荒井山から

札幌は荒井山に家がある。東京-札幌-旭川-富良野-札幌と異動。室蘭を経て札幌へ。江別に行きまた戻った。もうすぐ退社だ。

エドガートンの表情を追う

2017年04月17日 21時28分40秒 | 日記
「しゃぼん玉」4月15日、札幌劇場
「切り子の詩」
「サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ」シアターキノ
「ラビング 愛という名前のふたり」

「ラビング 愛という名前のふたり」1950年代後半の米国。バージニア州では異人種間の結婚が違法とされていた。大工のリチャード・ラビング(ジョエル・エドガートン)は、恋人の黒人女性ミルドレッド(ルース・ネッガ)から妊娠を告げられ結婚を申し込む。バージニア州では異人種間の結婚は違法だったため、ワシントンD.C.で結婚式を挙げる。バージニア州に戻り暮らし始めるが、ある夜、保安官に逮捕されてしまう。
 実話を基にした。コリン・ファースのプロデュースで、ジェフ・ニコルズが監督・脚本を担当した。
 何ともジョエル・エドガートンがいい。表情はできるだけ押さえ、ほとんど感情を強くは表に出さない。夫人との間で安らぎ、子供たちも得ながら、ただ密やかに愛を育むといった風情である。逮捕された2人は一緒にバージニア州には住むことを禁じられる。仕方なくワシントンD.C.へ向かう。だが、出産の際に戻り、再び逮捕される。そして子どもを育てるため、意を決してまたもや戻る。そのころは公民権運動が隆盛を迎えていた時期で、ケネディー司法長官へミルドレッドが手紙を出すのだ。そこから、少しずつ変化が起きる。
 最後はマスコミにも取り上げられ、州高裁では敗訴するが、連邦最高裁で勝利を勝ち取る。妻に比べ終始、夫は静かだ。権利を振りかざすわけでなく、憲法裁判で興奮する弁護士とは違い、ただ、静かに暮らしたいということなのだ。
 映画が終わるとその後の二人の人生が字幕で語られる。夫の最期は悲しい現実があったようだ。そして妻は振り返るのだ。「I MISSED YOU……」。詳しくは書かないが、そこに全てがある。振り返れば、私はエドガートンの表情ばかりを追っていた。今年10本の指に入る映画だ。それにしても主人公の名前も、そして題名も「Loving」とは!

やっと見られたクーリンチェ

2017年04月17日 21時26分40秒 | 日記
「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」4月14日、札幌劇場
「すべての政府は嘘をつく」シアターキノ



 マーティン・スコセッシがつくった会社も絡み4K、デジタルリマスター版で蘇った。1991年の発表だから26年かかったわけだ。エドワード・ヤン監督「牯嶺街少年殺人事件」。名作の誉れ高いが、日本では初上映以来DVD化されなかった。あのころは最も忙しく、映画館からかなり遠ざかっていたしなあ。
 1960年代初頭の台北。小四は建国高校の昼間部の受験に失敗し、夜間部に通っていた。不良グループ「小公園」の王茂や飛機らとつるんでいた。 小四はある日、怪我をした小明と保健室で知り合う。彼女は小公園のボス、ハニーの女だった。

 「ヤンヤン 夏の想い出」(2000)でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、2007年に59歳で亡くなったヤン監督。自身の家族も中国大陸から台湾に移住した外省人だったという。青春映画そのままに、高校生が恋に落ち、エルビス・プレスリーの音楽に浸り、映画などアメリカの文化に憧れる。もう一つの要素として、外省人としてのメンタリティー。小四の家族はついつい、上海での過去を振り返る言動をしている。子供たちには教育をもって、世に出てほしいと願う(エドワード・ヤンも1949年に家族と台湾へ移住し、国立交通大学卒後、フロリダ大学で電気工学修士号を取得、映画を学ぶため南カリフォルニア大学へ)。そんな家族の心の複雑さは中共との関係を疑われ、拘禁される父親の姿に象徴される。そして、その両親の複雑な心は息子たちの閉塞感、そしてそこから飛び出そうとするエネルギーに昇華されることになる。
 従って、台湾の置かれた境遇は、日本ともある種共通するものが一部にあるとも感じさせられる。換言すれば、アジアの若者が持つ大状況は米国への憧れがあり、そして小状況は日本や台湾におけるように連合国との敗戦、国共内戦で中国本土から追われる前世代(親世代)と若者(アプレゲール)との相克があるのだと言えるかもしれない。
 そんな状況下で、実在の殺人事件をモチーフに愛と友情、暴力を描いた。見る者は誰しも、繊細で、臆病な、そして一途な若い頃の自分たちを見て、心を動かされるのだろう。それにしてもハニーの姿は日活の渡り鳥を見ているようだね。