菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

レイジ・アゲインスト・ザ・視線。 『またヴィンセントは襲われる』

2024年05月17日 12時36分41秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2357回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『またヴィンセントは襲われる』

 

 

 

目が合わせると相手に襲われる奇病にかかった男が生活をしていく不条理サバイバル・スリラー・ホラー。

2023年・第76回カンヌ国際映画祭の批評家週間に選出。

 

またヴィンセントは襲われる』作品情報 | cinemacafe.net

 
原題は、『VINCENT DOIT MOURIR』。
英語題は、『VINCENT MUST DIE』。
『ヴィンセントは死ぬしかない』。



製作年:2023
製作国:フランス
上映時間:115分
映倫:G

 

配給:NAKACHIKA PICTURES

 

 

物語。

現代フランス。
ある日突然、ヴァンサンは職場のインターン生から暴行を受ける。
怪我から回復する間もなく、今度は別の同僚にも襲われる。
だが、加害者たちはいずれも襲撃時に事実状態で記憶も残っていなかった。
その後も、ただ目が合うだけで、人々がヴィンセントに殺意を向けて襲ってくる。
ヴァンサンは、この状況を分析し、<目線が合い続けると人々が襲ってくる>という法則を発見し、生き残るための自衛をとることにする。


主演は、『バック・ノール』のカリム・ルクルー。
第56回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀主演俳優賞を受賞した。

 

 

 

スタッフ。

監督:ステファン・カスタン
原作:マチュー・ナールト
脚本:マチュー・ナールト、ドミニク・ボーマール、ステファン・カスタン
撮影:マニュエル・ダコッセ
編集:メロエ・ポイレヴ 
音楽:ジョン・カセド

 

 

出演。

カリム・ルクルー (ヴァンサン・ボレル)
ヴィマーラ・ポンス (マルゴー・ラミー)

フランソワ・シャト (ジャン=ピエール・ボレル)
ジャン=レミ・シェーズ (アレックス/人事部)
ユリス・ジュヌヴレ (ヒューゴ・モニエール/研修生)
キャロライン・ローズ (オードレイ)
エマニュエル・ヴェリテ (イヴ)

スージー (スルタン/愛犬)

 

 

 

『またヴィンセントは襲われる』を観賞。
現代フランス、目が合わせると相手に襲われる奇病にかかった男が生活をしていく不条理サバイバル・スリラー・ホラー。
いわゆる変形ゾンビもの。『28日後…』の始まりみたいな感じ。
実際、いくつか有名ゾンビ映画へのオマージュがいくつかある。
フランス製なので、うっすら社会派の要素とラブ強め。
状況を分析して、田舎に引っ込むので、『28週後…』の要素も入ってくる。
分析の部分があっさりなのがなぁ、そこやるなら、もっとしっかりやって欲しかった。観客には示されないが、ある展開によって、実は主人公は情報を知ってる設定で補足してはいるが、それに気づく人はいるのか、と。もう少しだけルール説明をして欲しかったんだけどね。サングラス辺りは試してもらいたかった。だって、最後の展開にもつながるじゃない。
まぁ、人の暴力性とそれでも人は人を求めるという寓話的かつ根源的テーマこそが狙いだろうから、あくまでも味付けということなんだろうけど。
なんつっても一般人の暴力性の描き方が実にいい。まさに泥仕合で、若者、おっさん、子供、女性と6回ほど手抜きなく命がけの闘いを見せてくれます。これ、意外と発明。『28日後…』でもできなかった。これ予算をかけずに、見たことないアクションを表現できてます。それが見どころと送り手も心得ていて、会社、町、廊下、自然、走る車内、船とちゃんとバトルステージにもバリエーションを用意して、新しいサバイバルを提案している。ゾンビものではできないかみつきも多用されるあたり確信犯。
第76回カンヌ国際映画祭の批評家週間に選出も納得。
ハリウッドでリメイクも動くのも、発明級の演出ゆえでしょう。やられる側にも心配したくなるというのはなかなかないです。感性鋭い人やジャンルファンなら、この新しさに歓喜間違いなし。
そのリアルを支えるのは、まず俳優力。いわゆるアクション俳優でないとろがやばい。主演のカリム・ルクルー(『あさがくるまえに』などドラマでも活躍している)が普通のおっさんの本気バトルを展開し、手に汗を握らせる。シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀主演俳優賞を受賞するのも当然。
女性船乗り対決では、ちょうど『ブルックリンでオペラを』でマリサ・トメイが船長役をやってましたが、こちらのヴィマーラ・ポンスもお見事で。『スーパーヒーローへの道』などでアクションもやってますが、あの細さが緊迫感を盛り上げます。次回作は、黒沢清の『蛇の道』のリメイクですから、応援したくなるというもの。一回で消えていくバトル相手たちの素晴らしさに思わず拍手しちゃいますよ。もちろん、今作のいいところは、そのバトル感を感じさせないリアルなストーリーテリングなんですが。
監督は、長編デビューしたヴァンサン・ボレル。リメイクもぜひ彼の演出で見てみたいともわせるほどの手腕。さらに、踏み込んだバトルとルール説明を楽しみにしてます。
あと、今作の殺伐を緩和するのが、犬の存在。クレジットも出大きく扱われる辺り、犬好きなのが伝わります。襲ってくる人レーダーの役目になっていて、まさにメンズベストフレンド。この地獄で、最後までちゃんと大事にされますよ。
ただ、邦題がどうにも変で、フランスなので名前はヴァンサンなのよ。劇中でも字幕もヴァンサンで、ヴァンサンにルビでヴィンセントと出る。英語読みのトリックがあるのかと思ってたら、出てこない。邦題の響きでこうしたんじゃないかな。『またヴァンサンは襲われる』で何がダメ? ヴァンサンに名前としてのなじみがないとか? フランス映画だと思われると見ない客がいるということなのか? こういうのもひっかかりになるから、あえてそうしたのか? 中身で勝負できない時代に試行錯誤したのかもしれないけど、映画への愛は感じられないね。今作は、愛を描く映画なのに。ポスターもいまいちだしな。
閑話休題。
実は、一番肝なのは撮影。これがこの世界のリアルとムードを底支えしていて、夜の撮影の美しさが実にいい。煙の使い方もよくて、でかいスクリーンにちゃんと映える映画美があります。人は危険だけど、世界は美しい。ここもまた『28日後…』シリーズとの対比になっている。
この2作、比較して見たら、楽しさ倍増だろうね。リアルにも二つの方向性があると考えさせる。
世界が壊れて、盲目的な愛が芽生える一本。



Vincent doit mourir - film 2023 - Stéphan Castang - Captain Watch

Vincent Must Die (2023) - IMDb

 

Tournée du réalisateur Stéphan Castang pour « Vincent doit mourir » – CIBFC

Vincent Must Die (2023) directed by Stéphan Castang • Reviews, film + cast  • Letterboxd

Vincent deve morire - Film (2023)

Vincent Must Die 2023 | Kinoafisha

Vincent Must Die' Movie Review [Fantasia Film Festival] - iHorror

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

あのバルコニー調査で、サングラスでも防げない、と実験結果を出せばいいだけなのにな。
もしかしたら、あの付箋の中に書いてあったのかも。

歩哨のサイトに、法則が書いてあり、そういう情報を得ているということで、いろいろ説明を省ける。

 

 

 

 

 

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