菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

白い夜、黒い昼。  『それでも夜は明ける』

2014年03月23日 00時06分05秒 | 映画(公開映画)
で、ロードショーでは、どうでしょう? 第543回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」







『それでも夜は明ける』










南北戦争前の19世紀前半に実在した黒人男性ソロモン・ノーサップの自伝を映画化した衝撃の伝記ドラマ。





監督は、同名スターもいますが、監督以前に、すでに現代芸術家として、名声を手にしているスティーヴ・マックィーン。



ブラッド・ピット自身が惚れ込み、会社PLAN Bが製作しており、




ニューヨークで普通の市民として自由な生活を送っていた自由黒人ソロモンは騙され、拉致された後、奴隷として売られてしまう。人から物となった彼の地獄のような奴隷としての12年間を描く衝撃の実話。

ソロモン・ノーサップの自伝を脚色した脚本は、ジョン・リドリー。(製作総指揮も)





出演は、ソロモン・ノーサップに、日本ではあまり有名ではないが、力強くも器用な演技巧者キウェテル・イジョフォー。
おいらとしては、『レッドベルト』の主演として、がっちり記憶されています。


彼と対立する農園主に、マイケル・ファスベンダー。

彼の葛藤の恐ろしさがこのシステムへの怒りと共感を引き起こす。
まさに悪役が映画の位を引き上げるとはこのこと。



最初に彼を購入する農園主に、ベネディクト・カンバーバッチ。
その管理官にポール・ダノ。

奴隷商人に、ポール・ジアマッティ。

女性奴隷に、ルピタ・ニョンゴ。

放浪大工に、ブラッド・ピット。





ほかに、サラ・ポールソン、アルフレ・ウッダード、ドワイト・ヘンリー、ブライアン・バット、アシュリー・ダイク、ケルシー・スコット、クヮヴェンジャネ・ウォレス、タラン・キラム、スクート・マクネイリー、クリス・チョーク、アデペロ・オデュイエ、マーク・マコーレイ、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、マーカス・ライル・ブラウン、アンワン・グローヴァー、ジェームズ・C・ヴィクター、ライザ・J・ベネット、ギャレット・ディラハント アームスビー、ジェイ・ヒューグリー、クリストファー・ベリー、ロブ・スタインバーグなど。









撮影は、まさにスティーヴ・マックィーンと二人三脚で進んできたショーン・ボビット。

美しくも残酷なプロダクションデザインは、アダム・ストックハウゼン。

挑戦的な編集は、ジョー・ウォーカー。

音楽は、名匠ハンス・ジマー。




2013年の米アカデミー賞にて、作品賞、助演女優賞(ルピタ・ニョンゴ)、脚色賞(ジョン・リドリー)を受賞。
ノミネートは、監督賞(スティーヴ・マックィーン)主演男優賞(キウェテル・イジョフォー)、助演男優賞(マイケル・ファスベンダー)、衣装デザイン(パトリシア・ノリス)、編集(ジョー・ウォーカー)、美術賞(美術:アダム・ストックハウゼン)/装飾:アリス・ベイカー) 。




米アカデミー賞を取ったことで、観る側の多分ハードルが上がった上に、エンターテインメントではない上に、独特の突きつける作風はある。
だからこそ見えてくる映画ならではの湧き上がる感情、胸に沸き立つ思い、12年後には助かることを前提についタイトルで救われることを希望に抱いて、このs地獄に辛抱して、見終えた時の怒りと悲しみ。
その過去を感じることが、現在につながる希望を感じられる。
これぞ、映画の持つ力。

圧倒的圧力を跳ね返して、極上の悪夢を味わう名品。






















おまけ。

『それでも夜は明ける』は、夜は“よる”じゃなくて、“よ”なのは、世つまり世界、時代、世間がかけられているのだと思う。




なにより、罪悪感の見せ方が徹底している。考えてみると前作『シャイム』にも罪悪感は重要なテーマだった。観客にも突きつけてくるので、えらく気まずい。

『HUNGER/ハンガー』も公開しないかなぁと書いてたら、すでに公開決定してました。
嬉しい。














ややネタバレ。

映画における映像説明の技術が素晴らしく、ここら辺の技術は日本ではあまり語られないところ。テレビと映画の最大の差異でもあるのだが。米アカデミー賞で監督賞有力だったのも頷ける。特殊効果など技術も含めるとキュアロンで納得ではあるが。

それは、白い木材の骨しかない建物の中にいる黒人の姿、木の洞に隠された白い紙、インク、白い服を染める血、パン、白い証明書、黒いバイオリン、くだいて現れる白い木材、炭、光と陰、反射、パンとスープ、ロープ・・・。

ここに俯瞰と仰角のカメラポジション、現実に近づける長回し(ハネケもこれをよく使います)、陰影の濃さも特出すべき点。





黒と白の関係をドラマにそいながらも、象徴として次々と描き出す。
この象徴化とイメージの膨らませ方は映画の一つの基本ではあるが、その量が圧倒的。
もちろん、白と黒は象徴化しやすい題材だが、その絡ませ方の技術の高さに驚かされる。




ラストの謝罪の心情は日本人には非常に共感できるものではないだろうか。


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