トーキング・マイノリティ

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民間外交の危うさ

2014-11-11 21:10:26 | マスコミ、ネット

 他国との関係が気まずくなると、決まってメディアでは政府間よりも民間での交流を訴え、それが関係改善や友好に繋がると主張する輩が登場する。しかし、民間外交にも限界や問題はないのか?2014-09-07付で『ブルガリア研究室』さんから、「幻想は幻滅に繋がる」というタイトルで、民間外交の危うさを指摘する傑出したコメントを頂いた。以下の色字はその全文。

こんにちは、
 安倍総理の外交が、インドなど中国の外縁部を取り巻く形で、最近はBDなども往訪して関係強化に努めようとしている。こういう政府の動きは、「対中包囲網」構築、と言う意図で日本の新聞でも説明されることが多く、広い意味ではそうかもしれないけど、まあ心理的に、中国側にも、日本もなかなか抜け目なくやっていると思わせる効果があると思う。日本も負けてはいませんよ、と相手に知らしめれば、それで効果あり、というのが小生の見方です。

 外交と言うのは、そういう類のもので、情緒的、感情的要素に期待してはならないと思う。

 かつて、総務省が「民間外交」などを奨励し、外務省の一方的な「外交権」の主張を崩そうという動きがあったと聞くけど、結局こういう「民間交流民間外交」などと言う流れは、感情的、情緒的な「友好」の強調となって、本来外交がきちんと踏まえるべき「用心深さ」を欠いた、危険な「交流、友好重視」の議論となり得る。
 mugiさんもよく書いているように、インド社会の伝統、歴史は、彼らが威張る「民主主義」の伝統、地域ごとの歴史、文化、伝統の相違などによって、日本人にとっては受け入れがたい価値観(カースト制、ダウリ習慣)なども含まれるから、単純に「民間交流」にばかり期待すると、幻滅に繋がり、かえって危険と思う

 小生自身の経験では、インド人は、上流階級のインテリ層は、それこそOxfordとか、最高の西欧での教育を受け、我々も凌駕するほどのインテリぶりだが、他方で彼ら自身が、自国の普通の庶民、国民にはさほど期待していないし、信用もしていない。日本の場合は、本当にフラットな社会で、個人の能力で計るべきだが、インド人の場合は、その所属する階層、家柄などが大きな要素で、他方、法治と言う意味では欠点も多いように見える。

 スズキが多大のリスクを背負って投資し、工場を軌道に乗せ、インド経済に貢献したのに、工場内の勝手な労組による無軌道な賃上げ攻勢、サボタージュ行為などで苦しんだり、トヨタでも工場閉鎖で、一部の不届きな労働者を排除するしか方策が無かったように、インドでも中国と同じような事態が起きる。
 結局は、メンタリティーが、「すべては交渉次第」とか、「俺様の能力をもっと高く評価して、もっと高い賃金を払うべき」という「俺様主義」が強い感覚だ。この「要求して金をとる」主義は、バルカン半島でも強い。「押しの強いキャラ」が指導者となるのが、大陸的と言うべきで、おとなしい日本人には極めて扱い難い人種なので、こういうところを覚悟すべきだし、簡単に「民間交流」でいつもうまくいくとも思えない。

 ともかく外国、外国人に幻想的な「友好感情」を勝手に抱かずに、事前の思い込みは無くして、すべて「用心深く付き合う」と言う心構えが、外国相手には必要と思う。

 ところが、日本に長く住んだインド人、とか、BD人らは、顔を見ても、もう本国の人間とはかなり違っていると思う。日本は、お互いを信用し、思いやり、配慮して、仲良くやるという文化で、その中で何年も居住していると、外国人達も日本人相手には信用して、「ゴリゴリの交渉を仕掛けて利益を奪い取る」と言うやり方はしなくなるのだと思う。こういう日本国内にいる外国人を基準にして、本国人も同じ人、と勘違いするのも、結構危険なことだと思う。

