「激動の昭和史 軍閥」10日、浅草新劇場
1970年、東宝。小林桂樹、加山雄三、三船敏郎、中谷一郎、堀川弘通監督
二・二六事件以降、軍部の政治への介入は強まった。近衛内閣では東条英機が陸相に就任。南方進出により、アメリカとの関係は悪化した。海軍の米内光政や山本五十六はあくまで対米戦争に反対したが次第に孤立化する。内閣は近衛から東条へ変わった。米国との和平工作は頓挫し、開戦となった。真珠湾、マレー沖、シンガポールと戦勝気分を上がった。だが、ミッドウェーの大敗を機に戦局は逆転。毎日新聞記者新井五郎はガダルカナルの撤退作戦に海軍報道班員として従軍し、前線の真相を知る。大本営は厳重な言論統制を敷いていて、新井は真実を報道することを決意した。真実に飢えていた読者の反応は良かったが、陸軍は反発。新井は徴罰召集されてしまう。サイパンの王砕した兵士の中には、新井と一緒に召集された老兵たちもいた。東条は内閣総辞職を余儀なくされた。新井は海軍の尽力で再び報道班員として、フィリピンに赴いたが特攻機の姿に戦争をくいとめられなかった自責の念を噛みしめていた。
「日本のいちばん長い日」に続く「激動の昭和史」シリーズ第2作。原作は新名丈夫の「政治」、脚本は笠原良三。
何度か見たが、新聞の愚かさと可能性が響く。愚かさの方が強いのだがね。そう、何事も眉につばつけてというわけだ。世の中に絶対は無いのだし。同時に、小さな声、懐疑の大切さもよく分かる。岸田森扮する記者は大本営発表に早くから首をひねるのだが、上司をはじめとする全体の雰囲気がそうした声をつぶしていく。それにしても懲罰招集とは恐ろしい。小林桂樹が東条をやると、い い人に見えてくるのだが。いくつかこの時代を描いた本を読むと、天皇への忠誠が第一というメンタリティーを持つ人物だったようだ 。
「喜劇 一発勝負」1967年、松竹
ハナ肇、倍賞千恵子、加東大介、北林谷栄、山田洋次監督
老舗旅館二宮荘の長男孝吉(ハナ)は女を囲い、父の忠(加東)と大喧嘩して家を出た。水商売の女が旅館に来て、孝吉の子供マリ子を置いていった。それから十数年、孝吉が戻ってきた。母礼子の一周忌の日だった。その夜、孝吉は父の 友人の石丸医師と酒を飲み酒を飲み過ぎ倒れてしまった。翌日、孝吉の葬儀が営まれたが、棺の中から孝吉が生き返った。やがて孝吉は、会社を設立し、鉱山技師山口(谷啓)、青田(桜井センリ)、赤山(犬塚弘)と温泉のボーリングに乗り出した。忠は不満だったが、計画も頓挫し掛かったときに良質の温泉が噴き出した。孝吉はたちまち町の成功者になった。
山田洋次と宮崎晃が共同で脚本。撮影は高羽哲夫。豪快なハナ肇としっかり者の妹倍賞、老舗旅館が舞台であれば、なにやら男はつらいよ的だが、温泉を当てて大成功してしまうのはこの映画ならでは。たまには大成功もいいか。ヘルスセンターを建てるのだが、南洋に行きたいという旅館に古くからいた北林谷栄の願いを叶える。あれは常磐ハワイアンセンターかな。ちょうど前年の1966年にオープンしている。
「拳銃無頼帖 明日なき男」1960年、日活
赤木圭一郎、宍戸錠、笹森礼子、野口博志監督
抜き射ちの壇竜次(赤木)は、サブという男からコルトの譲が岐阜の病院にいると聞き、岐阜に見舞いにやってきた。実は竜に大事な取引きの邪魔をされ、東京から追われた岐阜の暴力団清流会会長の辻堂(水島道太郎)の罠だった。岐阜駅で殺し屋が狙っていたが、若い男が自家用車にひき殺される騒ぎのため、竜の姿を見失い、失敗した。竜は警察で取り調べを受けたが、その留置場で病気のはずの譲に出会う。留置場を出た譲は、清流会の事務所に行き、辻堂に竜殺しを頼まれる。そして、辻堂のもとに、麻薬王高の情婦となった妹のスミ(南田洋子)が上京してきて、高が高飛びの費用を作るため麻薬をさばこうとしている話を辻堂に打ち明ける。一方、留置場を後に出てきた竜は、仕事を探しに有村(藤村有弘)のもとを訪れ、有村に用心棒になるよう頼まれる。そこには籠の鳥のように育てられた娘道子(笹森)がいた。
拳銃無頼帖シリーズの第4作。城戸礼の原作「抜き撃ち三四郎」を、松浦健郎と朝島靖之助が脚色した。このころの岐阜は柳ヶ瀬がもっとも栄えていた時代だ。音楽は山本直純。
宍戸錠との掛け合いのリズムが心地よい。互いに相手を知らない、留置場での最初の会話は面白い。ちなみに赤木の愛称トニーはトニー・カーチスに似ているからだという。