹慎)。
ほかに台湾の各メディアも後追いしているが、リンゴ日報も後追いした連合報なども、立法委員たちも例によって例のごとく「ナスラッラーとヒズボッラーは米国がテロリストに指定しており、こんなところと接触するのは台湾のイメージを落とす」と攻撃している(黃志芳密訪真主黨 立院朝野質疑不適當 中廣新聞/蔡佩芳 ; 國民黨團:外交部長密訪恐怖頭子 丟光台灣臉
【中時電子報蘇聖怡/台北報導】)。毎度のことながら、台湾のメディアと国会議員のレベルの低さ、無知さには呆れる。
米国がテロリストだといっているからといって、それがどうしたのか?
ナスラッラー師とヒズボッラーはイスラエルに果敢に抵抗する勢力として、つとにアラブおよびイスラーム世界では高く評価されており、今回の戦争の過程で当初は批判もあったが、カーナー虐殺前後からはさらに声望を高めているのは事実であり、これは米国メディアでイスラエルべったりのニューヨークタイムズまでが7日付けで「ヒズボッラーの指導者が(アラブ世界で)新たな偶像になっている(Hezbollah’s leader becomes a new icon)」と指摘しているくらいである。
台湾にとって中東は重要ではないのか?石油、天然ガスなどのエネルギーはどこから来ているのか?また台湾から距離的にも近く重要な国であるマレーシアとインドネシアはイスラーム教が主流で、この両国でもヒズボッラーの評価は高い。
まして、私がレバノンであったヒズボッラーの党員や支持者は、ヒズボッラーがイラン経由で中国製の兵器を使っているにも関わらず、「中国はイスラームを弾圧しているから嫌いだ。ヒズボッラーには将来的に東トルキスタンのイスラーム同胞支援のために動いてほしい。台湾にも同情する」といっていた。
そうした基盤に支えられたのか知らないが、ナスラッラー師が台湾の外相と会ったことは、さすがにナスラッラー師らしい、したたかさだと思う。
(さらに下世話な話になるが、馬英九を「ハンサム」などと持ち上げている国民党の政治家やメディアはダブスタである。ハンサムだというならナスラッラーのほうがよっぽどハンサムではないか?おまけに馬にはない政治力や指導力もあるし、締りに欠ける馬の顔に比べたらよっぽどきりっとしている)
台湾にとっていくら米国との関係が重要だといっても、米国の顔色を伺い、米国が指定する基準や見方にすべて従わなければならないということはない。台湾には台湾の国益がある。
実際、日本も小泉政権になってからは、台湾以上に米国追従国家になっているが、それでもイラン、リビア、シリア、キューバとの関係に関しては、米国が嫌っているのとは別途、独自のパイプを築いている。もちろん台湾は日本よりも小国なので、日本ほどの強みがないといえるかも知れないが、そうではないだろう。しかもただ米国の顔色を伺えば中国が侵略してきたときに米国が必ず助けてくれるという保証はどこにもない。外交はパイプが多ければ多いほどよい。それが大国に対する交渉力にもつながる。
ヒズボッラー自身、確かにレバノン内戦最盛期の1982年の成立時点では紛れもないテロリスト団体で、欧米人の誘拐や自爆テロをよく起こしていた。しかしレバノン内戦が終わってからは、レバノンで合法政党として活動しているだけでなく、シーア派に多い弱者に対する病院、慈善事業にも熱心で、さらに国内の他の政党のいずれとも友好関係を保ってきた。さらに、内戦以降はテロ活動を行うことなく、すべての戦闘力を対イスラエルレジスタンスに傾け、実際2000年には激しい戦闘のすえ、レバノン南部を占領していたイスラエルを追い出すことに成功した。このため、レバノンではシーア派だけでなく、かつては敵対してきたキリスト教徒各勢力からも尊敬と評価を受けている。さらに、昨今のレバノン政界では、暗殺されたハリーリーの息子とともに、最も影響力がある人物になっている。
レバノンはじめアラブ・イスラーム世界ではヒズボッラーは「テロリスト」などではない。
ヒズボッラーがいかにアラブ・イスラーム世界で尊敬を得ているか、その世界に行ったことがない、「米国一辺倒」で国際感覚ゼロの台湾人記者・学者・政治家にはわからないのだろう。
世界は米国とその価値観だけで動いているわけではない。
レバノン国内では事実上最大の影響力をもち、同時にイスラーム世界で広く評価されているヒズボッラーとナスラッラー師を米国の色眼鏡で「テロリスト」としか見られないからこそ、台湾は孤立しているのではないか?「あれは駄目、これも駄目」なんていっていたら、外交的な力を失う。外交は好き嫌いではない。利害が一致すれば付き合うべきである。
ほかに台湾の各メディアも後追いしているが、リンゴ日報も後追いした連合報なども、立法委員たちも例によって例のごとく「ナスラッラーとヒズボッラーは米国がテロリストに指定しており、こんなところと接触するのは台湾のイメージを落とす」と攻撃している(黃志芳密訪真主黨 立院朝野質疑不適當 中廣新聞/蔡佩芳 ; 國民黨團:外交部長密訪恐怖頭子 丟光台灣臉
【中時電子報蘇聖怡/台北報導】)。毎度のことながら、台湾のメディアと国会議員のレベルの低さ、無知さには呆れる。
米国がテロリストだといっているからといって、それがどうしたのか?
