日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

今日は新橋(番外編)

2013-02-28 21:13:49 | 居酒屋
季節とともに食材が冬から春へと移り変わって、酒場めぐりが俄然楽しくなってきました。本日も職場が早く引けたのをよいことに、一杯引っかけてから帰ります。訪ねるのは毎度おなじみ「虎ノ門升本」です。
四季の移り変わりが表れるのは大衆酒場の品書きとて例外ではなく、壁に貼られたおびただしい短冊の中には、みつばに空豆など春から初夏にかけての食材が加わってきました。中でも本日出色だったのは春野菜の天ぷらです。字面を見れば陳腐にも思えるこの品ですが、うど、タラの芽、ふきのとうなど早春の野菜と山菜を盛り合せた皿が差し出されるやいなや、思わずほくそ笑んでしまいます。しかもよく見ると二つとして同じものがなく、菜の花、筍、こごみにアスパラと合わせて七品の彩り豊かな一皿でした。この天ぷらとホタルイカを春の風物詩とすれば、対するぶり刺とたらちりは冬の味覚です。好対照の品書きは、まさにこの時期ならではの楽しみといってよいでしょう。

虎ノ門升本
東京都港区虎ノ門1-8-16
03-3591-1606
1630PM-2200PM(LO)土日祝日定休

手取川・霞ヶ関
ぶりの刺身
春野菜天ぷら
ホタルいか沖漬
たらちり
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春の予感 2013(3)

2013-02-27 23:16:11 | 旅日記
先日新潟から戻ったときに思ったのは、列車を降りた瞬間に感じる都会の暖かさがそれほどでもなかったということです。もちろん、風雪吹きすさぶ日本海側に比べれば、煌々とした月明かりに照らされた都会の夜は、早春の静かな夜と表現するのがふさわしいものでした。しかし、二月下旬の都内にしては、厳冬といわれた去年に勝るとも劣らない寒さだったのも事実です。実際のところ、偕楽園の梅はまだ一分咲きにも届いておらず、異例の遅咲きだった去年と比べてもほとんど変わりません。過去三年続いた遅咲きから、平年並みに戻るといわれる桜の開花ですが、なんだかんだで今年も開花は延びるかもしれません。
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訪ね訪ねて麻布まで

2013-02-26 20:52:54 | 居酒屋
居酒屋の品書きに春の気配を探し求めて、今週も麻布十番に繰り出しました。本日訪ねるのは昨秋以来およそ半年ぶりの再訪となる「はじめ」です。
先週訪ねた「こま」では野菜を中心に春の食材がいくつか並び、その後訪ねた長岡の「魚仙」では、吹きすさぶ風雪ともども冬が色濃く残っていました。そして今週再び都会へ舞い戻ると、まず目に止まったのはカウンターに並んだ四つの大皿です。右端には菜の花のおひたし、左端にぶり大根という取り合わせに、冬から春への移り変わりが見事に表れており、それだけでも思わずほくそ笑んでしまいます。そして、壁に掛かった品書きには、タラの芽、山うど、ふきのとうと春野菜が三種、さらには酢味噌と沖漬けを選べるホタルイカが。わずか一週経つ間に、季節はよりいっそう春めいてきました。
前回ここを訪ねたのは、厳しい残暑が続きながらも少しずつ秋の気配が漂い始めていた9月の上旬、つまり夏と秋との境目で、そのとき選んだのは旨味の染み込んだ秋茄子と茗荷の煮付け、そして見た目にも美しい秋刀魚の姿造りでした。それから半年が流れ、冬と春との境目を迎えた今、季節の移り変わりを的確に捉えた品書きはまことに秀逸です。これこそ同じ店に何度も足を運ぶ楽しみの最たるものといってよいでしょう。

