日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 23:15:51 | 居酒屋
深紅の大優勝旗に先んじて、日本シリーズの優勝旗が白河の関を越えました。祝杯がてら二軒目へ繰り出します。

一昨日の晩、当てにしていた焼酎バーがいずれも閉まっていたと申しました。しかし、文化通りを歩いていると、思いがけない場所に見慣れた看板が。そうです、そのうちの一軒は場所を変えて営業していたのです。これで二軒目は自動的に決まりました。新装開店なった"S.A.O"を訪ねます。
電車通りの北側から、文化通りの最も賑やかな場所へと移ったのですから、「栄転」ということにはなるのでしょう。しかしながら、自身にとって今回の移転は残念な結果となってしまいました。というのも、前の店とは別物といっていいほど、それも悪い方向に変わってしまったからです。

玄関をくぐると背の高いカウンターが一本あり、正面に一升瓶が並んでいるという造りは、一見するとほぼ同じです。しかし、店が全体的に安普請となってしまいました。照明が明るくなったことによる影響はあるにしても、単なる気のせいではないでしょう。新装開店間もない今はよいとしても、五年、十年使い込んでいったときに、年相応の味わいが出てくるようには思えません。
それ以上に残念なのは、品書きが全く変わってしまったことでした。カウンターの右側にあった大きな黒板はA4二枚に代わり、そのうち一枚は酒盗にたこわさなどいわゆる酒のあてです。もう一枚の品書きも以前に比べて大分絞られています。しかも、それらは店内で調理するのではなく、近くにある系列店から運んでくるのだそうです。たしかに、もともとバーか何かだったとおぼしき雑居ビル内の立地からして、店内では大したものが作れないのも無理はありません。

聞けば一昨日が新装開店初日だったとのこと。一昔前の流行が去り、中心街を外れた店では集客もしづらくなる中、系列店がいくつか集まる文化通り周辺に店を移し、肴をいわば「出前」してもらうことで厨房を省いたり、系列店の客を誘導するなどの効果を狙ったというのが店長の弁です。
このように、移転の理由はきわめて単純明快です。しかし、電車通りの北側の静かな立地と、居酒屋使いもできるほど充実した肴がこの店のよさだっただけに、それらがいずれも失われてしまったのは残念というほかありません。

まあ店主としては、系列店の中でも最古参であるこの店を、どうにかして盛り上げたいという考えがあったのでしょう。自分にとっても、かれこれ十年近く世話になってきた思い出の残る店です。今後少しでもよい方向に変わってくれることを期待します。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 19:06:48 | 居酒屋
「ぶんご」に振られてスライド登板を余儀なくされた一昨日に対し、今日は不動のエースが控えています。日曜でも安心して呑めるのはこの店のおかげです。一軒目は「分家無邪気」の暖簾をくぐります。

名物の味噌おでんと、七点盛りの豪勢な鶏刺しの二枚看板を中心に、酒も肴もよりどりみどりで良心価格。初見の人に鹿児島でおすすめの呑み屋はと聞かれれば、私は「菜菜かまど」よりもこの店を推すでしょう。しかし、今日に関する限り、この店で呑むにあたっては一つだけ懸念材料がありました。件の祭のことではありません。本日最終戦を迎えた日本シリーズに関してのことです。というのも、ここの店主が熱狂的な巨人ファンなのです。
かつては選手名鑑が愛読書というほどプロ野球に傾倒していた自分も、近鉄の撤退を発端にした一連の騒動以来すっかり熱が冷め、今では巨人のレギュラーすら知らないという野球音痴になってしまいました。その騒動から生まれた東北楽天が、今年初めて日本シリーズに進出し、王手をかけて迎えた昨日の第六戦で足をすくわれるというまさかの展開を経て、今日の最終戦に至ったのは周知の通りです。当然とるべき第六戦を落として崖っぷちに立たされた楽天が、背水の陣で望む最終戦が戦われるこの日に、巨人ファンの巣窟というべきこの店で呑むのがいささかためらわれたとでも申しましょうか。
もちろん、上記の通り今や完全な野球音痴となった私のことですから、どちらが勝とうとさほどの関心はないのです。しかし、巨人軍はともかく、私はこの「巨人ファン」という人種が、有り体に言えば好きではありません。生来の天の邪鬼としては、ある意味当然のことでしょう。楽天が無残にも巨人の餌食となる中、巨人ファンが歓喜するという状況を想像するだに、今日だけはこの店に足を運ぶことが躊躇された次第です。しかしながら、主義主張を抜きにすれば、この店が天文館でも屈指の名酒場であることは事実であり、何よりここの味噌おでんと鶏刺しをいただかずして終わるわけにはいかなかったため、結局暖簾をくぐったというのがここまでの顛末でした。