 室長さんは対印民間外交の危険性を書いておられるが、これは中韓はもちろんその他第三世界、欧米諸国にも当てはまろう。メディアに登場する外交評論家や国際政治学者で、このような正論を語る人物を私は未だに見たことがない。うんざりするほどの“友好”一色だし、民間交流を持ち上げる姿勢を繰り返している。

 メディアに登場する外交評論家や国際政治学者も、実際は室長さんと同じく外国、外国人にあまり幻想的な「友好感情」を抱かないと私は見ている。外交や国際政治に通じていれば他国への幻想は持たないはずだし、抱いていたならば無能といかいいようがない。彼らは外国やそのシンパの代弁者ぞろいなので、日本外交のために提言しているのではなく、友好等の綺麗ごとを並べ立てているのだ。だからこそマスコミに出られるし、取り上げられる。
悪人ほど美辞麗句や理想を語りたがる理由を知っているか?」というブログ記事は大いに共感させられる内容だったし、次の一文は人間社会全般に当てはまる。
建前の美しい言葉は、警戒心を解くための手口

◆関連記事:「友好症候群
 「文化交流

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8 コメント

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体験 (室長)
2014-11-12 10:11:33
こんにちは、
 小生のコメントを取り上げていただき恐縮です。
 こういうコメントを書くときには、やはり実体験が「迫力」を生み出すようです。

 小生が「民間外交の危険性」に気付いたのは、ある会合で自治省の役人と、外務省の佐藤優(ロシア問題専門家)氏が意見対立した現場に偶然居合わせたせいです。北方領土問題解決に献身されていた佐藤優氏は、小生より若いのに、本気で「民間外交と言う幻想」を心配し、断固とした口調で、職業外交官ですら苦労している分野を簡単に「民間外交で埋める」などという安易な発想を切り捨てていました。佐藤優氏の迫力と、日本国に対する憂慮の念こそが、小生の目も覚ましてくれたのです。

  小生自身が上記コメントに至るまでには、更にかなりの年月を必要としましたが、現場で真剣に、懸命に国益外交を担っている佐藤氏の態度に感銘を受けました。

  また、中国人、韓国人の「俺様主義」について目を開いてくれたのは田中信彦という経営コンサルタント(中国在住、妻は上海人らしい)です。
  各国それぞれのメンタリティー、或は「論法」の違い、人生観の違い、こういうものを踏まえておかないと、外国人と議論するときにも、単なるすれ違いのみに終始すると思う。

  ちなみに、よく考えてみると、「俺様主義」は大陸諸国のどこにでも見られる、むしろ普遍的現象かもしれません。他人の意見は無視し、声高に自己主張を繰り返して、押し切るのが「雄弁術」として尊敬されるのはバルカン半島では「古代ギリシャ」以来の伝統でもあります。
Re:体験 (mugi)
2014-11-12 22:07:02
>こんばんは、室長さん。

 私の方こそ、貴方の貴重な実体験体験に基づいたコメントは大変参考になりました。このような体験に徹した意見というものは、マスコミでは絶対に報じない。外国の走狗でなければメディアに出られないし、ネットにもその類は蔓延っています。これは中韓だけでなく、欧米の提灯持ちもネットを徘徊しており、「ジャパン・ハンドラー」の下っ端要員もいるでしょう。

 それにしても室長さんは、自治省の役人と外務省の佐藤優氏が意見対立した現場に偶然居合わせたことがあったとは!佐藤氏は一時期、外務省のラスプーチンと呼ばれ、そのため決してよくない印象を持つ人も多いと思います。最近では文壇で活躍しており、wikiで見る彼の経歴は興味深いものでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E5%84%AA_%28%E5%A4%96%E4%BA%A4%E5%AE%98%29

 田中信彦という経営コンサルタントは初耳ですが、先日見たブログ記事「河添恵子が中国に魅了されなかった理由(その2)」も面白いですよ。
http://blogs.yahoo.co.jp/miranda_bacy/12364988.html

 河添恵子という人物も上記で知りましたが、彼女が中国について事実を伝えると、「あなたはどうしてそう中国を疑うのか?」と日本人に言われたそうです。30年前から20年前に中国に留学していた時、既に「日本のカネを如何に毟り取るかという刹那的な欲望にだけ関心があること」に気づいた由。慧眼ですね。