それとともに気付いたことが二つあります。一つはこぢんまりとした店内の居心地です。カウンターに大きなテーブル一つだけという店内の造りについては前回長々と語ったところ、さらに付け加えるなら天井が低くて厨房との距離が近く、しかもそれを狭苦しく感じるよりむしろ居心地よく感じるところにこの店の妙があります。店内の設えは必ずしも高級なものではなく、年代相応に古びているにもかかわらず、一人静かに盃を傾ける向きには、このこぢんまりした空間がなぜか心地がよいのです。近隣で愛用してきたといえば何といっても「こま」、次いで「山忠」といったところですが、「こま」の真骨頂は季節感豊かな品書き、気のきいた客あしらい、良心的な価格設定などにあり、店内の造りはごく平凡です。店の造りだけで延々語れるという点では、「山忠」もなかなかのものではありますが、こちらは活気に満ちた正統派の大衆酒場と形容するにふさわしく、「はじめ」とは毛色が違います。麻布十番で一人静かに盃を傾けられる店ということになると、自分が知る中ではこの店の右に出るものはないかもしれません。
もう一つ気付いたのは、この店に関連してきわめてしばしば語られる予算のことです。本日は前回に比べて一品多かったということもあり、その分勘定も上がっています。例えば虎ノ門の「升本」では酒も肴も一品五百円見当と覚えておけばおおよそ勘定の見通しがつくところ、この店では一品およそ八百円見当になるというのが、二回訪ねて何となく解りかけてきました。良心価格の「こま」と「山忠」に対して、ここの価格設定は良くも悪くも麻布十番のそれです。とはいえ無意味に高いわけではなく、気のきいた肴と居心地に金を払うと思えば、少なくとも自分の中では正当な範囲内と思います。

その結果導かれるのは、派手な呑み食いはこの店に適していないという仮説です。存分に呑み食いがしたいなら「こま」か「山忠」に行くべきで、ここは適量の酒と肴と居心地を楽しむ場とするのが好ましい使い分けではないでしょうか。思うに、かの口コミサイトで語られる高額な勘定が飛び出すのは、このあたりの勘所をわきまえない一見客があれこれ注文するからと推察します。終始自分のペースを守れる一人酒と違って、複数名ではつい必要以上の呑み食いをしがちになるものです。その結果、調子に乗ってうに丼などの高額品をいくつか頼んでしまったとすれば、口コミサイトの平均予算に達しても不思議ではありません。
かつて教祖がこの地に居住した頃、はしご酒の最後に決まって立ち寄ったのがこの店だったといいます。なるほど、あらかた腹が満ちたところで、最後に一人で軽く一杯引っかけたいときには、この店に足が向くのも宜なるかなです。達人の目の付けどころは違います。

はじめ
東京都港区麻布十番1-5-4 藤田ビル
03-3404-8736
平日 1700PM-2330PM(LO)
土曜 1700PM-2230PM(LO)
日祝日定休

白鷹二合
お通し(菜の花辛子和え)
ホタルイカ酢味噌
タラの芽天ぷら
ハスはさみ揚げ
おにぎり・なめこ汁
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-25 00:23:32 | 甲信越
帰宅しました。春まだ浅い信濃路を旅するつもりが、終わってみれば信州は単なる前座に過ぎず、後はひたすら越後の冬の厳しさを思い知らされる旅になりました。二月の下旬や三月の上旬といえば、雪国でも徐々に寒さが緩む頃で、積もった雪が溶けかかったり、みぞれ交じりの雪が降ったりする光景に早春を感じる場面がこれまで多かったように思います。それが今回、寒さは北東北と遜色ないほど厳しく、乾いた細かい雪が風に吹かれて轟々と舞い上がり、挙げ句の果てには列車が止まって大幅な迂回まで強いられました。よくよく考えれば、四月の半ばまで雪が残る土地なのですから、二月のうちはこんなことが起きても不思議ではありません。先日の三連休で終わりかと思っていた厳冬期の旅を、図らずももう一度経験できたのはよいことでした。
東北、東海、甲信越の順で、寒地と暖地を交互に旅してきて思うのは、やはり二月から三月にかけては冬の名残と春の気配を探す旅が最もふさわしいということです。一泊二日で行き来できる範囲なら北陸、信州、水戸、会津などが好適で、春分の飛び石連休を使って九州まで遠征するのも悪くないでしょう。いずれにしても、高知で桜が咲く三月の末まで、活動の題材には事欠きません。そんなとき、沖縄の優先度はどうしても落ちてしまいます。昨年末に企てたまま延び延びになっている沖縄への船旅は、どうやらこのままうやむやになりそうです。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 22:09:32 | 甲信越
全行程終了です。最終の新幹線で帰路につきます。
図らずもよい酒場との出会いに恵まれ、その点では経路変更が結果として吉と出たのに対し、不本意ながら凶と出てしまったことも一つあります。最終走者がMaxになってしまったことです。居住性を度外視して収容力を追求するという、戦時中の63系電車と同じ発想で造られた車両だけに、二階建て新幹線といってもかつての100系とは全くの別物で、1階席、2階席、グリーン車のどれをとってもまるで話になりません。代走で701系に乗せられるという屈辱を思えばまだましとはいえ、空いた長野新幹線で帰るつもりが、スキー客で混み合うMaxに変わってしまうのですから、この落差も相当なものです。

