「完全なる報復」28日、ユナイテッド・シネマ札幌
フィラデルフィアで幸せな毎日を過ごしていたクライド(ジェラルド・バトラー)は、眼前で妻子が無残な手口で殺された。犯人は逮捕されるが、有罪率のアップを狙う担当検事ニック(ジェイミー・フォックス)の独断で司法取引が行われ、犯人は極刑を免れてしまう。それから10年。短い刑期を終えていた犯人が惨殺された。そしてクライドは自分が殺したことを認める。ニックに司法制度の矛盾を訴え、その善処を訴える。それが出来なければ、裁判に関わった全ての人間の命はないと殺害を予告した。クライドは収監されるが、犯人の弁護士、裁判を担当した判事らが次々に暗殺された。ニックは食い止めようとするが、独房からの凶行の謎が解けなかった。
このジェラルド・バトラーはよかった。フィラデルフィアは独立宣言が採択され、合衆国誕生の地。ある意味、米国の法の支配の原点とも言える場所なのだろう。監督は「交渉人」のF・ゲイリー・グレイ。脚本は「ソルト」のカート・ウィマー。
収監されているのにどうしてと、謎はなかなか解けないが、言われりゃ別に不思議でも何でもない。ただ最後がね。こういう終わり方しかないだろうな。ちょっと残念だけど。司法取引における罪の重さとその罰との差。法律家は全体のバランス、損失と利益を比較考量するだけだが、被害者や遺族はどうだろう。矛盾を感じないわけにはいかない。でもこういう風土はなじまないと思われる日本では、今のところここまではいかないが、ただ光市母子殺害などのように感情面でのわかりやすさに引っ張られることもありうる。もちろん裁判員裁判の導入で分かるように、強姦などの罪に関しては素直に罰則が軽いという気もするのだが。罪と罰というのは、なかなか難しい問題だ。
獄中での駆け引きで、ピザを獄中仲間と食べるシーンは面白かった。後は怖いけど。ジェイミー・フォックスは何やら上昇志向が強く描かれていたが、どうだろう米国では普通なんだろうか。特にマイノリティとしての側面もあり、その中での知識階級、法律家であるわけだから、エゴたっぷりに描いて貶める必要は無いんような気もするけど。