 貴方のコメントでバルカンの「俺様主義」を知りましたが、インド・中東も全く同じです。他人の意見は無視、声高に自己主張を繰り返して、押し切る「雄弁術」が称賛され、激しい自己主張こそ美徳。日本人の協調主義がいかに世界では特殊なのか、知る人は少ないでしょう。
河添、田中 (室長)
2014-11-13 09:35:42
こんにちは、
 田中信彦と言う人は、wisdomというビジネスサイトでよく取り挙げられている経営コンサルタントで、中国人経営者らとも付き合いが長く、インサイドな中国観察記と言うべき記事を書く人です。https://www.blwisdom.com/strategy/series/china/item/9555-59.html?mid=w484h91700000919149
 この記事なども、wisdomサイトの評判記事だといいます。
 こういうサイトは、登録しないと読めないことが多いのですが、小生はかなり前に登録していて、タダで読めます。

  河添恵子の中国論は、産経新聞で最初に知りました。中国語の通訳をしていた、通訳できるということは、中国人の心理まで読める、ということなのだと思う。
  中国、韓国ともに、上に媚びて特権を手中にし、短期間に金儲けするという思考が強すぎる。長年弟子として技術を磨き、名人芸を極める、と言う職人魂に乏しいと思う。
  とはいえ、スマホなどの開発能力を見ると、中国人技術者の一部は、かなりの能力を備えるようになってきており、日本人が安心しておられるほど侮ることは難しい。ネットの発展で、どこの国の誰でも、好奇心を持てば、色々な技術を学ぶことはできるし、それが画期的開発につながることもあり得る時代です。日本だけが、教育に成功し、人材豊富と威張っておれる時代ではなくなってきた、と言うことを踏まえ、日本人も努力せねばならない。
独自外交 (motton)
2014-11-13 18:27:07
外交を行うために政府があるといってもよく、民間外交という言葉は自己矛盾していると思いますが、民間交流という意味だとして、それが失敗してもその被害は本人達とその周辺ですみます。
しかし、中途半端な権力をもった人間の国家中枢の戦略に基づかない独自"外交"は失敗すると国を滅ぼします。

室長さんには悪いのですが、私はその意味で佐藤優氏に戦前の松岡・白鳥・大島と同じものを感じて嫌いです。
彼らは愛国者・憂国者ではあったとしても、全国民の運命を背負っているという責任感・誠意とそれらから生じるはずの謙虚さが無かったように思います。
Re:河添、田中 (mugi)
2014-11-13 22:51:48
>こんばんは、室長さん。

 WISDOMというサイトは知っていますが、ここに田中氏も寄稿していたのですか。リンク先を拝読しましたが、記事中にあった「西洋は神様の社会、日本は世間様の社会、中国は俺様の社会」の箇所には苦笑しました。この記事への「ロンパリ」さんのコメントは考えさせられます。
「逆に言えば交渉する事は彼らの思う壺に嵌るとも言えます。従ってそんな交渉なら拒絶するのも一法なのかと」

 我が家では産経新聞をとっていないので、河添氏の名も最近知ったばかりです。魯迅の代表作『阿Q正伝』を読まれたことはございますか?中国はもちろん朝鮮も阿Qの国なのは、21世紀も変わりないとつくづく思いましたね。たとえ欧米に留学したインテリ層も、一皮むけばガチガチの中華思想の権化かも。
 魯迅といえば、日本留学時には仙台に居住したことがあり、河北新報は未だに友好のシンボルとして持ち上げ続けていて心底ウンザリですね。

 漢族だけで約17億人と言われるほどなので、優秀な技術者が出てくるのは当然でしょう。さらに彼らは日本人と違い、海外に移住することに躊躇いはない。本国で技術を活かせないならば、海外に勇躍したり、一族を移住させたりします。この傾向はインドも同じだし、開発能力のある人材は多いはず。日本も既に安穏としてはいられない時代です。
Re:独自外交 (mugi)
2014-11-13 22:53:40
>mottonさん、

