トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

服従 その④

2017-10-09 21:10:29 | 読書/小説
その①、その②、その③の続き 一般に日本ではお堅い職業の典型と思われている大学教授だが、『服従』の主人公フランソワはそんなイメージとは対照的な教職者なのだ。シーズン毎に恋人がいて、教え子とも関係を持つ独身貴族。彼が独身なのは、両親の不幸な結婚生活と破綻が影響しているが、これは作者ウエルベック自身の生い立ちが反映されているのかもしれない。 いかに優雅な独身貴族を満喫していても、年を取れば健康上の問題 . . . 本文を読む
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服従 その③

2017-10-08 21:40:14 | 読書/小説
その①、その②の続き 佐藤優氏の友人であるイスラエル人は、イスラム国の現状も説明しており、話を要約するとこうだ。スンニ派に属するイスラム国にとって重要なのは、シーア派との党派闘争だ。当面、イスラム国がイラクとシリアで実効支配する地域からシーア派を放逐することが戦略的課題となる。 さらにイスラム国は、スンニ派内での覇権獲得に腐心している。パレスチナ自治政府のガザ地区で、同じスンニ派に属する過激派ハマ . . . 本文を読む
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服従 その②

2017-10-05 22:10:16 | 読書/小説
その①の続き 陣野俊史氏の書評だと単に“極右の候補者”となっているが、『服従』ではキチンとマリーヌ・ル・ペンの名が明記されており、実在の政治家が登場しているのだ。2022年のフランス大統領選の第一回投票で、移民排斥を訴える国民戦線のル・ペンとイスラム同胞党のアッベスが1位と2位になる。 そこで左派の社会党と保守・中道派のUMP(国民運動連合)は、ファシストよりはイスラム主義 . . . 本文を読む
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服従 その①

2017-10-04 21:40:04 | 読書/小説
 穏健派にせよ、もしイスラム政党党首が大統領選で勝利、フランス大統領になったならば?そんな衝撃的な設定の近未来小説『服従』(ミシェル・ウエルベック著、河出書房新社)を先日読了した。2015年後半、この作品は河北新報の毎週日曜日の読書欄で取り上げられ、以下は文芸評論家・陣野俊史氏による書評の全文。 ―話題の書だ。今年1月、パリで起こったシャルリ・エブド襲撃事件当日に発売されたが、事件の余波でこの本 . . . 本文を読む
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停電の夜に

2017-09-03 21:10:08 | 読書/小説
『停電の夜に』(ジュンパ・ラヒリ著、新潮文庫)を先日面白く読んだ。著者はカルカッタ出身のベンガル人の両親の娘として、'67年にロンドンで生まれたが、幼少時に家族は渡米、米国のロードアイランド州で育った。つまりインド系米国人だが、著者自身は自分を米国人と考えているそうだ。尤も著者の出自もあり、作品の多くはインド系やインド人が主人公である。 ラヒリが凄いのはデビュー作である本書で、ピューリッツァー・フ . . . 本文を読む
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シャンタラム その②

2017-08-05 21:10:06 | 読書/小説
その①の続き 凶暴な囚人よりもさらに凶悪・残忍なのは、刑務所の看守である。リンはアーサー・ロード刑務所に投獄されるが、ここは架空のものではなく実在しており、ボンベイ最古にして最大の刑務所なのだ。名称通り英国統治時代に建てられ、かつては犯罪者はもちろん独立運動家も収容されていた。 刑務所の看守はその過去に触れ、イギリス人がインド人に行った仕打ちをリンに言い立てる。リンが俺はオーストラリア人だと言って . . . 本文を読む
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シャンタラム その①

2017-08-04 21:40:31 | 読書/小説
『シャンタラム』(グレゴリー・ディヴィッド・ロバーツ著、新潮文庫)全巻を先日読了した。文庫版の上中下巻で1877頁にも及ぶ大長編で、暫くぶりに読みごたえのある小説だった。インド最大の商都ムンバイが舞台の小説ということだけで興味が湧き、図書館にも在庫があったため借りて読んでみた。 小説は作者の半ば自伝で、美化され過ぎな感もある主人公リン・シャンタラムは作者自身の投影だろう。2017-5-21付の記事 . . . 本文を読む
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中東に売られる子供たち その②

2017-05-22 21:40:07 | 読書/小説
その①の続き“人市場”で売りに出された少年たちは、サウジやクウェートなどのペルシア湾岸諸国のラクダレースで働くことになる。豊かな湾岸諸国で開催されるラクダレースに、少年たちが騎手として参加しているのは知っていた。近隣諸国やインドの他に、パキスタンの少年たちもいるのも知っていた。しかし、その後の少年たちはどうなったのか?プラバカルは主人公にこう話す。 裕福な家長たちの午後の気 . . . 本文を読む
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中東に売られる子供たち その①

2017-05-21 21:40:13 | 読書/小説
 最近、夢中になって読んだ小説がある。『シャンタラム』(グレゴリー・ディヴィッド・ロバーツ著、新潮文庫)上巻がそれで、これほどリアルにインド最大の商都ムンバイ(旧ボンベイ)の裏社会を描いた物語は、他に見当たらないかもしれない。 インドの小説自体、日本での邦訳が極めて少ないにせよ、私がこれまで見たムンバイを舞台にした小説の中でも異色作だった。しかも、名前から著者はインド人ではなく、オーストラリア人。 . . . 本文を読む
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ラブメイカー

2017-02-12 21:40:08 | 読書/小説
 本棚にある『ラブメイカー』 (ハヤカワ文庫 SF-408) を、久しぶりに読み返した。本書はNY在住の編集者ジョセフ・エルダーによるオリジナルアンソロジー『Eros In Orbit』(軌道のエロス、1973年)の邦訳で、日本語版の初出版は昭和55(1980)年。タイトル通り、未来における性愛をテーマにした書き下ろし中短編10篇が収録されている。 読み返したといえ全篇を読んだ訳ではなく、以前に面 . . . 本文を読む
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