こうして暖簾をくぐると、果たせるかな店内では今まさに日本シリーズの中継が流れています。そして、スコアは楽天の1点リードです。宿を出るとき、初回早々得点圏に走者を背負い、楽天選手がマウンドに集まるという危うい光景を目にしていただけに、天文館まで歩く間に状況が一変しているとは思いませんでした。
一喜一憂はしたくなかったにもかかわらず、通されたのはよりによってTVに正対するL字カウンターの一辺でした。その列に陣取るのは、観戦がてら呑みに来た巨人ファンばかりです。何しろ、サイン入りの色紙、バット、ユニフォームにボールだけならともかく、おしぼりがいわゆるジャイアンツカラーなのですから、こうなることはある意味必然でしょう。せめて彼等の喜ぶ顔は見たくないものだと思いつつ、まずはお約束の味噌おでんと串焼きから始めます。

ところが、席についてほどなくすると、楽天岡島の痛打が外野の頭を越えました。虎の子の一点をどこまで守れるかと思っていたところが、これで俄然面白くなってきます。その後も先発美馬の変化球に巨人打線のバットが次々と空を切り、両隣からは聞こえてくるのは溜息ばかりです。絶体絶命の最終戦で見せる力投は、昭和51年の阪急足立を彷彿とさせます。
次は当然鶏刺しを注文するものの、一瞬たりとも目の離せない展開で、酒どころではなくなってきました。昨日順当に決めてくれれば、今日は心置きなく呑めたものをと仮想せずにはいられません。あらかた片付いたところで、今度は一発が飛び出して三点差に。結局、一時間少々滞在して隣客の歓声は一度も聞こえてきませんでした。

どうやら、この続きは勝負の帰趨が決してからの方がよさそうです。腹ごなしと酔い覚ましを兼ねて一旦宿に戻ります。

分家無邪気
鹿児島市東千石町11-4
099-222-4976
1700PM-2300PM(LO)第二・第四月曜定休

不二才・アサヒ・三岳
突き出し(〆鯖ごま和え)
おでん二品
串焼き二品
地鳥刺
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 18:16:32 | 九州
その後はさしたる見せ場もないまま鹿児島港に到着。只今宿に入って一息ついたところです。
結局、錦江湾に入ってからは雨に降られて散々でした。浮いた時間でblogの更新だけが着々と進み、積み残していた一昨日から昨日までの記録もようやくまとまりました。しかし、当然ながらblogを更新するために旅をしているわけではありません。このような本末顛倒は今日限りであってほしいものです。