 仰る通り「民間外交」という言葉自体はおかしいですが、実質的には「民間交流」であり、そのような意味合いで使われています。一般人が行う「民間交流」は“独自外交”にはなりませんが、佐藤氏クラスの官僚が独断でやって失敗した場合、極めて危険ですね。佐藤氏も言ったように職業外交官ですら苦労するし、外交官も失敗することもある。成功すれば結構でも、独断専行では収拾がつかなくなります。

 二重外交が批判されるのは、その危険性だと思います。愛国者・憂国者にも勇み足や功名心があり、私も佐藤氏には好感が持てませんでした。佐藤氏に「外務省のラスプーチン」の綽名をつけたのは鈴木宗男のようですが、そう言わしめるところがあったのでしょう。
国際交流 (室長)
2014-11-16 09:18:25
こんにちは、
 確かが自治省(現総務省)が唱えたのは、地方自治体の「国際交流」で、外務省も自治体、或は各県に「国際交流課」などができていた頃、この運動を自治省主導にすることを食い止めるために、この国際交流のやり方に一定の枠をはめようと努力していた、と思う。

 「西高東低」と言う言葉があり、西日本、特に九州は、中国、韓国などとの「国際交流」意欲が高く、歴史的に外国との接触が低かった関東より東は、この意欲が低いと言われていました。特に東北、北海道は低いという評価でした。

 自治体レベルの国際交流は、自治体首長、地方議員たちの外国出張費を出す口実、外国旅行を自分の懐ではなく「公費」で賄う口実にもなっていました。外国語もできないのに、現地(ブルガリアにも来た)まで公費で旅して、共産圏の国家の地方自治体と「友好」を唱え、万歳と言っては帰国しました。形式のみで、中身が無い・・・・とはいえ、現地側の地方役人も、場合によっては公費出張できるという、相互の利害の一致があったように思う。

  とはいえ、ブルから日本に行くと、必ず広島を往訪して「米国の悪行」を呪い、ゾルゲの墓に詣でては、ソ連のスパイを称賛するという・・・・あまり我々には面白くもないこともやっていたようです。本人たちも、本当にゾルゲの墓などに行きたかったのか??どうやら日本のデパートを見ては、商品の豊富さにたまげていたようです。

  60--70年代、ブル人が一番買って帰国するのは、ニット編み機・・・・とはいえ使い方が分らず、説明文も読めないので、使えないという悲劇が多かった。小生も何回も、使用方法を教えてほしいとの要請に辟易した(男の自分が分るはずもない)。Sonyのラジオ、テープレコーダーなども垂涎の的でした。
Re:国際交流 (mugi)
2014-11-16 20:51:24
>こんばんは、室長さん。

 民間外交や国際交流などの掛け声は、民間よりも自治省のようなお上が言いだしたようですね。当然外務省はその動きを制限しようとしており、役所間の縄張り争いもあったことでしょう。
 仰る通り、民間での国際交流は現代でも「西高東低」の傾向があるのは確かだし、仙台でも一般市民は国際交流にそれほど積極的ではありません。国際交流を煽っているのはお上やマスコミ。そしてひと昔前では「海外視察」と称し、地方議員が海外の観光地に物見遊山で外遊していましたね。

 ブルを訪問した日本の地方議員の「国際交流」は情けない限り。まさに公費の無駄遣いそのものだし、彼等はソフィアで買い物三昧していた?福島県でも農家の若妻がヨーロッパ研修をする「若妻の翼」がありました。これが地域の活性化に繋がったのかは疑問ですが、欧州の農家もグローバリゼーションに直面しています。

 そして来日したブルのお偉方も、似た様なものだったようですね。共産圏だったので儀式化していたと思いますが、内心ではゾルゲや広島はどうでもよく、目当ては日本商品。60--70年代、ブル人が一番買った日本土産がニット編み機というのは笑えました。買ったブル人の多くも男性ですよね?おそらく奥様へのお土産だったのでしょうけど、せっかく買っても使えない。安物ではなかったのに、銭失いの品もあったとは。

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