で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2328回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『FLY!/フライ!』
渡り鳥なのに池から出たことがないカモ一家が初の大移動に乗り出すアドベンチャー・コメディ・アニメ。
原題は、『Migration』。
『移住』、『渡り』。
製作年:2023
製作国:アメリカ
上映時間:83分
映倫:G
配給:東宝東和
物語。
現代アメリカ北東部、ニューイングランド。
小さな池に暮らすカモの家族がいた。
父マックは、池を出たカモの悲惨な末路を子どもらに語るのが日課。
彼は池にいれば一生幸せに暮らすことができると信じる、安全第一の雄。
ある日、彼らの暮らす池に渡り鳥が立ち寄り、その自由な姿に妻や子どもたちは大興奮。
渡り鳥の一団は、カリブ海の楽園ジャマイカまでの3000キロの渡りに家族を誘う。
妻と子供たちが、本来のカモのように渡りたいと言うのをマックはお家が一番と説得する。
『ミニオンズ』『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のイルミネーション・スタジオによるオリジナルの長編アニメ。
オリジナルキャストはマック役に『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』『エターナルズ』のクメイル・ナンジアニ、妻のパム役に『ピッチ・パーフェクト』シリーズのエリザベス・バンクス。
日本語吹替版はマック役を堺雅人、パム役を麻生久美子、好奇心旺盛な息子ダックス役を『怪物』の黒川想矢、おてんばな娘グウェン役をミュージカル『SPY×FAMILY』アーニャ役の池村碧彩。
そのほか、羽佐間道夫、野沢雅子、関智一、鈴村健一ら豪華声優陣が共演。
スタッフ。
監督:バンジャマン・レネール
共同監督:ガイロ・ホムジー
製作:クリストファー・メレダンドリ
脚本:マイク・ホワイト
編集:クリスチャン・ガザル
声の出演。(オリジナルキャスト)<吹替キャスト>
マック (クメイル・ナンジアニ)<堺雅人>
パム (エリザベス・バンクス)<麻生久美子>
ダックス (カスパー・ジェニングズ)<黒川想矢>
グウェン (トレシー・ガザル)<池村碧彩>
ダンおじさん (ダニー・デヴィート)<羽佐間道夫>
チャンプ (オークワフィナ) <ヒコロヒー>
デルロイ (キーガン=マイケル・キー)<関智一>
グーグー (デヴィッド・ミッチェル)<鈴村健一>
エリン (キャロル・ケイン) <野沢雅子>
キム (イザベラ・メルセド)<芹澤優>
ジョー <谷山紀章>
エリー <喜多村英梨>
グーグーの仲間 <愛河里花子>
『FLY!/フライ!』を観賞。
現代アメリカ、渡り鳥なのに生まれた池から出たことがないカモの一家が初めて渡りに出るアドベンチャー・コメディ・アニメ。
ミニオンで知られるイルミネーション・スタジオが本国でもサプライズなヒットを出したCGアニメ。
鳥が飛んでいく、3Dアニメなではのこのスピード感がたまらない。
『進撃の巨人』の立体起動や、『スパイダーバース』シリーズや『長ぐつをはいたネコと9つの命』などの3D感ムーブを素直に取り入れて、映画館でライド感を味わえます。
鳥が主人公のアニメは何本かあり、『ガフールの伝説』や『ブルー 初めての空へ』など、設定に新しさはないが、定番を絵本として子供が楽しめるようにアニメの面白さを満載にして仕上げている。
近頃流行りのタッチにこだわったのも、冒頭に父が子供らに話す教訓譚が、絵本感にしてとり入れているあたり、今の子供たちに盛りだくさんで見せようというサービス精神が満載。だから、いったん落ち着く冒頭を一気に飛び抜け、くちばしの硬さを鳴き声で期待させて、次の展開までを飽きさせないようにしているのも伝わってきます。だって、正味78分、超高速で飛んでいきます。
この構成の凝り方が今作の取り組みの一つ。
今作にはそういった取り組みがとりあえず3つあります。
まずは、構成です。エンジョイとピンチのセットでつないでいて、これを繰り返すことで、次を想像させて、サスペンスにドキドキしつつも次に来る安心感でドキドキを素直に楽しめる。
これは子供はたまらんですよ。大人だって子供を遊園地に連れていく、さぁどうだの気分になっていくのよ。しかも、繰り返しの心地よさは二回目に自分をそれをやりたくなる仲間感家族感が盛り上がって、物語の中、渡りの一団の中に取り込まれるのです。
そうそう、この繰り返しのつるべ打ちは、同時上映の短編『ミニオンの月世界』でも繰り返している。スタジオのテイストにしようとしているのかもね。
二つ目の取り組みは、徹底的に鳥でまとめた鳥の世界の話にしたこと。手っ取り早く、人間やほかの動物を出すことで、バラエティ感を出して盛り沢山にしないで、鳥同士しか言葉が通じないように、人間やほかの胴部っとは会話が成立しません。羽と足のネタと動きで鳥であることも強調して、そのこと自体が枷でもあり障害になるようにして、体に意識を向けさせている。
かように、ポリコレ要素を自然に、絵本の役目である教訓譚としても説教臭く無く、組み込んでいる。
そして、テーマ。
親と子供の関係をきっちりに組み込んでいて、渡りに出るという冒険を、親の方が臆病で、子離れできないという部分も入れつつ、子供は子供で自立しようとする。この双方の視点がある。ファミリー映画なのよ。
もう涙腺バぁーとつゆだくですよ。
そこに、家族でない仲間も一緒に旅立つのが、この物語の鶏冠。旅することで仲間が増えてきて、家族を軸にしたチームになっていく。ある意味で移民の国アメリカを象徴しつつも、新しい学校や新しい仕事への新しい環境へ羽ばたいていくことにもつなげてあって、懐が深いのよね。(原題は『移住』という意味)
字幕版が少なくて、吹替で見たのですが、これがかなりいいです。セリフの言葉遊びも多めでニヤニヤ。そのレベルの高さのせいで、気になる人も出てきますが、それは全体のレベルの高さゆえなので、それもまた味といえるくらい。字幕版の方も観たいなぁ。
新しい要素は少ないものの、丁寧に丁寧に仕上げて丸焼きを切り分けて食べるような一体感。
鴨のキャラの薄さや鴨が渡る話ね、と食わず嫌いせずに飛び込んでみたらいいかも。
ほら、ミッキーマウスの最大のライバルは、ドナルドダックですもの。鴨にはスターになる要素があるんですぜ。
取り急ぎ、こんなところですかね。
渡りの鳥のハートがポッポする一本。
ネタバレ。
目だ目を中心にしたかとは、『2001年宇宙の旅』などのHALを想わせうつ、新たな表現になっていてよい。