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福祉仕事と育児で「兼業」中。読書録や仕事のことを徒然なるままに。三重県伊勢市在住。娘たちは2013年生まれと2015年生

濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』

2012-06-23 17:13:32 | Book
 なぜ自分が仕事を辞めるに至ったのか、なぜベトナムでは職場における女性の割合がかなり高い(80%くらい)のか、なぜ映画『ガール』に出てくる女性たちはみな「頑張っているけどしんどい」状況なのか(私は見てませんが、夫が力説するのを聞く限り)・・・私の中ではかなりタイムリーなこういう疑問は、日本型雇用慣行に起因しているのではないか。この本を読んで、いろいろな線がつながった。知識を得るとともに、概念を整理してくれる本は非常に意義深いと思う。私憤が公憤につながった気がする。

 本書の内容は幅広く、制度の歴史や判例の解釈を中心に教科書的に説明している。それでも、ページ数は少ないので読みやすい。冒頭のような問題意識をもとに、日本型雇用慣行とその帰結について、少し整理してみたい。

 「日本型雇用慣行」とは、つまり「メンバーシップ型」雇用だという。これに対し、おそらくベトナムを含む欧米型、(日本以外型?)は「ジョブ型」。メンバーシップ型では、特定の職務・部門ではなくある会社に就職するので、人事異動が部門横断的になされる。ジョブ型では、市場環境の変化などである部門を縮小するとすれば、人事異動なく人員が削減される。その逆もしかり。メンバーシップ型の方は、解雇の機会は少ないが、仕事が専門的ではなくなる可能性が高い。

背景:長期安定雇用思考/戦時中の雇用統制の影響/1950年代からの技術革新による装置産業での人員余剰・・・
→メンバーシップ型雇用

→なるべく解雇せず、部門横断的な人事異動
→職務ごと(人事異動ごと)に賃金水準変わると不公平感・人事異動困難なので
 定期昇給制・年功賃金
→職務ごとに労働条件交渉できないので企業別労働組合
→労働時間・就業場所の限定なく、人事部に権限集中するため人事査定を
 パスするための長時間労働助長
→特定の専門家になりにくく転職難しい

・・・この流れの中で、自分にふりかかった禍を解いてみると、部門横断的な人事異動の不可解さ(→仕事やる気をなくす)、有無を言わさぬ地域移動(配偶者、家族での生活を犠牲に)というところがまず、いまだにナンセンスと思っている。就職時に、これらが前提で就職しているわけではあるけれど、はっきり言ってやる気ある人にとって、日本のほとんどの会社では「Yes」以外に答えは用意されていない。この不利益が、(地域限定的、ジョブ限定的な)派遣社員との賃金差を正当化させてしまっている歪んだ構図は、本当に腹立たしい。
特に、出産や育児でキャリアに息継ぎをいれなければいけない女性は、部門横断的な異動でキャリアを分断されたり、地域を動かされたりすることの不利益は非常に大きく、つねにこの不確定要素が人生プランを揺るがすと考えなければいけない。

なぜほぼ日本だけがメンバーシップ型になったのか。歴史からいろいろと解説してあるが…結局、戦後の電産労組が、この賃金体系を「選んで」経営側に求めていったということではないだろうか。その際、戦前、戦中の賃金統制や職工たちの労働市場における「メンバーシップ」に近い慣行は、ルーツではあるだろうが、実際1950年代くらいまで経営側は「ジョブ型」を提唱していたようだし、必ずしもずーっとメンバーシップ型でなくてはいけないという理由はなかった。

専門性が以前に増して重要になっている国際社会で、日本人がこの雇用慣行を続けていくことのデメリットは非常に大きいと思う。女性が働き続けることが、まだまだ難しい原因もここにあると思うので、なおさら弊害ばかり大きいように見える。
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