★長岡2156/Maxとき352(352C)/2340東京
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 20:46:37 | 居酒屋
長野経由から長岡経由への変更を余儀なくされて困ったのは、遠回りになることでもなければ時間を食うことでもなく、最後に立ち寄る呑み屋の心当たりがないことでした。「魚仙」が開いていれば何の不足もないとはいえ、今日はあいにく定休の日曜日で、以前「酒場放浪記」に出た店も同じく定休日です。地方都市の苦悩をそのまま形にしたような長岡駅前のうらぶれた街にあって、日曜も呑める店の数などたかが知れており、ましてや旅の最後を飾るにふさわしい店ということになると、限られた時間で探し出すのは至難の業というものでしょう。最後に酒場で一献傾けるのが、汽車旅ならではの愉しみでもあるだけに、それが台無しになってしまうのが何より困るというわけです。
半ば諦めつつも駅前のロータリーを見渡すと、まず視界に入ったのはチェーン店と思しき大店で、もしかするとそれなりに満足できるかもしれないと思いつつも、可もなく不可もなくといった雰囲気を察して敬遠。次いで視界に飛び込んだのが、この手の場所にしては珍しい、小料理の看板を掲げた一軒の店でした。まさにこれだと確信するまでには至らないとしても、一見した店構えと店先に掲げられた品書き、さらには窓からのぞく店内の雰囲気からして、それなりに期待はできそうです。視界には他にめぼしい店もなく、帰りの列車の時刻からして、時間をかけて探すこともできません。その結果、直感だけを頼りに小料理屋の暖簾をくぐったというのがここまでの顛末です。そして、この判断に誤りはありませんでした。

入って左に掘りごたつの小上がりが六卓、右に七人掛けのカウンターを一本配した店内は明るくこざっぱりとしており、かつての蔵か古民家のものと思しき太い梁が、飾り物とはいえ天井に巡らされるなど気の利いた造りになっています。欅の一枚板を奢ったカウンターの頭上からは酒林が下がり、目の前には品のよい大皿が重ねられ、端には立派な生け花が飾られて、独り酒を酌むにはおあつらえ向きです。
越後の地酒は有名どころに偏りがちながらも、しぼりたてなど旬のものが揃い、日替わりの品書きは「魚仙」と同様A4一枚にまとめられて過不足がありません。ふぐやら白子やら冬場のものを中心に、ふきのとう、菜の花、ホタルイカなどはしりの品がいくつか混じるところも似通っています。高価なものはそれなりのお値段ながら、すじ煮、もつ煮など定番の品々も揃っており、居酒屋使いには好適。それでいながら、凝った器と盛り付けには一枚格上のものが感じられ、「居酒屋」でもなく「割烹」でもなく「小料理」を標榜するのが納得できます。油揚げなど、一人ではもてあますものを半分量で供してくれる心遣いもありがたく、海老の頭で出汁を取った味噌汁もまことに秀逸です。新潟からの帰りに独り呑む機会が巡ってくるとすれば、もう一度世話になりたいと思う一軒でした。

松本
長岡市城内町2-甲749-10 水瀬ビル1F
0258-35-1788
平日 1130AM-1400PM/1700PM-2300PM
日曜 1700PM-2200PM
月曜定休

〆張鶴二合
お通し(まぐろ山かけ)
鰺なめろう
栃尾油揚
ふぐ唐揚
おにぎり・味噌汁
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 20:34:43 | 甲信越
長岡に着きました。寒い中延々三時間待たされた挙げ句、経路変更を余儀なくされるという散々な結果に終わったものの、ほぼ原型の485系で移動できたのがせめてもの救いでした。これで最後に居酒屋の一つも探り当てることができれば、少なくとも痛み分けということにはなるでしょう。日曜だけにそもそも見込みは薄く、なおかつ今からではじっくり見定める時間もありませんが、ともかく駅前を歩いてみたいと思います。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 20:06:42 | 甲信越
只今定刻より55分遅れて柏崎を出ました。この先徐行区間はないため、突発的な事態さえ起きなければ30分弱で長岡に着きます。とりあえず一安心といったところです。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 19:14:48 | 甲信越
この展開を予想できた方がいらっしゃるでしょうか。結局「北越」で長岡へ向かうことにしました。あの後ほどなくして、長野方面への運転再開が20時以降になるとの情報が入り、この時点で長野経由は破綻。ほくほく線のダイヤも乱れて読みづらいため、先にやって来た「北越」に飛び乗った次第です。直江津に着いたときには余裕綽々だったはずが、このような苦肉の策を余儀なくされたのは、それだけ天候が急変したということでもあります。今回は越後の風雪の厳しさに終始圧倒されました。
列車は21分遅れで直江津を出ており、さらにこの先海沿いの区間を中心に徐行運転が見込まれているため、遅れはまだまだ拡大しそうです。しかし、ともかく走ってくれればなんとかなるでしょう。最終の新幹線が長岡を出るのは10時前です。到着時間が読めない上に日曜ということもあり多分に不確実ながら、駅前に気のきいた呑み屋を見つけられれば、そこで一杯引っかけて帰ります。