ナスラッラー師とヒズボッラーはイスラエルに果敢に抵抗する勢力として、つとにアラブおよびイスラーム世界では高く評価されており、今回の戦争の過程で当初は批判もあったが、カーナー虐殺前後からはさらに声望を高めているのは事実であり、これは米国メディアでイスラエルべったりのニューヨークタイムズまでが7日付けで「ヒズボッラーの指導者が(アラブ世界で)新たな偶像になっている(Hezbollah’s leader becomes a new icon)」と指摘しているくらいである。
台湾にとって中東は重要ではないのか?石油、天然ガスなどのエネルギーはどこから来ているのか?また台湾から距離的にも近く重要な国であるマレーシアとインドネシアはイスラーム教が主流で、この両国でもヒズボッラーの評価は高い。
まして、私がレバノンであったヒズボッラーの党員や支持者は、ヒズボッラーがイラン経由で中国製の兵器を使っているにも関わらず、「中国はイスラームを弾圧しているから嫌いだ。ヒズボッラーには将来的に東トルキスタンのイスラーム同胞支援のために動いてほしい。台湾にも同情する」といっていた。
そうした基盤に支えられたのか知らないが、ナスラッラー師が台湾の外相と会ったことは、さすがにナスラッラー師らしい、したたかさだと思う。
(さらに下世話な話になるが、馬英九を「ハンサム」などと持ち上げている国民党の政治家やメディアはダブスタである。ハンサムだというならナスラッラーのほうがよっぽどハンサムではないか?おまけに馬にはない政治力や指導力もあるし、締りに欠ける馬の顔に比べたらよっぽどきりっとしている)
台湾にとっていくら米国との関係が重要だといっても、米国の顔色を伺い、米国が指定する基準や見方にすべて従わなければならないということはない。台湾には台湾の国益がある。
実際、日本も小泉政権になってからは、台湾以上に米国追従国家になっているが、それでもイラン、リビア、シリア、キューバとの関係に関しては、米国が嫌っているのとは別途、独自のパイプを築いている。もちろん台湾は日本よりも小国なので、日本ほどの強みがないといえるかも知れないが、そうではないだろう。しかもただ米国の顔色を伺えば中国が侵略してきたときに米国が必ず助けてくれるという保証はどこにもない。外交はパイプが多ければ多いほどよい。それが大国に対する交渉力にもつながる。
ヒズボッラー自身、確かにレバノン内戦最盛期の1982年の成立時点では紛れもないテロリスト団体で、欧米人の誘拐や自爆テロをよく起こしていた。しかしレバノン内戦が終わってからは、レバノンで合法政党として活動しているだけでなく、シーア派に多い弱者に対する病院、慈善事業にも熱心で、さらに国内の他の政党のいずれとも友好関係を保ってきた。さらに、内戦以降はテロ活動を行うことなく、すべての戦闘力を対イスラエルレジスタンスに傾け、実際2000年には激しい戦闘のすえ、レバノン南部を占領していたイスラエルを追い出すことに成功した。このため、レバノンではシーア派だけでなく、かつては敵対してきたキリスト教徒各勢力からも尊敬と評価を受けている。さらに、昨今のレバノン政界では、暗殺されたハリーリーの息子とともに、最も影響力がある人物になっている。
レバノンはじめアラブ・イスラーム世界ではヒズボッラーは「テロリスト」などではない。
ヒズボッラーがいかにアラブ・イスラーム世界で尊敬を得ているか、その世界に行ったことがない、「米国一辺倒」で国際感覚ゼロの台湾人記者・学者・政治家にはわからないのだろう。
世界は米国とその価値観だけで動いているわけではない。
レバノン国内では事実上最大の影響力をもち、同時にイスラーム世界で広く評価されているヒズボッラーとナスラッラー師を米国の色眼鏡で「テロリスト」としか見られないからこそ、台湾は孤立しているのではないか?「あれは駄目、これも駄目」なんていっていたら、外交的な力を失う。外交は好き嫌いではない。利害が一致すれば付き合うべきである。