トーキング・マイノリティ

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メディアが「おもてなし」を強調する理由

2015-06-30 21:40:08 | マスコミ、ネット

 最近メディアでは、観光客への「おもてなし」を殊更強調するようになってきたと感じている。元から私はさほどТVを見るほうではなかったし、暫く前から私が見ている番組は海外ドキュメンタリーか紀行、料理、歴史特番くらいになっている。新聞の番組欄を見れば、どのような番組が放送されているか見当が付くし、先に挙げた以外には見たいと思うものがない。近頃の民放には来日外国人が日本を諸々を称賛する番組が多いように思えるが、これらも見ていないため感想は書けない。
 他の地方紙は不明だが河北新報でも観光客、殊に海外からのそれへの「おもてなし」を訴える記事が目につくようになった。単に海外からの観光客が増えたことがあると思っていたが、そればかりではなかったのが6月28日付の河北でのコラムで判った。

 件のコラム名は「地方から問う日韓関係/国交正常化50周年」。コラムはシリーズになっており、6月28日付のそれは第3回目で静岡新聞からの転載。コラム中央には大文字で「友好への思い 食に込め」とあり、右側には「(朝鮮)通信使の接待料理再現(静岡市)」とある。5月30日、韓国大使館主催のツァーで在京韓国メディア関係者ら約30人が清見寺を訪れ、これを歓迎した静岡のNPO法人「AYUドリーム」女性メンバーの声が載っている。メンバーの栄養士・望月鈴江氏(66歳)はこう訴えていた。
日本は当時、国を挙げて通信使をもてなした。この料理を通して、朝鮮半島との友好に懸けた思いを分ってほしい

 このコラムシリーズはタイトルだけで見る気が失せたし、初回から読んでなかった。だが、第3回目はたまたま活字が目に入ってしまい、コラムの一文で、最近のメディアが何故“おもてなし”を強調していたのか、やっと納得がいった。AYUドリームが通信使と関わるようになったのは2007年からだそうで、結びにある雨宮令子理事長(59歳)の言葉はこうである。
先人たちは一緒に酒を飲み、美味しいものを食べたことで、お互いに歩み寄る雰囲気をつくったのでは。学ぶところは大きい

 馬鹿げている、が私の感想だった。未だに隣国との友好を訴え続ける輩は文字通り現状を直視できない夢想家か、隣国の猿回しの猿に過ぎない。共に酒を飲み、ご馳走を食べることで互いに歩み寄れるならば、とうに日韓関係はAYUドリームの類がいうような友好関係を築いていただろう。むしろ“食い逃げ”され続けていたと見るべきだ。
 ネットの普及で朝鮮史に詳しくない人にも朝鮮通信使の実態が知られるようになり、単なる朝貢団で平和の使節などではなかったのだ。検索すれば「朝鮮通信使の真実」のようなサイトは幾つもヒットするし、白昼堂々の集団強奪事件を起こしていた無頼集団だった。そして来日した朝鮮通信使らは日本の発展に驚嘆すると同時に、「穢れた愚かな血を持つ獣のような人間」「この犬にも等しい輩を、みな悉く掃討し、四百里六十州を朝鮮の国土とし、朝鮮王の徳を持って、礼節の国にしたいものだ」という文句を残している。

 他にも「朝鮮通信使を美化して歴史を歪めないでください」というブログ記事には、こんな一文があった。
「この画像の新聞記事に記されている「NPO法人AYUドリームの雨宮令子氏」はネット検索しますと、民団や在日が参加する交流イベントに必ず登場してきます…」
 このブログ記事は2014年4月30日付のものだが、AYUドリームの他にも民団や在日と結び付いているNPOがあるはず。つまりメディアの強調する「おもてなし」とは、友好のために外国人にタダ飯を食わせ、ひたすら傅けという目論見があったのだ。観光業界よりも韓国大使館の音頭取りがあったのだろう。「おもてなし」は悪くはないが、対象が効果のでる相手でなければもてなす意味はない。

 私お気に入りの人気サイト「ダークネスDUA」管理人・鈴木傾城氏も日本のマスコミを激しく糾弾する記事をしばしば書いているが、2015年2月23日付の記事「「ピラミッド観光収入はアップル年間売上の30分の1」の意味」で氏は、「観光業にぶら下がっても、あまり意味がない」と一蹴する。鈴木氏の次の主張には完全に同意する。
分かりやすく言えば「おもてなし」など、国家の優先事項から見ると、まったくどうでもいい話なのである。同じく、カジノのようなバクチ会場を作ることも、どうでもいい。それよりも世界に通用する強大な日本国籍の多国籍企業を日本にキラ星のごとく存在させる方が、もっと重要であることが分かる。日本が経済発展して世界に通用する国になったのも、世界に通用する企業があったからである。金閣寺や奈良の大仏は、あまり役に立っていない…

