この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#16 佐藤紅緑著「ああ玉杯に花うけて」Ⅰ

2005年02月08日 | 日本文学
先週ある会合で若い地元の活動家が、「NHKで今度はじまった佐藤愛子女史原作のサトウ・ハチローをテーマにしたドラマがすごく面白い。明治人の気骨がしのばれる。」と話していた。私はこのドラマを見ていなかったので、昨日の放送を録画して今日見てみた。

昨日のドラマはサトウ・ハチローが妻以外の女性に夢中になるというのが主題だったようだ。妻に問い詰められて、「浮気でなくて本気だ」とハチローはのたまう。家を出てこの女性と住むためにこの女性の所に出て行こうとするハチローを幼い子供が二人で父親に出ていかないでと泣きながらすがりつく。この幼い子供の二人のうちの一人が愛子女史らしい。(と思ったらそうではないらしい。愛子女史はハチローの妹のようだ。)乳のみ子をおぶったハチロー夫人は父親にとりすがる二人の子供をたしなめる。「お父さんは仕事にいいらっしゃるのだから。」と。
昔の女は偉いというべきかどういうべきか?
(これを見ると、ハチローに気骨があるという評価はちょっとそぐはない。地元の若い人が言った気骨がある人というのは紅緑先生のことかもしれない。)

なかなかおもしろそうだ。

 カフェーでハチローがたまたま知り合いのやくざの親分に会う。やくざの親分が言う。
親分「紅緑先生はお元気にしてるのかい?」
ハチロー「はい。」
親分「先生の”ああ玉杯に花うけて”という小説がやたら売れてるそうだね?」
ハチロー「死ぬほど売れてます。」
この親分はハチローの父親の佐藤紅緑に心酔しているらしい。紅緑先生を褒める。

私も中学生のころ、友達に借りてこの本を読んだ。中学生なりに感動した。
私が今持っているこの本は勿論中学生の頃読んだ本ではない。昭和50年(1975年)
に講談社が戦前の少年倶楽部に連載しその後単行本として出版してていた少年向け人気小説を「少年倶楽部文庫」として文庫版で再発行したのだ。私は懐かしいこの本を身近に置きたくて買ったのだ。

裏表紙にこう紹介してある。

「貧しくて中学にゆけぬ豆腐屋のチビ公、そのチビ公と変わらぬ友情ではげます中学生柳君。
 中学一の無法もの”生蛮”の坂井生や軟派でなまいき野郎の手塚生。黙々塾の篠原老師、塾出身の一高生安場青年。彼らが織りなす多感な青春の日の友情物語。佐藤紅緑の純情小説の古典的名作」
(若い人のために蛇足ながら注釈すると、中学というのは旧制中学、一高は旧制第一高等学校だ。)

この作品を懐かしいと思うのは私より年上の方であろう。
少年倶楽部では昭和2年(1927年)5月号から昭和3年(1928年)4月号に連載されたのだそうだ。勿論私が生まれる前だ。      (つづく)

佐藤紅緑著「ああ玉杯に花うけて」講談社(少年倶楽部文庫2)270ページ 昭和50年(1975年)10月16日第1刷、同年12月1日第5刷発行 (定価340円)

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