トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

禁断の中国史 その二

2022-12-12 21:10:14 | 読書/東アジア・他史
その一の続き 中国史を少しでも知っている方なら、世界でも類を見ない残虐極まりない凌遅刑が、20世紀初めまで行われていたことは知っているだろう。罪人の肉体を生きながら小刀で切り取っていくという公開処刑だが、実行する刑吏も千回切り取る刑でその前に罪人が死んでしまったら、罪を問われることは本書で初めて知った。 切り取られた肉は漢方薬として売り出されていたことも本書で知った。何でも吹き出物の薬になったそう . . . 本文を読む

禁断の中国史 その一

2022-12-11 21:30:21 | 読書/東アジア・他史
 タイトルだけで怖いもの見たさと好奇心が刺激される本がある。『禁断の中国史』(百田尚樹 著、飛鳥新社)がまさにそれで、まえがきで著者が開口一番述べた、「世界の中で日本人ほど中国を誤解している民族はいないのではないでしょうか」は、必ずしも極論ではなかった。 著者はあの百田氏、保守派にも「煽動的ウヨク」と敬遠する人がいるほどの作家なので、本書は買わず、図書館で借りるつもりだった。しかし中国史にさほど感 . . . 本文を読む

名画で読み解く ロマノフ家12の物語 その三

2021-07-18 21:40:47 | 読書/東アジア・他史
その一、その二の続き ロマノフ朝の歴代ツァーリの中で、私的にはやはりピョートル一世が最も印象的だった。ピョートルが広く欧州視察を行い、西欧の先進的文明を母国に取り入れようとしたことは知られている。西欧化のひとつとして、ヒゲ剃りを貴族以下一般民衆にも強要する。そらぬ貴族には年間60ルーブルの支払いを命じた。俗にいう「ヒゲ税」の導入だった。 但しピョートルが振り回したのは、ハサミだけではなかった。英国 . . . 本文を読む

名画で読み解く ロマノフ家12の物語 その二

2021-07-17 21:40:11 | 読書/東アジア・他史
その一の続き 第1章「ワシーリー・スリコフ『フョードシヤ・モロゾフ』」の物語からして暗い。画家スリコフやフョードシヤ・モロゾフという人物名も初耳だが、後者は日本の菓子メーカーとは無関係。1672年11月に起きたフョードシヤ・モロゾフ公爵夫人逮捕を描いた歴史画で、逮捕したのはロマノフ朝第2代アレクセイ・ミハイロヴィチ。彼の後妻が産んだ息子がピョートル大帝。 アレクセイの治世にはロシア正教会から古儀式 . . . 本文を読む

名画で読み解く ロマノフ家12の物語 その一

2021-07-15 21:40:19 | 読書/東アジア・他史
『名画で読み解くロマノフ家 12の物語』(中野京子 著、光文社新書)を読了した。本書を読んだのは、今月初めに河北新報の第一面に載った『名画で読み解く プロイセン王家12の物語』(光文社新書)の広告を見たから。「発売たちまち3刷!中野京子、人気市リース最新刊!シリーズ累計32万部突破!」等のコピーに釣られ、読んでみたくなった。  行き付けの図書館に行ったら最新刊は既に予約済みだったが、本書と「ブル . . . 本文を読む

皇帝たちの中国史 その八

2020-10-03 22:00:15 | 読書/東アジア・他史
その一、その二、その三、その四、その五、その六、その七の続き 読者の中には元寇、特に対馬侵攻における島民虐殺を挙げ、やはりモンゴル人は残忍ではないか、という方もいるだろう。殺されなかった島民は、男女問わず200名ほどが奴隷として高麗王の宮廷に連行される。さらに捕虜とした女性の手の平に穴を穿ち、これを貫き通して船壁に並べ立てるという、類を見ない蛮行を働いている。 但し元寇の兵士たちは高麗人が圧倒的多 . . . 本文を読む

皇帝たちの中国史 その七

2020-10-02 21:30:39 | 読書/東アジア・他史
その一、その二、その三、その四、その五、その六の続き 著者は「ロシア人貴族も一皮むけばモンゴル人」として、“タタールのくびき”の実態を暴いている。ロシア人が“タタールのくびき”を言い出したのは18世紀からで、「モンゴル支配のせいで、私たちの近代化がこんなに遅れた」と17世紀までの歴史を否定した。 それまでのロシア地方の有力者は我先にとモンゴルに媚を売 . . . 本文を読む

皇帝たちの中国史 その六

2020-10-01 21:30:26 | 読書/東アジア・他史
その一、その二、その三、その四、その五の続き 私的には第三章「モンゴル帝国の興亡―五代十国から元朝まで」が一番面白かった。中国史のテーマからは外れるが、モンゴル帝国の実態や現代モンゴル事情にも言及していたので。第三章には刺激的な見出しが幾つかあり、中でも「「チンギス・ハーンって、どんな人」と日本人に聞くモンゴル人」は、思わず目を疑った読者は多かったと思う。 件の見出しの前には、「歴史を消されたモン . . . 本文を読む

皇帝たちの中国史 その五

2020-09-27 21:10:04 | 読書/東アジア・他史
その一、その二、その三、その四の続き 日本人はとにかく三国志が大好き。三国志を扱った小説やアニメ、ゲーム、漫画は数多く生み出されており、ブームになったことがある。私はゲームをしないためよく分からないが、多くの英雄豪傑が戦いを繰り広げる世界は堪らないのだろう。ゲームの世界では戦の連続だが、実際は後漢末には人口が減り、満足に戦えなかったという。 三国に落ち着いたのも、人がいなくて大戦争が出来なくなった . . . 本文を読む

皇帝たちの中国史 その四

2020-09-26 21:40:06 | 読書/東アジア・他史
その一、その二、その三の続き 朝貢の実態を様々挙げ、「朝貢に行ったからといって家来だったと卑屈になる必要はなく、朝貢を受けたからといって、威張る話ではない」と著者は述べる。現代の中国は、「朝貢をしていたから属国だ」などと主張しているが、朝貢は商売上の関係があったというだけ、と著者は一蹴する。それを以って属国認定をするのこそ、シナ人特有の自己中心的拡大解釈の見本なのだ。 中国人がやたら周辺を属国のよ . . . 本文を読む