 今年の春に見たトルコ人作家オルハン・パムクの『』の中で、情報や数値を誤魔化す地方紙の話が出てくる。捏造そのものだが地方紙発行者は悪びれもせず、こう開き直る。アメリカの新聞も同じだろうが、新聞というものは読者の見たいと思うことを書くのだ、と。
 この箇所を見た時、トルコの地方紙の方が日本のそれよりずっと健全…と心底羨ましく思った。尤もトルコの新聞もスポンサーの喜ぶことを書くのが第一なのは同じだ。日本のメディアが既に他国の代弁機関になっているのを、少なからぬネットユーザーは気付いているし、この先も壊れたラジオ同然に隣国との友好を繰り返し続けるだろう。

◆関連記事:「文化交流
 「友好症候群
 「民間外交の危うさ
 「謝罪の言葉は気持ち込めて

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「おもてなし」は重要 (motton)
2015-07-01 13:08:41
あらゆる業種にとって「おもてなし」はとても重要です。
お客さんのニーズを把握して満足させ信頼度を上げリピーターを増やすということですから。

日本人が昔からやっていたことです。これこそが強大な日本企業を生んだ源であり、日本人が世界で生き抜く拠り所だと思います。

中国や韓国は「信頼」に価値をあまり置かないので、長期的に差をつけられます。韓流が嫌韓の一因になった理由ですし、朝鮮通信使も同じ道を辿るでしょう。

一方、欧米は「信頼」には価値は置くけれども、自分の価値観を押し付けるため、日本ほどにはできません。(良い例が車です。)

日本が苦手なのは、お客さんの「隠れた」ニーズを掘り起こすことで、基本的には先行投資で数打って当てるしかありません。ここがアメリカの優位な部分です。

観光業での狭義の「おもてなし」は、いままでやっていた国内客向けだけではなく外国人向けにもしましょうということです。これから人口が減る地方は観光業への依存度が高いというかそれしかないですし、やるしかありません。(地方が衰退すると最終的に中央も衰退するのは歴史が教えるところです。官僚は分かっているけれど、都市に住む知識人はほとんど分かっていないことです。)
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Re:「おもてなし」は重要 (mugi)
2015-07-01 22:05:30
>motton さん、

「おもてなし」というと観光業を連想してしまいますが、貴方のコメントからあらゆる業種にとって「おもてなし」がとても重要なことが分りました。河北のコラムが不愉快だったので「おもてなし」を批判する記事を書きましたが、短絡的でしたね。ただし、AYUドリームのようなNPOを通じての朝鮮通信使への「おもてなし」は、税金を投じてやる価値はないと思っています。

 仰る通り、日本はお客さんの「隠れた」ニーズを掘り起こすという先行投資が苦手です。この点は未だにアメリカが完全に優位。やはり慎重な日本人と開拓精神の衰えない米国人との差でしょうか。
 人口が減る地方は観光業で町おこしをする他に活性化の道はないのですか…今年社会人になった友人の息子が青森県の八戸市に赴任しましたが、若者が少なく活気がないと言っていたそうです。仙台在住だと気付きませんが、宮城県も過疎が進んでいます。
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おはようございます。 (都民です。)
2015-07-02 07:50:48
 石ノ森章太郎の「ホテル」が好きだったせいか、接客は興味があります。いろいろと見てきましたが、一番素晴らしかったのは福島のあるお店の店長さんでした。空気の様に居て必要な時に声をかけるのが、絶妙でした。有名な旅館より上だと思います。

 おもてなしは、外国人の実態を調べてから適宜するのがトラブルがないと思います。ですから朝鮮通信使の実態を知らずに誉めそやすのは、大反対です。彼らに事実を捏造される手助けをしているようなものだと思います。次は、謝罪と賠償を求めてきますから!

 むかしから海外に興味があり、何となく本を読んできましたが、さいきんつくづく知らない事が多いと赤面しています。でもネットの使い方をオ覚えてから、こちらのようなブログや紹介される本を読む事でだんだん知るコツが分って来た気がします。

 図書館に予約していた「エロイカの・・」を読み始めています。面白いですね。


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Re:おはようございます。 (mugi)
2015-07-02 21:38:29
>「都民です。」さん、

 石ノ森章太郎の「ホテル」とは懐かしいですね~~ 原作もТVドラマも好きで見ていました。ちなみに石ノ森は宮城県出身者で、まだ売れない駆けだしの頃、東北人は漫画家に向かないのかと悩んだこともあったとか。そうではなかったことを彼自らが証明しました。

 仰る通り、おもてなしは外国人の実態を調べてから適宜するのがよいでしょう。朝鮮通信使をもてなすNPOはその実態を知らないのではなく、実態を隠して誉めそやしているのではないでしょうか。ご馳走を振る舞ったところでケチをつけたり、日本料理のルーツは朝鮮だと言いだす類ですからね。

