日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

春まだ浅い信濃路へ 2013 二日目

2013-02-24 20:46:37 | 居酒屋
長野経由から長岡経由への変更を余儀なくされて困ったのは、遠回りになることでもなければ時間を食うことでもなく、最後に立ち寄る呑み屋の心当たりがないことでした。「魚仙」が開いていれば何の不足もないとはいえ、今日はあいにく定休の日曜日で、以前「酒場放浪記」に出た店も同じく定休日です。地方都市の苦悩をそのまま形にしたような長岡駅前のうらぶれた街にあって、日曜も呑める店の数などたかが知れており、ましてや旅の最後を飾るにふさわしい店ということになると、限られた時間で探し出すのは至難の業というものでしょう。最後に酒場で一献傾けるのが、汽車旅ならではの愉しみでもあるだけに、それが台無しになってしまうのが何より困るというわけです。
半ば諦めつつも駅前のロータリーを見渡すと、まず視界に入ったのはチェーン店と思しき大店で、もしかするとそれなりに満足できるかもしれないと思いつつも、可もなく不可もなくといった雰囲気を察して敬遠。次いで視界に飛び込んだのが、この手の場所にしては珍しい、小料理の看板を掲げた一軒の店でした。まさにこれだと確信するまでには至らないとしても、一見した店構えと店先に掲げられた品書き、さらには窓からのぞく店内の雰囲気からして、それなりに期待はできそうです。視界には他にめぼしい店もなく、帰りの列車の時刻からして、時間をかけて探すこともできません。その結果、直感だけを頼りに小料理屋の暖簾をくぐったというのがここまでの顛末です。そして、この判断に誤りはありませんでした。

入って左に掘りごたつの小上がりが六卓、右に七人掛けのカウンターを一本配した店内は明るくこざっぱりとしており、かつての蔵か古民家のものと思しき太い梁が、飾り物とはいえ天井に巡らされるなど気の利いた造りになっています。欅の一枚板を奢ったカウンターの頭上からは酒林が下がり、目の前には品のよい大皿が重ねられ、端には立派な生け花が飾られて、独り酒を酌むにはおあつらえ向きです。
越後の地酒は有名どころに偏りがちながらも、しぼりたてなど旬のものが揃い、日替わりの品書きは「魚仙」と同様A4一枚にまとめられて過不足がありません。ふぐやら白子やら冬場のものを中心に、ふきのとう、菜の花、ホタルイカなどはしりの品がいくつか混じるところも似通っています。高価なものはそれなりのお値段ながら、すじ煮、もつ煮など定番の品々も揃っており、居酒屋使いには好適。それでいながら、凝った器と盛り付けには一枚格上のものが感じられ、「居酒屋」でもなく「割烹」でもなく「小料理」を標榜するのが納得できます。油揚げなど、一人ではもてあますものを半分量で供してくれる心遣いもありがたく、海老の頭で出汁を取った味噌汁もまことに秀逸です。新潟からの帰りに独り呑む機会が巡ってくるとすれば、もう一度世話になりたいと思う一軒でした。

松本
長岡市城内町2-甲749-10 水瀬ビル1F
0258-35-1788
平日 1130AM-1400PM/1700PM-2300PM
日曜 1700PM-2200PM
月曜定休

〆張鶴二合
お通し(まぐろ山かけ)
鰺なめろう
栃尾油揚
ふぐ唐揚
おにぎり・味噌汁

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