1901年、レオニー・ギルモア(エミリー・モーティマー)は米国の名門女子大を卒業し、教職に就いていた。彼女はニューヨークで新進気鋭の日本人詩人ヨネ・ノグチこと野口米次郎(中村獅童)に雇われ、念願の編集者になる。やがて、二 人は愛し合うようになり彼女は妊娠するが、米次郎は日本へ帰国してしまう。 一人残されたレオニーは、未婚のまま男子を産む。そして日露戦争を経て日本人への差別が激しくなると、幼い息子と共に日本へ旅立った。
原作はドウス昌代の「イサム・ノグチ~宿命の越境者」。世界的彫刻家イサム・ノグチの母親レオニー・ギルモアの波乱の生涯を描いた。「ユキエ」折り梅」の松井久子監督が、7年かけて完成させた。出演は原田美枝子、竹下景子、吉行和子、柏原崇など。永田鉄男が撮影。音楽はヤン・A・P・カチュマレク。
映像の美しさが印象的だ。日米における夫婦、男女間の文化、考え方について考えさせられる。明治後半ならまだまだ男尊女卑の風潮が強く、米次 郎がレオニーが来日する間に妻をもらっていたなんてことも平気で起こる。まあ、逆にその逆境をバネにして(せざるを得ない)生きていく彼女の強さが息子に手渡され、不条理に負けないで人間が持つべき普遍性が息子のつくる芸術に結実したともいえる。すんなり行かない方が芸術にはいいのだろうか。いや、それを成功させたのは彼女の強さがなせる技であろう。そういう点で、エミリー・モーティマーはうまく演じきったし、逆に中村獅童が小さく見えた。
モエレ沼公園のシーンも美しい。