この後はもちろん天文館へ繰り出します。日曜の晩とはいえある程度の心当たりはあるため、その点では何の問題もありません。しかし、それよりも問題となることが二つあります。一つは雨です。昨日のような小雨ならともかく、今日はあいにく本降りとなってまったため、機材を持たずに傘だけ差して宿を出ます。
そして、これが何より問題なのですが、先々週の名古屋に続き、またしても祭に重なってしまったのです。「おはら祭」というらしく、今年で第62回ということは、名古屋まつり以上の歴史があるということになります。半世紀以上も続く祭を、どちらも知らずに乗り込んだ自分がもちろん悪いのですが、そうと知っていたらよりによってこんな日を選んだりはしなかったでしょう。よく宿がとれたものです。
祭ということで、普段は定休の店が臨時営業してくれれば願ってもない話なのに対し、人出が増えて呑み屋が混めば最悪の事態となります。果たしてどちらに転ぶでしょうか。天気も祭も自分にはどうすることもできないので、運を天に任せるしかなさそうです。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 15:58:01 | 九州
只今開聞岳を横切り、これで完全に湾内へ入りました。右側から近付いてきた種子島発のフェリーは、その後本船の前を横切り、今は左前方を航行しています。しかし、日が傾いて空が暗くなり、おまけに雨も降り出して全く絵になりません。これなら昨日の方がまだましです。
なんだかんだで楽しめた屋久島に対し、錦江湾ではもし晴れていればと臍を噛んでばかりです。これはもう再挑戦するしかないでしょう。来年は種子島でほぼ決まりました。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 15:30:53 | 九州
佐多岬の沖合を通過し錦江湾に入りました。改めて眺めると、真横から見たときの山並から岬への落ち込み方が、奇しくも四国の佐田岬とよく似ています。外海から入って岬を通過するとき、このフェリーでは半島が右手になるのに対し、佐賀関から向かってきたフェリーではこれが左手になるため、見た目としては鏡に映したような形です。やはり、同じ場所に何度か足を運んでも、新しい発見が何か一つはあるものです。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 15:22:48 | 九州
天候も昨日と全く同じで目新しさは何もなし、と思ったところが、大隅半島の彼方から種子島発のフェリーが現れ、先ほど佐多岬の灯台を横切っていきました。彼方を航行しているあの船との距離が次第に縮まり、昨日の往路と同じく抜きつ抜かれつが始まるのでしょう。眺めはともかくこれだけは楽しめそうです。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 15:17:37 | 九州
風呂から上がると、右前方から佐多岬が近づいてきました。彼方にある灯台が昼間でもはっきりと分かります。加えて左前方には、ぼんやりかすんでいるだけとはいえ開聞岳の影が。しかし、残念ながら先へ行くにつれて平板な曇り空となってしまったため、眺めに関しては昨日と何ら変わりません。さらには風も強く、わざわざデッキで眺める意欲も今ひとつ起きません。まあ、ここからはなんだかんだで出たり入ったりを繰り返すのでしょう。鹿児島まではあと二時間半の航海です。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 15:07:36 | 九州
続いては渡りに船の風呂があったため、ここで半日分の汗を流します。浴槽は使えずシャワーのみの利用とはいえ、夜行でもないのに風呂があるとは何とも贅沢な話です。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 14:25:24 | B級グルメ
一区切り着いたところで、船内のスタンドでうどんをいただきます。今日は朝食を存分にとっており、夜も天文館で呑み歩くため、昼食に関する限り、味がどうこうといったことは抜きにして、船内で食事ができるという貴重な機会を楽しむことにした次第です。ところが、うどんはゆで置きながらもコシがあり、福井か栃尾かと思うほど分厚い油揚げがほどよく出汁を吸ってこれまた秀逸。これは予想外の名品でした。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 14:10:20 | 九州
出航から40分で屋久島の影がほぼ視界から消え去り、右手にぼんやり浮かぶ種子島の影と大差なくなってきました。この先錦江湾に入るまで、一時間ほど単調な航海が続きそうです。その頃までに、この空が少しでも晴れてくれればよいのですが。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 13:53:25 | 九州
出航から20分が経過しました。行く手には何一つ遮るもののない大海原が広がり、背後にある屋久島の影が次第に遠ざかっていきます。しかし、雨は止んだというのに雲はむしろ今日の方が多く、山々の偉容も隠れているのが残念です。加えて季節外れの蒸し暑さが日増しにひどくなり、今日はデッキで風を受けていても軽く汗ばんできます。これでは島影が見えなくなるまで立ち続けるという気分にもならないため、往路と同じ出入口の脇のベンチに陣取り、状況に応じて出たり入ったりという展開になりそうです。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 13:41:31 | 九州
船首を反転させたところで長声一発。港外に向けて針路をとります。またいつの日にか…
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 13:33:41 | 九州
定刻通りに出航しました。岸壁では見送りの一団が紙テープを握りしめつつ手を振っています。自分が見送られているわけでもなんでもないとはいえ、そこはかとなく旅情を誘う光景です。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 13:24:05 | 九州
宮之浦港に戻り、相棒と別れてフェリーに乗り込みました。縄文杉を始めとして、屋久島の代名詞とでもいうべき場所には近寄りもせず、海沿いを半周しただけとはいえ、自分にとって離島の旅とはこんなものです。最後まで青空が広がることはなかったものの、徹頭徹尾雨という予報の割には、天候もよく持ちこたえてくれたものだと思います。
世界遺産となれば観光地かと思いきや、俗な郊外型店舗などが一切なく、孤高を貫いているかのような佇まいが印象的でした。それを含め、なんだかんだで楽しめたという点では、思い残すことは何もありません。丸一日の滞在を振り返るなら、「来てよかった」の一言に尽きるでしょう。
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色づく秋の九州へ 2013三日目

2013-11-03 12:52:38 | 九州
交通量のほとんどない県道を快走して宮之浦に戻りました。気付けば灯台から港の入り口まで、20km以上にわたって信号は皆無でした。北海道も顔負けの長閑さです。
このことからも分かるように、島内の西側は、昨日走った東側と比べても目に見えて閑散としています。人家も田畑もまばらな淋しい沿道は、沖縄本島の北部を彷彿とさせ、建物の造りもどことなく似ているようです。その一方で、一面に広がる凪いだ海は奄美大島のようでもありました。やはり、離島にはその島ならではの光景があります。屋久島を再訪するかどうかはともかく、離島の旅はこれからも年に一度の恒例行事にしたいものです。
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