★直江津1846/北越7(1057M)/1936長岡
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 18:33:27 | 甲信越
さらに動きが。ようやく発車かと思いきや、今度は運転再開の目処が立たないとの案内放送が入りました。そういうからにはさらに三十分、一時間単位で遅れが出るのでしょう。こうなると長野経由で帰れるかどうかがいよいよ怪しくなってきます。七時を過ぎて新たな動きがなければ、ほくほく線経由という選択も考える必要がありそうです。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 18:22:10 | 甲信越
先ほど隣のホームに着発線変更との案内放送があり、荷物を担いで移動してきました。しかし入線までにはまだ時間が要りそうです。これで少なくとも二時間遅れ、長野に着くのが最速で八時過ぎといったところでしょうか。最終の新幹線は10時前なのでまだ余裕があるとはいえ、長野に着くまで気を揉み続けることになるのでしょう。ほくほく線経由で帰ればよいものを、時間も距離も確実性も劣る方をあえて選ぶというのですから、我ながら物好きな人間です。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 17:33:45 | 甲信越
ようやく動きがあり、長野方面から列車が入ってきました。しかし、折り返しの前に点検やら入換やらがあるとのことで、発車がいつになるかは依然として不透明です。待合室の外では轟々と風が吹いており、一筋縄では行かなさそうな気配が漂っています。少しでも早く出てくれればよいのですが。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 16:49:38 | B級グルメ
この先長くなりそうなので、駅そばを少し遅めの昼食とします。凍えるような冷たい風に吹かれた後ということもあり、温かいそばが身体に染み入るようです。駅そばがこれほどおいしく感じられる瞬間もそう多くはないでしょう。

直江津駅前食堂
上越市東町1-1
0255-43-1175
730AM-1930PM
もずくそば420円
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 16:33:24 | 甲信越
特急と交換して動き出したのも束の間、その後黒井で再び運転見合わせとなり、徐行運転の末76分遅れで直江津に着きました。終点を目前にしてもたついたとはいえ、今時のローカル線の普通列車然とした平凡な車両が、新快速も顔負けの速さで疾走する様は、自動車評論家の言葉を借りればさしずめ「羊の皮を被った狼」ということになるでしょう。トンネル内の信号場で交換するところなどもこの路線ならではでした。もっとも、これは全て関東と北陸を最速で結ぶという目的があってのことです。北陸新幹線にその役目を譲った後、この路線がどうなるのかが少し気になります。
それより気になるのがこの先の運転状況です。雪の影響で信越本線に遅れが出ており、この後折り返して長野行きとなる列車も一駅進んでは止まってを繰り返して、まだ県境を越えていないようなのです。実際のところ、直江津でも乾いた細かい雪が強風に吹かれて時折轟々と舞い上がっており、行く先の難航が容易に想像できます。長野へ着くのはいつになるか分からなくなってきました。
定時に出れば長野に着くのが六時過ぎのところ、この分だと直江津を出るのが最低でも一時間遅れます。途中駅で足止めされればさらに遅れるわけで、下手をすれば長野で一杯引っかける時間はなくなるかもしれません。とはいえ、ほくほく線と上越新幹線で帰るという安全策にも面白味がなく、今のところは何とかなるとたかをくくってこのまま待つことになりそうです。
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春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 15:33:08 | 甲信越
ただいま交換待ちでくびき駅に停車中です。交換相手の特急が強風により速度を落とすため10分遅れ、この列車も同じく速度を落とすためさらに10分遅れるとのことです。今の時点で定刻から40分少々遅れているので、直江津へ着く頃には一時間ほど遅れることになるのでしょう。もっとも、先月「あけぼの」で経験した四時間遅れを思えば、一時間など遅れのうちに入りません。新潟でこれほどの風雪に見舞われるのは初めてなのですから、むしろ貴重な経験と思えばよいでしょう。
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