 本以外にネットでも海外事情を知ることが出来る時代になりました。私自身もまだまだ知らないことがあり過ぎるし、世界は本当に広いものです。
「エロイカの・・」は漫画とは違った面白さがありますよね。ファンはもちろん漫画家志望には必見の書だと思います。
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東北には…… (のらくろ)
2015-07-03 01:20:24
地方再生の好事例があります。ただし、それの劣化コピーの失敗例もあるようです。

詳しくはこちら↓
ttps://www.youtube.com/watch?v=tRYA8i4JyU4
ttps://www.youtube.com/watch?v=T8jhQU-ssy0
ttps://www.youtube.com/watch?v=EAMZxd_qKp0

事例は2番目の動画で紹介されます。仙台-盛岡はやぶさで40分、ここで東北本線を折り返して約20分。でもこれからしばらくは青春18きっぷで仙台から3時間という選択肢もあります。

この事例についてはこの人もかかわっています↓
ttp://www.amazon.co.jp/%E7%A8%BC%E3%81%90%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%81%8C%E5%9C%B0%E6%96%B9%E3%82%92%E5%A4%89%E3%81%88%E3%82%8B%E2%80%95%E8%AA%B0%E3%82%82%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%EF%BC%91%EF%BC%90%E3%81%AE%E9%89%84%E5%89%87-%EF%BC%AE%EF%BC%A8%EF%BC%AB%E5%87%BA%E7%89%88%E6%96%B0%E6%9B%B8%E3%80%80460-%E6%9C%A8%E4%B8%8B-%E6%96%89/dp/4140884606/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1435853548&sr=8-1&keywords=%E6%9C%A8%E4%B8%8B%E6%96%89

スゴいのは、この本のコメ欄の大半へ、著者がコメ返しをしていること。低評価へのコメ返しには笑ってしまいましたね。
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Re:東北には…… (mugi)
2015-07-03 21:42:56
>のらくろ さん、

 山口正洋という経済評論家を初めて知りました。地方再生でも成功した例と失敗例の両方が出るのだから、かじ取りは難しいですよね。同じことをしても、結果が違ってくるのは歴史でもあるるものです。

「稼ぐまちが地方を変える」という新書も未見だし、著者名も初耳ですが、仰る通りアマゾンのレビューで著者がしているコメ返しは面白かった。“アタッカー”なる者のタイトルが「正々堂々と商売したら?」で、端から「まあ、最低の本。いうならば読む時間の無駄。頭が悪くなる本」とこき下ろし。コメ返しの一文は痛快でした。

「そもそも返り血を浴びる勇気がなければ、自分の資金で投資したり、地域で自ら役員やって事業なんてやりませんし、誰かの批判もしません。笑
 素性を明かさず星1のレビューだけを書かれる貴殿こそ返り血をあびる勇気のない方ではないか、と思ったりもしましたが、そんなことはないですよね」

 “アタッカー”はまたも、「男の子だったらもっとドーンとデカイことして下さいな。全てにおいてチンチクリンな感じしかしませんので(笑) 」と挑発していますが、全部自分自身のことでしょ。「男の子だったら…」と書いていますが、コイツがチンチクリンなお子ちゃまですよね。痛すぎる。
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Unknown (都民です。)
2015-07-03 22:18:42
 仙台に住んで居た頃に、よく石巻の萬画館や登米の石ノ森章太郎ふるさと記念館に子供を連れて行きました。子供も何故か主人も喜んで行き、石巻ではお寿司が楽しみでした。

 「サイボーグ009」で東西ドイツの分断を知り、「エロイカ」で国際情勢を知りました。そして「ベルばら」でフランス革命に興味を持ち、以前ブログ主さまも書いておられた王妃の親友が民衆に引き裂かれたのを学生時代に読み、ゾッとしました。それとベルサイユ宮殿やパリの不潔さも夢を壊してくれました。お蔭でやや現実主義になったのかもしれません。

 とりとめのないコメントですね。
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「都民です。」さんへ (mugi)
2015-07-04 16:55:39
 宮城県在住の頃、石巻の漫画館にご家族で行かれましたか。石巻は震災で最も被害が酷かったのですが、徐々に復旧しています。

「サイボーグ009」は石ノ森章太郎の代表作ですが、私が最も気に入っているのは時代劇の「佐武と市捕物控」です。以前、石ノ森章太郎について記事にしました。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/3db5c9fa45336f2c90edc58575e859d3

 漫画って本当にバカに出来ないものですよね。漫画から得られた知識は結構多いし、漫画がきっかけで歴史本を読むということもありますから。私の子供時代、大人は漫画を見ることにいい顔をしませんでしたが、今は完全に認められています。尤も今の子供達は漫画よりもゲームに夢中の様で、少子化もあり漫画は昔のように読まれない時代になりました。
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